「職人でありたい―」北村有起哉 “自然体の美学”と亡き父・北村和夫への敬意
【役者魂VOL.8:後編】
![北村後編]()
Prime Videoで独占配信中のドラマ「おいしいのつくりかた」(企画プロデュース・脚本・監督:松重豊)で、“あるトラブル”から心を閉ざしてしまった腕利きシェフ・水橋を演じている北村有起哉。
1998年、24歳のときに俳優デビュー。近年は、連続テレビ小説「おむすび」(NHK)や、主演ドラマ「小さい頃は、神様がいて」(フジテレビ)、「リブート」(TBS)など、ジャンルを問わず幅広い作品に出演。実力派として、唯一無二の存在感を放つ北村の「役者魂」に迫る【後編】。
※前編はこちら
【動画】北村有起哉が出演「家、ついて行ってイイですか?」
松重豊が企画プロデュース・脚本・監督を手掛け、「孤独のグルメ」のスタッフがおくる本作で、北村はキャリア初となる料理人役に挑んでいる。
「今回の主役は料理。お話のカギを握るポークソテーが一番大事なので、その味が完璧に再現できる人物であることに注力しました。亡くなった先代のマスター(中原丈雄)と僕が演じる水橋、つくる味が全く同じということはどういうことなのか? トラブルがあって心を閉ざした水橋のバックボーンも踏まえて、料理人である彼の矜持、生き様みたいなものが伝わればうれしいです」
過去のトラブルから全てを失い、老人ホームで料理人として働くことになった水橋。
彼がつくるポークソテーが亡き夫・大沢真路(中原)の味と同じだったことから、智子(加賀まりこ)、孫娘・加奈(のん)を巻き込み、売却寸前だった「キッチン大沢」復活に向けて物語が動き出す。
「水橋をひと言で説明すると、不愛想で暗い(笑)。何かを背負っているというか、陰がある男なんですけど、そこらへんは重くなりすぎないように。一応、レストランを解雇された後も老人ホームで働ける社会性はあるので、必要以上に危険な雰囲気をはらませる必要はないんじゃないかなと。
それよりも、自分の落ち込んだ気持ちに料理の味が引きずられない、どんな状態でもきちんとおいしい味が出せる“プロの料理人”であることを一番に考えました。寡黙でセリフが少ない分“彼はこれまで何千回、何万回、みじん切りをしてきたんだろう、フライパンを振るってきたんだろう”と思っていただけるような。水橋の修行時代や料理人としての矜持みたいなものを背中で見せられるような演技を心がけました」

Prime Videoで独占配信中のドラマ「おいしいのつくりかた」(企画プロデュース・脚本・監督:松重豊)で、“あるトラブル”から心を閉ざしてしまった腕利きシェフ・水橋を演じている北村有起哉。
1998年、24歳のときに俳優デビュー。近年は、連続テレビ小説「おむすび」(NHK)や、主演ドラマ「小さい頃は、神様がいて」(フジテレビ)、「リブート」(TBS)など、ジャンルを問わず幅広い作品に出演。実力派として、唯一無二の存在感を放つ北村の「役者魂」に迫る【後編】。
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【動画】北村有起哉が出演「家、ついて行ってイイですか?」
水橋は、どんな状態でもおいしい味が出せる「プロの料理人」
松重豊が企画プロデュース・脚本・監督を手掛け、「孤独のグルメ」のスタッフがおくる本作で、北村はキャリア初となる料理人役に挑んでいる。
「今回の主役は料理。お話のカギを握るポークソテーが一番大事なので、その味が完璧に再現できる人物であることに注力しました。亡くなった先代のマスター(中原丈雄)と僕が演じる水橋、つくる味が全く同じということはどういうことなのか? トラブルがあって心を閉ざした水橋のバックボーンも踏まえて、料理人である彼の矜持、生き様みたいなものが伝わればうれしいです」
過去のトラブルから全てを失い、老人ホームで料理人として働くことになった水橋。
