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日本を知る、地域を考える@秋田県仙北市:歴史を知り変化を楽しむことが進化へつながる〜秋田県有数の観光都市仙北市の希望〜後編

日本を知る、地域を考える

秋田県仙北市:歴史を知り変化を楽しむことが進化へつながる〜秋田県有数の観光都市仙北市の希望〜後編

トラベル

テレ東

2017.11.21

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連載:日本を知る地域を考える〜秋田県有数の観光都市仙北市の希望〜前篇では安藤醸造専務取締役安藤雄介さん、料亭稲穂 若女将 後藤朗(ごとう あき)さんにお話を伺いしました。

お2人の住む仙北市は秋田県東部中央に位置し、岩手県とも隣接します。人口27337人(2017年4月現在)面積1093.56k㎡。農林業と観光業が盛んな田沢湖を中心とする田沢湖地区、城下町として発展し、みちのくの小京都と呼ばれ観光業が盛んな角館地区、カタクリの群生などがあり自然が豊富な西木町地区の3地区で構成されています。

後編ではTinyFieldsでメンタルヘルスケアに勤しむ尾崎さん、ルーシーカンパニーという洋菓子専門店のパン職人鈴木さんにお話を伺います。


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NPO法人 Tiny Fields 理事長 尾崎美由紀さん

個人または法人を対象に農業体験&田舎の文化体験などを通じ、心と体のケアを行なうプログラムを提供する事業を展開している。

大学時代から町おこしに興味があり、山梨県甲府市で土木の勉強をしている時に都市計画のプランを考えるなど、実践さながらの経験を積まれた尾崎さん。

大学卒業後には結婚して福島に転居。しかし、福島には尾崎さんのやりたい仕事がなく、旦那さんの後押しもあり仙台の会社に就職するとになります。その会社にいた時に東北3県を担当し "仙北市食からはじまる地域づくり推進協議会"で『C'sn TABLE』の立ち上げに関わります。C'snTABLEとは季節の味わいを体いっぱいに感じて欲しいというコンセプトで始まった移動式レストランです。その活動を通じて仙北市のヒト、モノ、コトに惹かれていったそうです。その時のメンバーから「地域おこし協力隊のメンバーを募集するから来たらいいじゃん」と気軽に誘われたことで、尾崎さんも気軽に「行きます!」と答えてしまったそうです。移住の決め手は、同年代の経営者たちがとても元気があり自分の居場所が作れるのではないかと思ったことだそうです。

||キッカケは余った土地を活用したいという想い

地域おこし協力隊として仙北市田沢湖地域に移り住んだ尾崎さんでしたが、有り余る土地を目の当たりにし、「この休んでいる畑を使って何かできないか?」と考えるようになります。そんな時、前職の知り合いから農作業がメンタルヘルスに効くという法政大学水野雅男教授の出した『農山村におけるメンタルヘルスプログラムの実証的研究』という論文を見せてもらい、これに刺激を受けて「休んでいる畑を利用しメンタルヘルスケアプログラムの実行ができるのでは」と感じ、すぐに実行したそうです。

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農作業やヨガを企業研修の一環で実施したり、個人でも受けることのできるプログラムを組んだりしています。農作業で長芋を掘るというプランがあるのですが、長芋はまっすぐ生えるとは限らず、実際は曲がっている事が多く、油断するとすぐ折れてしまうそうです。それを折らずに掘るために参加者が長芋掘りに没頭します。土と戯れて集中することでとてもリフレッシュでき、終わった後の顔はヨガが終わったときと同じ爽快感に満ちた顔をするのだと尾崎さんは言います。

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尾崎さんが地元の空き家を借りた民家にはヨガをする大きな和室があって、その和室や大自然の中などで月2回ほどヨガイベントを実施しているそうです。ブナ森でのヨガはとても寒そうに見えますが、その前にトレッキングなどで体を温めてから実施するなど工夫して環境をうまく利用しているようです。

||この地に来てまず最初にしたこと

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まず、仙北市の中でもあえて田沢湖地域を選んだのは、地域おこし協力隊に参加した時にこの場所を与えられたというシンプルな理由からでした。まず手始めにやったことは、尾崎さんの住む地域230戸すべてを回ったこと。回りながら、土地ならではの食文化、農作業の考え方、写真で履いている"踏み俵"の作り方などが消えてしまうと強く感じたそうです。

危機感を感じた理由は、そうした昔ながらの優れた技術を持っているのは80歳を超えた人ばかりで、それらを誰も継承できていない現実にありました。だからこそ、自分が受け継がねばと感じたそうです。まずはこの地域でできる目の前のことを考え、地域の人々を呼んで雪上尻相撲大会を実施することに。最初は20名程度の参加だったそうですが、ここから尾崎さんの地域コミュニティが広がります。その後にTinyFieldsの企業研修で初めて5人が訪れます。その際驚いたのが、地元の人々が田沢にお客さんが来ることを喜び、おしるこや干し餅などをたくさん振る舞ってくれたことでした。尾崎さんはその時のことをこのように振り返ります。

