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日本を知る、地域を考える@秋田県仙北市:歴史を知り変化を楽しむことが進化へつながる〜秋田県有数の観光都市仙北市の希望〜前篇

日本を知る、地域を考える

秋田県仙北市:歴史を知り変化を楽しむことが進化へつながる〜秋田県有数の観光都市仙北市の希望〜前篇

トラベル

テレ東

2017.11.20

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「いまは有事である」――。内閣府特命担当大臣のひとつである地方創生担当大臣を初代として務められた石破茂さんの著書「日本列島創生論--地方は国家の希望なり―」(新潮社)はそんな一文で始まります。なかでも人口問題は現在進行形で既に起こっているリクス。本書ではだからこそ有事だと警笛を鳴らしているのです。

国立社会保障・人口問題研究所の発表によると、現在の出生率が続けば3000年後には人口1000人になるそうです。一説には50年も経たずに4000万人も減少するとも言われています。

(内閣府 http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/0214/shiryou_04.pdf

こうした想像もつかない数字を"自分ゴト化"するのは難しいかもしれませんが、これは現状の延長線上にある理論値です。それ以外も含めた様々な問題に対し、中央からの改革ではなく地方から改革すべき、その好事例はたくさんあると本書では紹介されています。

地方創生は外部から遠隔でできるものでは到底ないです。ただその事実をメディアとしてコンテンツにはできます。彼らの取り組みの良い部分にのみフォーカスを当てるのではなく彼らの抱える課題、外部から見た客観的な課題も一緒に伝えることで解決に向けた小さな一歩でも歩みが始まればと切に願います。

そんな思いを胸に今回訪れたのは秋田県仙北市。秋田県と言えば山林、鉱物などの資源が豊富であり、田沢湖、角館などの観光地、きりたんぽ、稲庭うどんなどに代表される豊富な食、日本三大花火のひとつ『大曲の花火』や全国学力テスト10年連続トップなどの魅力ある特色で溢れています。

一方で人口減少にも苦しんでおり、秋田県では2016年時点で高齢者の割合が34.7%と全国で最も高く、4年連続で全国の都道府県中、最も人口が減少している地域となっています。2017年4月現在、推計人口がついに100万人を割ってしまいました。

今回は過疎化に苦しむ秋田県の中で代表的な観光名所が数多く存在する仙北市にフォーカスをあててみました。仙北市は秋田県東部中央に位置し、岩手県とも隣接します。人口27337人(2017年4月現在)面積1093.56k㎡。農林業と観光業が盛んな田沢湖を中心とする田沢湖地区、城下町として発展し、みちのくの小京都と呼ばれ観光業が盛んな角館地区、カタクリの群生などがあり、自然が豊富な西木町地区の3地区で構成されています。

今回は仙北市で活躍する4名にお話を伺いしました。

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料亭 稲穂 若女将の後藤朗(ごとう あき)さん

後藤さんが若女将を務める『いなほ』は一階に玄関を設けている『料亭稲穂』と階段を上がって二階の『食堂いなほ』があります。"郷味新深"をモットーに秋田、角館に昔から伝わる郷土料理はもちろん、地元の食材を生かしながら、新しさも追求し、料理を提供しています。

||メニュー開発をし、自ら作る若女将

後藤さんは大学進学時、料亭を継ぐと決意し、経営学科がある大学を志願して仙台へ移り住みます。大学では小学校から続けていた剣道をしながら経営学を学びます。卒業後秋田市川反にある明治19年創業の老舗『割烹かめ清』で3年間の修業を経て、現在は実家のいなほへ戻り若女将として奮闘する日々を送っています。

なんとくイメージが湧くような湧かないような"若女将"という仕事。普段はどんなことをしているのかを聞くと、

『基本的にはお料理の仕込みをしています。デスクワークはしないです。そのほかお客様の接客やお酒のメニューを考えたりしています』(後藤さん)

というお答えが返ってきました。料亭と聞くと敷居が高いと思われることも多いため、身近に感じてもらえる『和かふぇご飯』を考え自ら料理までを担当しているのだそうです。

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和かふぇご飯 2000円(税・サ込み 2日前までの要予約)

客層は50代以上の人が多く観光客が7割近くを占めます。お昼の団体さんがメインで土日は法事やお祝いが多いとのこと。観光地のため春の花見、秋の紅葉に集中しがちのため、今までにない客層を獲得する必要があるようです。

||数十年後を見据えて

従業員は60-70代が中心となっており、今は万全でも数十年後に後藤さんが経営を引き継ぐ時にどうしていくべきかが課題のひとつでもあります。町全体でもそうですが若者の地元からの流出は大きく、後藤さんの同級生も2/3以上は角館を離れています。