彼がつくるポークソテーが亡き夫・大沢真路(中原)の味と同じだったことから、智子(加賀まりこ)、孫娘・加奈(のん)を巻き込み、売却寸前だった「キッチン大沢」復活に向けて物語が動き出す。
「水橋をひと言で説明すると、不愛想で暗い(笑)。何かを背負っているというか、陰がある男なんですけど、そこらへんは重くなりすぎないように。一応、レストランを解雇された後も老人ホームで働ける社会性はあるので、必要以上に危険な雰囲気をはらませる必要はないんじゃないかなと。
それよりも、自分の落ち込んだ気持ちに料理の味が引きずられない、どんな状態でもきちんとおいしい味が出せる“プロの料理人”であることを一番に考えました。寡黙でセリフが少ない分“彼はこれまで何千回、何万回、みじん切りをしてきたんだろう、フライパンを振るってきたんだろう”と思っていただけるような。水橋の修行時代や料理人としての矜持みたいなものを背中で見せられるような演技を心がけました」
カッコつけずフラットに――自然体の美学
あるインタビューで「自分は職人だと思っている」「役者の世界は積み重ねが大事な、非常に地味な世界」と答えていた北村。今回の水橋とどこか似ているのではないだろうか。
「そうありたい、という意味で“職人”と言ったんだと思いますが、自分では分からないですね。こればっかりは人が見て決めることだから。積み重ねが大事というのは、本当にその通り。それしかないです。今回の作品でも見せてくれた松重さんの経験値…それを見れば分かりますよね」
デビューからおよそ30年。さまざまな監督や共演者のもとで研鑽を積んできたが、常に心がけているのは「リラックスして演じる」ことだ。
「フラットと言えばいいのかな。要はカッコつけない、ということですかね。人によってお芝居のスタイルがあるでしょうから、それはそれで構いませんが、“俺はこうやるんだ!”となってしまうのはちょっと自分の好みとは違う。僕の場合はこういうルックスですから、カッコつけても様にならないんですけどね(笑)」
いわく「そこらへんにいる人と同じように、作品にスッと溶け込んで見えること」が大事だと。
「それが面白いところでもありますし、演じていて楽しいところでもある。そのために、いつもリラックスして、フラットな状態で役に臨むことを大切にしています」
連続テレビ小説「おむすび」に代表される真面目な父親役や、「小さい頃は、神様がいて」で演じたどこか頼りない中年男性役などはまさに…。存在感を示しつつ、“そこらへんにいる人”に見えてしまうから不思議だ。
善人からヒールまで演じる役柄のふり幅が広く、一方では「セクシー」「色気が漂う」という声が聞こえることも事実。
「(笑)、いやいやそんな、聞いたことがない。これまで散々、役者にはそういうところ(セクシーさ、色気)も必要だと言われてきましたけど、“じゃあ、どうすればいいの!?”って話で。それほど自分とは、縁遠い言葉だと思っています。
下手すると僕、週に1度も鏡を見ることがないくらい自分の見た目に頓着しないので、たまに鼻毛が出ちゃったりしてね(笑)。そういう意味ではリラックスしているし、フラットなのかもしれませんが。セクシーさや色気が出せるようになるにはもうちょっと時間が……何とか60歳くらいまでにはそうなりたいものです」
父・北村和夫への敬意 祖父の教え「品性と品格」を胸に
父は文学座の看板俳優で、舞台はもとより映画やドラマでも活躍した北村和夫。どこか大学教授や小説家を思わせる知的な雰囲気を身にまとい、昭和の名優とうたわれた。
「父の色気とかは分からないですけど(笑)、そばの食べ方とかね、粋なところがありました」
今年で52歳。「お父さんが同じ年頃のときは、映画であれば『復讐するは我にあり』や『太陽を盗んだ男』、ドラマであれば『白い巨塔』(フジテレビ)や連続テレビ小説『マー姉ちゃん』(NHK)などに出演されていました」と話を向けると、「いや~お忙しい。めちゃくちゃ出ていますね」と言って、相好を崩した。