「研修に来た5人や地元の方々の笑顔を見て、自分が起こした活動の波及効果でこんなに温かい輪が広がるんだということを実感しました。それから来てくれた方がこうしたコミュニケーションをとても喜んでくれて、私一人で受け入れてもあの笑顔は引き出せないなと思いました。地元に残る昔ながらのこのコミュニケーションが継承されれば、みんなも楽しんで参加してくれるはずなので、それによってコミュニティが広がってくれるといいなと思っています」(尾崎さん)

現在は水野教授の論文に影響を受けて研修を行なっていますが、今後はその効果の可視化が課題です。「今は観光色が強い研修になっていますが、医学的に効果があることを証明して行きたい」と熱く語る尾崎さん。

それができたら、今度は世界に広げていきたいという大きな野望を胸に、目の前の有事に全力を尽くす尾崎さん通じて、田沢湖地域の明るい未来が見えた気がしました。

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ルーシーカンパニー 鈴木翔さん

店舗がベースのパン屋さんだが、出張販売を積極的に行ない地域のマーケットを盛り上げている。

ルーシーカンパニーは鈴木さんのご両親が経営していた洋菓子店でした。鈴木さんは中学生くらいから料理アニメを見て料理に興味を持ちます。そして、実際に作って食べてもらい、「美味しい」と言われることに喜びを覚え、料理人になりたいと思うようになります。やがて高校卒業間近に、あることに気付きます。

「あれ?待てよ。うちはじいちゃんの代から菓子屋だから、自分が料理人になったら洋菓屋の看板が途絶えてしまうと気付いたんです(笑)」(鈴木さん)

そして考えた末に、ある結論に至ります。

「パンだったら甘いものからしょっぱいものまで幅広く料理することもできるし、焼き菓子とも合うからちょうどいいんじゃないかと思ったんです」(鈴木さん)

そんな時ご両親の卒業校である日本菓子専門学校から届いた冊子を見て、製パン技術学科が開設されることを知り、「これだ!」と思い、入学を決めます。カリキュラムは1年ですが、密度の濃い時間を過ごしました。卒業後はパン・ド・コナ(現在は「ぱんとごはん」)、BELLBEという名店を経て、角館にあるルーシーカンパニーに戻り、パンを売り出すことになりました。

||この地に戻って、まず最初にしたこと

ルーシーカンパニーに戻るまでの修業時に鈴木さんが求めたのは、"パンを食べたときに、よく噛み締めてから美味しいと感じるパン"と"食べた瞬間直感的に美味しいと感じるパン"がああって、その後者を作っていける環境でした。高級な美味しいパンはたくさんあってそれも否定しないけれど、昔食べたあの惣菜パンが美味しかったという感覚が角館では共感されるのではと思い、そのようなメニュー開発を進めることに。

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しかし、今まで習得したパンを作ってはみたものの、それだけだと最初はなかなか受け入れられなかったそうです。そこで地元の食材を意識的に使い、生産者の人々と触れ合うようにしました。するとコミュニティが広がり、行政も様々な機会を紹介してくれるようになりました。その様々な出会いから地元の食材だけを使ったルーシーカンパニー看板メニュー「角館バーガー」が誕生することになります。

||ライフスタイルの変化に合わせて働き方をシフト

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まず地元へ帰ってやるべきことは、地元の人々とのコミュニケーションや信頼関係の構築でした。地元へ戻って数年を経て、商売の基盤ができて、地元の日人々との信頼関係も構築できてきた頃、鈴木さんのライフステージが変わります。奥様が第2子を授かったのです。

今までは比較的時間の融通が効く色々なイベントや集まりに参加してコミュニティを築いてきましたが、これからはそうはいかないと感じた鈴木さん。時間をうまく使いこなさないとお客様に最高のサービスを提供するという商売の基本がまっとうできないと考えます。それには人が集まる場所へ自ら出張販売に出向くことが必要なのではと、即行動に移します。地域とのコミュニケーションの中で尾崎さんが立ち上げに関わっていたC'snTABLEに鈴木さんも参画しており、そこで知り合った人からの紹介で出張販売の間口が広がり、今では定期的に出張販売に呼ばれるようになりました。今まで地元の人々に費やしてきた時間をお店の外でより多くのお客様と過ごす時間にシフトしていくことになります。

||失敗から得たコト

実は出張販売が成功する前に、鈴木さんはある失敗を経験しました。ある場所に出張販売をしている際に地元のスーパーの担当者からパンを卸してほしいとの打診があったことです。とても良い話だとすぐに話を進めます。相当な数を買い取ってもらい、売上はうなぎ登りとなり、一見順風満帆に見えました。しかし、すぐにルーシーカンパニーの製造キャパを超えてしまい、スーパーに卸すための製造が追いつかなくなってルーシーカンパニーの在庫が欠品するようになりました。

