「“この人、嫌だな”と思ったらメモる」“怒り”の感情で書く売れっ子脚本家・岸本鮎佳インタビュー

ドラマNEXT「水曜日、私の夫に抱かれてください」脚本を手がける岸本鮎佳インタビュー【後編】。劇団主宰として脚本・演出・出演を担い、ドラマ脚本家としても引っ張りだこ。これまでに影響を受けたものなど創作の原点について聞いた。

前編】では、「世の中のそういう男性を全員成敗したいなと思いで物語を書いている」!? ドラマ脚本の描き方、原動力、オープンマリッジが話題になったなど本作執筆中のエピソードなどを。

【動画】岸本鮎佳が脚本を担当する「水曜日、私の夫に抱かれてください」

脚本を“怒り”の感情で書く


「水曜日、私の夫に抱かれてください」脚本家・岸本鮎佳インタビュー【後編】
――岸本さんの描く人物や作品は「あ~こういう人いるわ」「痛いとこつかれた」と感じることが多く、観察眼が鋭い方なんだろうなと思います。幼少期から現在までどんなものに影響を受けてきましたか?

「いろいろなものに影響を受けすぎていて何から話したらいいのかわからないのですが…。私は、脚本を“怒り”の感情で書くんです。コメディだとしても“自分が今、何に対して怒っているのか”と、怒りが全てネタになっている気がします。

普段から『この人、嫌だな』と思ったらメモるようにしていて。例えば、閉じた傘を横に倒して持つ人がいて、実際にやられるとイラッとする行為ですが、コメディとして書くと笑いが起こるんです。みんながムカついているから『わかる!』と共感できるし滑稽に見えるんでしょうね。だから、嫌なことをやっている人なのに愛されて見える。お芝居って、そういう不思議な現象が起きるものなんです。今作で言うと神栖史幸(稲葉友)で、『嫌だな』『鬱陶しいな』と思うけど、『いるいる、こういう人!』とテンションが上がるような共感性がある人でもあるんですよね」

――なるほど。今は怒りがネタになりますが、脚本を書き始める前は怒りをどう発散してたんですか?

「若い頃はめちゃくちゃ尖っていたし、ずっと怒っていたと思います。アルバイトしている時なんて『ムカつくことが多すぎる』と思っていました。当時、占いで『あなたの人生、40歳からなの』と言われて、『え?私、40歳まで我慢しなきゃいけないの?』と思っていたんですが…。本当に40歳くらいまで下積みで、でも40歳すぎてからポーンと抜けて何をやってもうまくいくようになりました」

――我慢しなきゃいけない、うまくいかない時期はどうやって乗り越えたんですか?今まさにどういう時期でもやもやしている方にぜひアドバイスを!


「うまくいかない時って自信を失っている時で、自信を失うことによってさらにうまくいかないフェーズに入ってしまうんです。でも、この状況がずっと続くわけじゃない。例えば、失恋したとしても、その時の悲しい気持ちや嫌な気持ちが永遠に続くわけじゃないですよね。怒りも同じで、そんなに長く続くものじゃないので、『いつかは終わりが来る』と思うようにするといいんじゃないかと思います。そうやって考え方を変化させることで、自分は間違ってないと思えるんじゃないでしょうか。『何くそ!』じゃないですけど、私はそうやって生きてきたかもしれない。ただ、“怒り”はパワーになるけど、処理の仕方を間違ってはいけないですよね。私の場合、ありがたいことにいい処理の仕方が見つかったということなんだと思います」

――日本人は“怒り”の感情を表に出すのが得意ではなく、溜め込んでしまって自分を苦しめたり、逆によくない形で爆発させてしまったりするような気がします。

「そうなんですよね。フランスに行った時、店員さんにガン無視されすぎて、逆に面白くなっちゃったことがあって、その時に『私、ここでやっていけたら強くなるだろうな』と思ったんです。そういう経験で鍛えられたのか、日本に帰ってちょっと気が大きくなったことがありました(笑)。

昔の私は精神的にすごく弱くて繊細で、ちょっとしたことをうじうじ気にする性格でしたが、いろいろな経験から心も鍛えられていました。もうひとつ、この10年くらいで“人に頼ること”を覚えたのかもしれない。苦しんでいる人って、真面目で、人に頼ったり甘えたりできないんですよね。みんなもっと自分本位でいいんですよ」

――岸本さんは、劇団を立ち上げたりドラマ脚本にチャレンジしたり行動されていますよね。お話をうかがっていて、小さなことでもいいので自分からアクションすることも大事なのかなと感じました。

「私の場合は、たまたまそういうエネルギーがあったということなんでしょうけど、ない人もいますから無理矢理行動する必要はないかもしれないですね。例えば、散歩するとか、外を歩くだけでもいい。よくやったなって自分を褒めていいと思います」

――佐久間宣之さんが「今年売れるバラエティタレント」として岸本さんを推していらっしゃいましたが、劇団や脚本以外で今後やってみたいことはありますか?

「ポッドキャストをやりたいと思っているところです。自分のコンテンツがあると、いろいろな発信ができるじゃないですか。芸能人やモデル、インフルエンサーはSNSでの発信が合っているかもしれませんが、私みたいな人は自分の思いや書いているものについて話すことに意味があると思っています。ポッドキャストって料理とかしながらでも聴けるところもいいし。自ら話す場所を作れたらいいですね」

「水曜日、私の夫に抱かれてください」脚本家・岸本鮎佳インタビュー【後編】「水曜日、私の夫に抱かれてください」第6話より

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「水曜日、私の夫に抱かれてください」脚本家・岸本鮎佳インタビュー【後編】「水曜日、私の夫に抱かれてください」第5話より

【プロフィール】
岸本鮎佳(きしもと・あゆか)
1984年3月22日生まれ。神奈川県出身。劇作家・脚本家・演出家・俳優。演劇ユニット「艶∞ポリス」主宰。ドラマ脚本は「替え玉ブラヴォー!」(NHK)、「こないだおばさんって言われたよ」(FOD)、「健康で文化的な最低限度の生活」(関西テレビ/フジテレビ系)、「夫の家庭を壊すまで」「ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~」(ともにテレ東)など多数担当。ドラマ「劇団スフィア 血塗られたブラジャー」(TOKYO MX)、「だから私はメイクする」(テレ東)では監督を務める。ドラマ「ひとりで死にたい」、「有罪とAIは宣言した」(NHK)などに出演。2026年7月28日(火)より、艶∞ポリス番外公演 北香那×岸本鮎佳 二人芝居「バッグの中からスフィンクス」を上演。
X:@kishimotoayuka
演劇ユニット「艶∞ポリス
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