後藤さんは若者も取り込むべく『和かふぇご飯』を考案したり、最近では女性でもお酒を飲む方が増えた事に目をつけ、いなほの料理に合うお酒をちゃんとオススメできるよう"SAKE EXPART"という資格を取ろうと目下勉強中だそうです。若者が減りゆく角館だけに、若いお客さんが来ると何がキッカケで来たのだろう? と興味津々になってしまうそうです。もちろん興味だけで終わることなく研究に余念がない後藤さん。これからもきっと『いなほ』に様々な刺激を与えていくのだろうと思います。

後藤さんは漠然と将来の雇用に対する不安を感じるといいます。若者の職がなくこの土地を離れる一方で、雇用主も雇用に不安を抱える。こうしたパラドックスを解消できる仕組みが地域活性につながるひとつの起爆剤になるかもしれません。

||角館の未来の為に角館の過去を知る

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一番印象的だった言葉は、「後藤さん自身今後どうなっていきたいですか?」という質問に対してのお答えでした。

「今のことはもちろん昔から受け継がれている歴史などを学び、理解しながら角館の新しい魅力をこれから発信して行きたいと思います。また世界中でも角館にしか出来ない事、自分にしか出来ない事を見つけてそれを実行して行きたいです。」(後藤さん)

歴史ある景観が残る武家屋敷、春にはサクラで埋め尽くされる桧木内川堤、日本屈指の紅葉スポット抱返渓谷「神の岩橋」からの景観など、古くから残る観光名所。そうした残すべきもの、逆にはなくすべきもの、進化させるべきものなど、今後様々な決断をしながら町は時を刻んでゆきます。そうした決断をする際に歴史を知った上で決断しなければその土地のベストな未来は選択できないということでしょう。

とても穏やかにお話をされる後藤さんでしたが、穏やかさとは裏腹に随所に強い意思を感じました。今は町を親世代が回してくれていて自分はまだ修行の身。でも何かを教えてもらうだけではなく職人のように周りのスキルを盗んで実行し、さらに未来を見据えて身につけるべきスキルを強い意思を持って習得しようとしています。若者が土地を去って人口減少に苦しむ現状の中、後藤さんの強い意思を感じるたびに角館が希望に満ち溢れている町だと強く感じました。

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株式会社安藤醸造 専務取締役 安藤雄介さん

幕末の呼び水となった黒船が来航した嘉永6年(1853年)角館町に安藤醸造を創業。現在では町内に4店舗展開で味噌醤油、漬け物の製造を専業としており、代々伝えられてきた伝統の味を守り続けています。

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大学で味噌、醤油、お酒などを専門にしている醸造学科にて発酵技術を学んだ安藤さん。卒業後は、会員制の食品宅配事業社で営業3年、商品開発に3年従事したそうです。入社の決め手は説明会で配られたオレンジジュースが美味しかったからだそうです。こんな美味しいジュースを作る会社で働いてみたいと強く思ったのだと言います。

営業では入社当初から20名ほどの契約社員のマネジメントを中心に、商品開発は麺類、漬物、納豆、醤油などの日販品を担当。生産者を見つけるところから始まり、商品企画、価格設定、時にはパッケージデザインからネーミングまで行ない、最後に流通までも確保するといった具合にほぼすべての工程に携わっていました。そうした経験を経て、家業の安藤醸造に戻り専務取締役に就任します。

||地元の結束は無尽講(むじんこう)から


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頼母子講連名帳 :日本銀行金融研究所貨幣博物館より

無尽講は頼母子講(たのもしこう)などと呼ばれたりしますが、参加者が場代を積立てて会期中に各人が一回の積立金を取るが基本です。簡潔に言うと、仲間内の金銭相互補助システムです。鎌倉時代中期から出現し、江戸時代に発達したと見られており、現在の第二地方銀行や信用金庫や信用組合のほとんどがこの無尽講や頼母子講を基礎にしているそうです。

現代では日本各地に存在していて、メンバーが毎月金を出し合い、積み立てられたお金で宴会や旅行を催す場合もあれば、くじに当たった者が総取りする形態もあります。安藤さんも「ばんげの会」や「子丑会」と呼ばれる地元の無尽講に参加しているそうです。こういった無尽講はほぼ毎日どこかで開催されているほど数多く存在しています。

