<プロゲーマーの厳しい世界と実状>もしも子どもに「プロゲーマーになりたい!」と言われたら...eスポーツ専門家に聞く

――どんな競技でも、プロとして生活するのは厳しい。それでも、他のスポーツと比較して、プロゲーマーを目指すメリットがあるそうですね?

「一般的なスポーツ競技でプロを目指す学生などは、早朝や午後の練習に加え、夜遅くまで筋トレや自主練をするため、『練習以外は、ご飯食べて、お風呂入って、寝てしまう』となり、勉強との両立が難しいケースが多いと思います。eスポーツも高い集中力が必要で疲労は蓄積しますが、フィジカル面での負荷は小さいため、勉強と両立しやすい競技といえます。

実際に活躍している人では、東京大学をはじめとする高学歴の選手も多いのですが、強くなるにはテクニックだけでなく、戦略面など頭の良さが求められる要素も大きいです。フィジカルに依存しないという意味では、スポーツのように将来有望と見込まれていた子どもが、身体が大きくなれず、プロ選手を断念するようなことはありません。ケガで続けられなくなることもほとんどありませんし、そもそもeスポーツで大きなケガをすることもありません。

実力をつけるには、単に対戦プレイをするだけでなく、トレーニングモードなどを使い、確実に技が出せるように練習するといった努力をすること。それをまた対戦で試し、新たな課題を見つけて練習する...など、トライ&エラーを重ねる、目的意識を持って課題をクリアする習慣を身につけることにもつながります」

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――なるほど。そうした勉強との両立や、どうすれば強くなれるか考えて行動する習慣は、プロゲーマーに限らず、さまざまな職業の選択肢を広げる役にも立ちますね。

「それ以外に、一般の人が普通にオンラインゲームで対戦する場合でも、実力に差があると楽しめない背景から、ゲームではランキングごとのクラス分けがされていることが多いので、『プロになれるのか?』といった実力やポジションを客観視できる基準があるのが、eスポーツの特徴です。

仮に、芸人や歌手になりたい人の場合、周囲に面白い、歌がうまいと評価されても、プロになれないことがあります。夢を追いかけ続けた先に大ブレイクする――芸人の錦鯉さんのような例もありますが、基準のない中で努力し続けるのは、本人も周囲も大変ですよね。

他のプロスポーツでも、全国大会で入賞とか、何歳までに活躍しないとプロには...といった目安がありますが、ランキングという明確な基準が存在しているため、シビアな話になりますけど『いつまでにこのランクに上がれなければ、別のキャリアを考えよう』と、将来を見据えて、切り替える判断をしやすい点は、安心感があると思います。

あともう一つ、オリンピック競技の場合、障害のある人はパラリンピックへの参加となり、ルールや出場資格に違いがあります。でもeスポーツの場合、プレイができて実力さえあれば、そうした垣根がなく活躍できますし、障害のあるeスポーツ選手と契約する企業もあります。多様な人たちが垣根なくチャレンジできるのも、プロゲーマーの良さですね」


――岡安さんは、もしも身近にいるお子さんが「プロゲーマーになりたい」と言ったら、どんなアドバイスをしますか?

「プロ野球選手やJリーガー、コックさん、ケーキ屋さんになりたいというのと、『プロゲーマーになりたい』というのは同じです。夢を叶えるためには、知識や基礎的な練習が必要ですし、サッカー選手が試合だけでなく、シュート練習や守備練習をするように、楽しく対戦プレイするだけでなく、技を確実に出すためのトレーニングなどが大事だとアドバイスします。

そうした部分を自分で考えて行動できるのであれば、応援しますが、ただ、ゲームで遊んでいたいと思っているのであれば、それは趣味としてプレイすることを勧めます。本気でプロゲーマーを目指す覚悟があり、プロになるためのやり方がわからない状態だったら、親や身近にいる大人が『子供が夢を叶えるために、必要な対応を理解して、できるサポートをする』のが大切です。スポーツ選手やピアニストなどになりたい子どもに対して、周囲の大人がしてあげることと一緒だと思います。

プロゲーマーを目指すメリットでお話したように、勉強との両立ができたり、多くの職業で必要とされるような習慣が身についたりします。現役のeスポーツ選手には、親御さんや家族のサポートがあり、活躍できるプロゲーマーになった人も少なくありません。他の仕事と同じように、プロになるのは簡単ではないですが、プロゲーマーを目指すお子さんの身近な大人の方たちには、ぜひ応援してあげてほしいですね」

【岡安学 プロフィール】

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eスポーツライター。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスのライターとしてeスポーツを中心に活躍。著書に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム)。eスポーツだけでなく、VR、ドローン、デジタルガジェット、ロボットなどに関する取材・執筆も行い、多数の雑誌・Webメディアに寄稿している。

(取材・文/鍬田美穂)

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