錦織一清「芸能界に入る前の自分に戻り、楽になった」初の映画監督、後継育成――挑み続ける理由

2026.06.23
錦織後編▲ソロ写真集&カレンダー『言魂-10カラットの呟きと共に―』(撮影:NAITO ワニブックス刊)発売記念記者会見より

5月22日に、61歳を迎えた錦織一清。少年隊として時代を牽引し、今なお圧倒的な存在感を放つ彼は、プレイヤーに留まらず、舞台演出やカバーアルバムのリリースなど、精力的に活動し、ファンを魅了し続けている。
還暦を過ぎた今、「芸能界に入る前の自分に戻り、気持ちが楽になった」と語る錦織。
そんな彼の“現在地”、クリエイターとしての本音に迫る。

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夢を誰かに託したら、実現できるかもしれない


――5月に出版した人生初のソロ写真集&カレンダー『言魂-10カラットの呟きと共に―』(ワニブックス)には、学生時代から親交があるパパイヤ鈴木さんとの対談も収録されています。
「少年隊の頃は本当の自分ではなかったかも」「ファンの皆さんがようやく自分のコアな部分に近づいてくれた」というコメントもありましたが、その真意は?


「僕のファンになってくださる…それはすごくありがたいことなんですけど、グループで活動していた頃について言うと、みんなが良い誤解をしてくれたのかな? と思っています。
あの頃の自分が嘘だったということではなく、それも含めて僕。ただ、今の僕は、芸能界に入る前の自分に近い。あの頃の自分が戻ってきたような気がして、ずいぶん気持ちが楽になりました」

――11月にクランクイン予定の映画『僕は瞳に恋してる (仮題)』では、初めて監督業に挑戦します。錦織さんはプレイヤーに留まらず、自ら舞台を作る立場にもなり、挑戦して切り開いてきた方という印象があります。

「役者はあくまで使われる素材なので、言いたいことを言おうとしても『そんなことは、演出家になってから言いなよ』と言われて、演出家になりました。でもそうすると、もっと言えなくなるんですよ。クライアントという施主様に対して、演出家は施工。創作したいことと現実の間で板挟みになりますから。ただ、演出家になって、施主・施工の中に入れたことは良かった。
(挑戦して切り開いてきたとか)そんなたいそうなものではなく、僕の場合、“こういう作品が見たい”と思ったものを作っているだけなんです。“きっと、こういう作品が面白いはずだ”と」

――写真集の会見では、今後「後継となるグループを作りたい」という発言もありました。錦織さんが築き上げてきたものを、誰かに継承したいという思いも?

「そうですね。それをやっていかなければいけない気がしています。もしも僕がプロ野球選手だったら、きっと最後は監督をやりたくなる。解説者ではなく、監督になって最後まで野球に携わりたい。引退しても、自分ができなかったことや夢を誰かに託して、実現させられるかもしれないから」

錦織後編

好きな“景色”は、お客さんが喜んでいる顔


――5月に発売したカバーアルバム第2弾『Blues Style Collection ~10カラットな夜のグラスに~』は、ブルースを軸にした懐かしい歌謡曲が収録されています。
ちょっとハスキーでグッとくる、しびれるような歌声が魅力的ですが、写真集ではご自身の声について「今やっと、ちょっと愛着が湧いてきたかな」と綴っています。


「書道の筆文字って、どこかがかすれていないと気持ち悪くないですか? 筆で勢いよく書いた文字のかすれている部分って、声紋のデータと似ているような気がして、やっと自分の声もそうなってきたかなと」

――改めて、歌うことの楽しさを味わっている?

「アルバムの曲は、自分が好きなものばかり。今回は、自分が聴いていた70年代の曲にこだわって選びました。
昔、ラジオの深夜放送を2時間やっていたんですけど、最後のコーナーで、いつも70年代の歌謡曲をかけていたんですよ。
先日、歌謡界の大先生と会う機会があり、話をした際『最近の曲はメロディーがないよね』とおっしゃっていて…。メロディーメーカーの先生もいなくなりつつある今、それを大事にしたい。やっぱり僕は、昔のわびさびがある歌謡曲が好きなんです」

――ちなみに、還暦を過ぎた今、ご自身の原点である少年隊のパフォーマンスを見たり、楽曲を聴いたりすることはありますか。

「実は、家に過去の作品がないんですよ。だから、ディナーショーで少年隊の曲を歌う時も、『ごめん、歌詞カード用意してください』って(笑)。
誰かが僕の歴史を知って、大切にしてくれているのは、とてもありがたいことです。
でも、僕は当人だから、自分の歴史に浸りたくない。自分の歴史に浸っていたら、先に進めなくなっちゃうから」

――最後に、今後、錦織さんがエンターテインメントの世界で見たい“景色”があれば、教えてください。

「そういう壮大なことはよく分からないんですけど、僕が一番好きな景色って、出役じゃないとなかなか見られない。一番は、お客さんが喜んでいる顔なんですよ。
昔は誕生日に100人ぐらい集まってくれるパーティーを開いていたんだけど、僕はそういう時も、“来てくれた人たちが、みんな楽しんでるかな?”と気になってしまう。
みんなが楽しくやっている姿を見ているのが好き。楽しそうにしていて良かったなと思う。だからこれからも、皆さんが笑って幸せそうにしている…そういう景色が見られたらいいかなと思います」

錦織後編

錦織後編▲『言魂-10カラットの呟きと共に―』(撮影:NAITOワニブックス刊)

【錦織一清 プロフィール】
1965年生まれ 東京都出身。小学生のときにジャニーズ事務所に入所。「少年隊」のリーダーとして一世を風靡。テレビドラマや舞台を中心に俳優としても活躍。
1999年、つかこうへい演出「蒲田行進曲」への出演をきっかけに、舞台演出にも積極的に関わるように。ミュージカル『グレート・ギャツビー』や『蘭~緒方洪庵 浪華の事件帳』、時代小説“しゃばけ”シリーズ、作家・羽原大介と共に坊ちゃん劇場作品などの演出も手がける。演出した「よろこびのうた」がAll Aboutミュージカル・アワードでファミリー・ミュージカル賞を受賞。
1977年より43年間ジャニーズ事務所にて活動し、2020年12月31日に独立。2021年より”本当の意味のひとり暮らし”をすべく、新たな活動をスタートした。
カバーアルバム第2弾、大好きなブルースを特集した「Blues Style Collection ~10カラットな夜のグラスに~」も好評発売中。

(取材・文/伊沢晶子)
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