すなっぷ

過去の放送

2008

1月23日 #196 「触図筆ペン」


2007年11月、様々な技能を競い合う技能オリンピック「ユニバーサル技能五輪国際大会」が静岡で開催された。競技以外に、日本の伝統の技や最先端技術の展示なども行われ、大田区の町工場、安久工機の田中隆さんは、そこに世界初のあるものを出展した。それは目の不自由な人が絵を描くための筆、『触図筆ペン』だ。触図筆ペンとは、ヒーターを取り付けた筒の中に入れた蜜蝋が、温まって液状となり、筆先から出てくるというもの。冷えると固まるので、手で感触を確かめながら描くことができる。更に、蜜蝋という自然界のものを使用することで、安全性も考慮されている。この触図筆ペン、出来上がるまで3年かかったという。

始まりは、町工場仲間の東成工業・土田和雄さんの元に届いた1枚のファックスだ。盲学校の先生から送られてきた図解入りのファックスからは、生徒たちに絵を描いて欲しいという熱い思いが伝わって来た。それを受け取った土田さんは、「それほど資金もかからないし、出来るんじゃないと思いました。なんとかしてやりたいって気持ちでした。」と製作を田中さんに依頼する。「何か広がりがでそうな、こういうものだったら関わりたいな、やりがいがあるっていうかそういう風に思いました」と、田中さんは製作を引き受けた。

田中さんの工場・安久工機は、他では扱わないような製品を形にする「不可能を可能にするものづくり」が信条。町工場それぞれが持つ高度な技術をまとめ、設計し形にする。田中さんは、FAXにあった原案を修正して試作を重ね、町工場仲間の力を借りながら触図筆ペンの試作第1号を作り上げた。そして、昨年6月、盲学校に届けられたのだ。田中さんは、「こんなものがあったのかってすごく喜んでくれたので、やってきた事は間違いなかったなと確信しました」と、更なる試作を重ねている。そして、「日本だけでなく世界にも広まって、世界中の人が使ってくれて、触図筆ペンを使った展覧会が出来れば最高ですね」と、夢を膨らませる。

努力は必ず報われる。夢は叶えるためにある。