安藤さん、後藤さんが参加している「ばんげの会」は、角館の未来を考えることを目的に作られました。角館は観光地で飲食店もあるのに夜の街に人通りが少ないということで、自分たちが角館の夜の街を活性化させるために作った会なのだそうです。改装した内蔵に津軽三味線の演奏者を呼んで宴会を開いたり、バーベキューの上級インストラクターを呼んだ本格的なバーベキューイベントなどを行なったりしているそう。会の目的達成のため参加率向上、組織拡大を考え楽しみながら実行していくことを念頭に計画しているのです。活動報告、認知拡大のために冊子を作成し配るなどの広報活動も行ないます。

||人口減少の影響は確実に・・・

安藤さんが抱える直近の課題として、漬物、醤油、味噌の市場が縮小していることが挙げられます。お茶請けとして漬物を消費する機会も味噌汁を飲む機会も減少傾向にあり、調味料と言えば醤油だった時代は過ぎ去り、調味料の多種化によりシェアの減少も顕著になっています。そして何より配達をしていても家族が減ったなどの理由により、注文数も減少していて、人口減少による市場の縮小を実感するようになりました。

||祭りへの想いが町を元気にする

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安藤さんは秋に行なわれる「角館のお祭り」を生きがいにしているといいます。各丁内から18代の山車が出て、角館の町内を曳きまわします。各地区の関係値さえも変えてしまう角館のシンボリックな存在であるお祭りは、神を待ち、神を迎えるという素朴な信仰が色濃く残る一方で、若者は血をたぎらせ山車同士のぶつかり合いに全霊を注ぎます。それは参加している若者だけでなく、見る者も魅了するなんとも言えぬ高揚感があります。後藤さんもこの祭りを生きがいのひとつとして楽しみにしてきました。この祭りがこの地に人を呼び戻し、町への愛情を深いものにしています。安藤さん自身も就職の際に祭りの時期は地元に帰ることを宣言していたそうで、実際毎年祭りへの参加は欠かさなかったそうです。安藤さんや地域の方が抱える課題は簡単に解決できるものではないかもしれません。ですが角館の活力ある祭りの火を絶やさず繋げている限り角館の未来への希望の火は消えることはありません。未来に目を向け以下のように力強く語る安藤さんの眼差しは希望に満ち溢れているように見えました。

「角館では無尽講など様々なコミュニティを通じて若者もいろいろな取り組みをしています。そんな若者たちは地元を愛しているし、他の地域でやった方が良いこともあるかもしれないのに地元に帰ってくる人達もいるんです。そんな人々の活動やみんなが愛するこの町のことをもっとみんなに知ってもらい、様々な人たちに来てもらって町のあらゆるものに触れてみて欲しいですね。なかなか帰って来られない仲間たちにももっと地元に目を向けてもらえるようにこの町をもっと発展させていきたいと思っています」(安藤さん)

地元を愛し、前向きな努力をするお2人を紹介しましたが、共通項としてあるのは、人口減少による将来の不安でした。個々の努力だけでは解決できない大きな壁があるのかもしれません。ですが個々の努力がつながりを広め多角的な連携によって補える可能性に満ちていました。

本記事のようなメディアのコンテンツを通して、相互補完できるようなパートナーとのマッチングを行うことも可能かもしれないですし、テクノロジーを駆使してより繋ぎやすくするなど可能性はたくさんあると思います。後編でもどんなことで未来の不安を少しでも取り除く事ができるのか、そのポイントについてレポートしていきたいと思います。

「日本を知る地域を考える」~仙北市前篇~、いかがでしたでしょうか。後編は安藤さん、後藤さんとはまた違ったアプローチで仙北市を盛り上げているお二方をご紹介します。

テレビ東京では地域のヒト、モノ、コトをご紹介する番組を多数展開しています。

朝の散歩道
厳選いい宿
虎ノ門市場
昼めし旅
出没!アド街ック天国
博多華丸のもらい酒みなと旅2
ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z

我々が知っているようでまだまだ知らない日本が数多く存在しています。これらの番組や本連載を通して、未知の日本、聞いたことはあるけどよく理解していなかった日本の姿をお伝えしていきます。どうぞご期待ください。

安藤醸造

秋田県仙北市角館町下新町27

http://www.andojyozo.co.jp/


料亭稲穂

秋田県仙北市角館町田町上丁4-1

http://inaho.pepper.jp/

後編はこちら

https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/travel/entry/2017/015139.html

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