【巨人】悩める中田翔「簡単に打席を終わらせる選手になるな」キヨシが送ったエールとは

野球

2021.8.31

球界を騒然とさせた中田翔の電撃トレード劇から早くも1週間が経過。賛否両論ありながら出場停止が解かれ、晴れて出場機会を得るようになった中田だが......

巨人OB会長である中畑清はこの間の中田のプレーに対し、何か言いたいことがある様子。本来の調子を取り戻せずにいる悩めるスラッガーの復活のために今、必要なこととは?


生まれ変わるためには、二軍調整もひとつの手段に

球界を騒然とさせた移籍劇から早1週間。その主役となった中田翔の調子が芳しくない。

トレードが発表された翌21日には一軍登録、その日に行われた対DeNA戦では代打で巨人でのデビュー戦を飾ると、22日には5番ファーストでスタメン出場。7回裏の第3打席には移籍後初安打を本塁打で飾るなど、順風満帆なスタートを切ったかのように見えた。

しかし、その後の中田は4試合に出場して本塁打はおろか安打もわずか1本だけという急ブレーキ。移籍後の打率は.143(8月28日現在)という大スランプに陥った。

チームもなかなか波に乗れず、中田がスタメン出場した5試合の勝敗は2勝2敗1分と首位を走る阪神との差を詰められずにいる。そのため28日の対中日戦からはスタメンから外れ、出場機会を得られないままゲームを終えた。

賛否両論ある中での獲得を決断した原辰徳監督にとって、中田のスタメン落ちは誤算とも言えるが、中畑清はこの決断についてこんな評価を下していた。

「いいものはいい、悪いものは悪いとしっかり使い分けをしていくという原監督のスタイルを変えずに決断したことじゃないかな。内容的にもホームランは1本出たけど、その後は淡泊な感じがしたのが伝わってきた。スタメンを外れるという結果にならなければいいなと思っていたけど」

練習内容を見る限り、中田の移籍直後の様子は決して悪くないと語っていた中畑だったが、やはり一軍の試合から2カ月以上離れた状態でいきなり実戦というのは厳しかった様子。これが中田の本来の実力ではないと前置きしつつ、中畑は中田の復活策についてこう語った。

「移籍してすぐに一軍の試合に出場させるのではなく、準備期間みたいなものが必要だったのかも。そうした機会を持っていないというのが。(準備期間を)持っていたら打てるというわけでもないけれど、そういう段階を踏んだ方がチームのためにも中田のためにもなったと思う。ここで(スタメンから)外すのなら、思い切って二軍で再調整をさせて実戦経験を積ませてしっかりした準備をさせるというのが必要なのかなと思う」

ただでさえ電撃トレードで話題になっただけでなく、移籍先は球界の盟主として常に注目を集めるチームである巨人。その一挙手一投足が常に好奇のまなざしにさらされるという中でプレーせざるを得なくなった中田、そして優勝争いのさなかで中田を受け入れたチームそれぞれがモチベーションを低下させるようなことがあってはならないと中畑は懸念し、コンディションを整える意味でも中田の二軍調整を提言した。

「(今の中田は)一発で決めたいという打者としての願望というか欲望が渦巻いているから、思い切り振っているけど確実性に欠けるところがある。もっと打席で粘る場面を作っていかないと。あっさりと凡退する、簡単に三振するのを見せ続けるとマイナスになる。一軍の戦力として判断した結果、『やっぱり準備不足だった』と原監督は腹の中でそう思っていると思うんだよね」

これまでに通算257本塁打を放ち、昨季はキャリアハイとなる31本塁打を記録するなど球界を代表するスラッガーとして名を馳せた中田だが、中畑は今の中田に必要なのは長打を打つことではないという。では、今の中田にはいったい何が必要なのだろうか?

「簡単にアウトにならないという意識かな。2ストライク後の打撃での粘り方とか、その状況からの意識の切り替えはすごく大切なことだし、追い込まれた状態から何とか塁に出ようとしてボールに食らいついて粘る姿を見せると、ベンチはそれだけで使いたくなるの。簡単に打席を終わらせる選手ではないということを示してほしいし、そういう雰囲気を作らないといけない。一度ファームに落ちてもいいから、それを見に付けて欲しい」

球界の盟主である巨人の野球と言えば、ホームランが飛び交う派手で豪快な一発攻勢のイメージが強いが、現役14年間を巨人一筋で過ごした中畑は「アウトになるにしても、その過程も厳しかった」と振り返る。

「2ストライクを取られた後の考え方や打席の使い分けというところは本当に厳しかった。それは自分にも返って来るし、対戦する相手投手たちにも印象付けられる。2ストライクを取られた後の粘り方、相手への攻撃の仕方......簡単にアウトを取られて怒っているようではダメなんだよ」

例えアウトになるにしても、その結果に至るまでの過程を重視するのが球界の盟主たるゆえん。巨人一筋でプレーしてきた中畑だからこそ、そうした巨人の野球の奥深さは骨身に染みていることだろう。だからこそ、一度二軍に落ちてでもじっくりと調整してほしいと提言した。

最後に中畑は中田に対して、こんなエールを送った。

「新しい中田翔を見せるためには、そうした粘り強さを見に付けて欲しい。二軍には背番号10を背負った先輩、阿部慎之助が監督でいるけど、じっくりと見てもらって調整してほしい。これだけの結果を出した選手だから大変だろうけど、プライドを全部捨てて、イチから全部見直す時間があってもいいと思う」

果たして中田は、逆転優勝に向けてのキーマンになれるだろうか。


(文/五十嵐宇宙)