するとお客さんからはクレームどころか、「大丈夫、待つから」などと逆に気遣ってもらえたといいます。お客さんをもてなしたり励ましたりしたいのに、逆に気を遣って頂くようではダメだと思い、スーパーとの契約を終了します。鈴木さんはこの失敗を次のように振り返ります。

「大切なのは自分を支えてくれている家族が笑顔でいれること。支えてくれる家族がいるからこそ、美味しいパンができるんだと思いました。お客様が求めてくれているからと言ってキャパシティを超えた仕事をすると、一緒に働いている家族や家を守ってくれている妻に負担が大きくなりみんなが疲弊していまいます。心からの笑顔と自然と出てくるホスピタリティの質が下がってしまっては元も子もありません。サービス業にとって一番やってはならないことです」(鈴木さん)

||10年先を想像して想うこと

このまま店を続けていったこの先10年後はどうなっているんだと常々考えているという鈴木さんす。地元に帰って7年目の今毎年目に見えてわかるほど人が減っていることを実感しているそうです。明確に打開策があるわけではありません。しかし、鈴木さんは力強くこう語ります。

「仙北市の未来のために自分が実践してることは『誰よりもその一瞬(現場)を楽しむ』こと。そして『心からその場所を楽しみつくす』こと。楽しんではしゃいでいい空間を作る。そうすることで、場の空気が熱くなり柔らかくなります。仙北市を変えるという壮大な話ではなく、まずは自分の周りを楽しい空気に変えるために、地元のお客様、観光のお客様ということは関係なく、『なんだかあの兄さん楽しかったな』と思っていただけると一番嬉しいです」(鈴木さん)

||テクノロジーを駆使し文化を進化させる

4人の話を聞いて未来に希望が溢れているように感じる一方で、市区町村レベルではまだまだ次のような課題は山積みのように感じました。

・観光地なのに宿が少ない

・地元に残りたくても職がない

・高齢化による人口減少の加速

・よそ者を排除する文化

経営のカリスマ鈴木敏文氏の言葉に、"変化への対応と基本の徹底"という言葉があります。

良き文化(基本)はブレずに残す必要があります。そのために後藤さんが語るような歴史を知ることはとても素晴らしいことだと感じます。一方で、否応なしに変化を恐れたり嫌ったりしていては文化は進化しません。新幹線の停車駅である角館は人の流通するポテンシャルはありますが、観光客の導線はあるのにその地に留めることが難しい状況にあります。

宿泊施設の不足による観光ニーズのロス、よそ者を受け入れ難いことによる移住ニーズのロス。職に関しては自治体レベルでもっとテクノロジーをインプットする環境整備や個人レベルで習得する意思が必要とも感じます。

まずは身の回りからというのはとても共感できますが、テクノロジーが進化した今、誰でも世界中とつながることができます。この可能性をもっと認識して活用すべきだと強く感じずにはいられません。残すべき素晴らしい文化もテクノロジーを駆使してブランディングできます。

農林漁業を6次産業化するように、情報もコンテンツ化して流通させれば、人の心を動かし、行動させることがテクノロジーによって可能です。たとえばIT国家のエストニアのように、いわゆる"電子政府"を推進する国が出現している現在、ブロックチェーンのおかげで貨幣の可能性が高まり、「国」はもちろん、今後は地方自治体の概念も変わるかもしれません。中央政府の機能の一部がなくなる可能性すらあります。

現在、秋田・仙北市でも行われている相互互助コミュニティ「無人講」がテクノロジーによって進化すれば、今後は仮想通貨で資金調達が可能になるかもしれません。

地方の活動がテクノロジーによって進化することで、様々なマッチングが実現し、どんな素敵な未来が待っているのかと期待してしまいます。

テレビ東京では地域のヒト、モノ、コトをご紹介する番組を多数展開しています。

朝の散歩道
厳選いい宿
虎ノ門市場
昼めし旅
出没!アド街ック天国
博多華丸のもらい酒みなと旅2
ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z

我々が知っているようでまだまだ知らない日本が数多く存在しています。これらの番組や本連載を通して未知の日本、聞いたことはあるけどよく理解していなかった日本の姿をお伝えしていきます。どうぞご期待ください。

TinyFields

http://tinyfields.jp/

ルーシーカンパニー

https://www.facebook.com/Rushikanpani/

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