「おやじとは思い出らしい思い出はほとんどないんですけど、これだけ忙しくしていたら当たり前か……。しかも、どれも名作ばかりじゃないですか。身内うんぬんを抜きに尊敬します」
父・和夫が亡くなった2007年、ドラマ「SP」(フジテレビ)でテロ集団のリーダー役を好演。狂気をはらんだ演技が評判を呼び、これをきっかけに活躍の場を広げていく。
「20年近く経った今も、代表作と言ってもらえることが多いのはありがたいんですけど、もうちょっと頑張らなきゃ(笑)。まだまだ(父の)足元にも及ばない」
父・和夫が亡くなった年齢になるまで、あと30年ほど。これからどんな役者を目指していくのか。
「今の話の流れで言えば、“品性、品格を感じさせる役者”でしょうか。子どもの頃、母方のじいちゃんがそう言っていて、妙に記憶に残っているんです。
あるとき、じいちゃんがとある役者さんとおやじを比べて『お前の父親のギャラがゼロ一個少ないのは、なぜだか分かるか?』と聞くんですよ、孫の僕に(笑)。『それは品性、品格の差だ』と。まだ子どもですから“そんなの知らないよ”って話なんですけど、今でも忘れられません」
品性や品格というものは、学んで出せるものではない、その人の中から自然と醸し出されるものだと。
「僕にとっては面白いじいちゃんでした。尺八の先生をやっていたこともあり、芸事や礼儀作法には厳しい人で、おやじの靴の脱ぎ方から新聞の畳み方まで、普段の生活から細かく指摘していました」
テレビに映る俳優・北村和夫は、傍目から見れば品のある紳士そのものだったが、そこは同じ芸事を生業にする者同士。息子だからこそ、より厳しく接していたのかもしれない。
「粋ではありましたが、がさつなところもあったんでしょうね。僕はそれ以来、“品とは何だろう?”とずっと考えてきて。
例えばトイレで手を洗ってハンカチで拭いたとき、くしゃくしゃっとしたまましまうのか、両手でピッと布を張ってしまうのか――。朝起きてから寝るまで、じいちゃんに試されているような気がします。
こういう普段の行いがスムーズに、嫌味なくできるようになったら、先ほどのセクシーさとか色気というものも出てくるのかな……と思ってみたり。どこかつながっているように思えるんです」
とはいえ、「僕は時折くしゃくしゃっとしてしまうので、全然まだまだ」と笑う。
「簡単なようで、案外続けるのが難しいことってありますよね? それがじいちゃんの言いたかったことなんじゃないかなと、自分もある程度の年齢になって思います。
それは、今回僕が演じた料理人も役者も同じで、何事も毎日の積み重ねがあってこそだと。
60歳になってセクシーさや色気がにじみ出てくるのかどうかはさて置き(笑)、これからもそういう日々の積み重ねを大切に、地道に役者道をまい進していきたいです」

父や祖父とのエピソードを楽しそうに、ときに真剣な表情で語る。代々、受け継がれてきたその矜持から、知られざる“役者魂”が垣間見えた取材だった。
気が早いが、次なる作品も楽しみでならない。本人いわく「セクシーさや色気がにじみ出る役者」になれるかどうかも。
【北村有起哉 プロフィール】
1974年4月29日、東京都出身。1998年、舞台「春のめざめ」、映画「カンゾー先生」で俳優デビュー。確かな演技力と独特の存在感で、舞台・映画・ドラマなど幅広く活躍する実力派。主な出演作に、連続テレビ小説「おむすび」、ドラマ「ムショぼけ」「たそがれ優作」「小さい頃は、神様がいて」「リブート」、映画「太陽の蓋」「ヤクザと家族 The Family」「すばらしき世界」「愛にイナズマ」「逆火」など。
待機作に、映画「わたしの知らない子どもたち」(2026年10月16日公開予定)がある。
(取材・文/橋本達典)
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