【有馬記念】エフフォーリア これ以上ない世代交代劇 急成長を遂げた新王者
2021.12.26
2021有馬記念(GI)エフフォーリアが優勝 写真:日刊スポーツ/アフロ
「あれ、こんなに立派だったっけ?」......パドックを堂々と周回するエフフォーリアを見て、思わず皐月賞当時のことを思い出した。
数字的には皐月賞当時が504キロで、有馬記念では516キロと12キロも違うのだから、大きく見えるのは当然と言えば当然。
だが......そこには数字以上のどっしりとした雰囲気を感じざるを得なかったし、最大のライバルであるクロノジェネシスがどこかチャカついているのを見ると、「勝つのは彼かな?」と思わざるを得なかった。
実際、今日のエフフォーリアはそれくらいに抜けてよく見えたように思う。
本来の得意距離ではないコースを走るのに少しふっくらと仕上げてきた馬体に闘志を内に秘めたかのような澄んだ瞳......その佇まいは3歳馬ではなく、これからの競馬界をリードする存在ゆえのものに映った。
実際、レースに入ってもエフフォーリアの振る舞いは変わらなかった。
パンサラッサが飛ばして先頭に立つと、続いて菊花賞馬のタイトルホルダーが追いかけるという展開になり、最初の1000mの通過タイムはなんと59秒5。
確かに速い流れになったが、この流れにエフフォーリアはひるむことなく、後方に構え、先に行くクロノジェネシスらを見る形でレースを進めていた。
その姿は早めに先行して抜け出した、皐月賞とは一味も二味も違うレース振り。特に最後の直線に入ってからのこの馬の1年間を表しているかのようにも見えた。
先に前にいたのは春と同じくタイトルホルダーだったが、エフフォーリアはそれをあっさりと交わして先頭に立つと後はグングンと後続を突き放した。
先輩牡馬であるディープボンドやこれが引退レースとなったクロノジェネシスの猛追を振り切ってゴールした。
春までのガムシャラな感じとはちょっと違う、どこか大人びたレース運びにこの馬の成長度合いを感じざるを得なかったし、世代交代を印象付ける結果と思えた。
そしてエフフォーリアをここまで際立たせたパートナー、横山武史についてもその成長度合いに触れなければならないだろう。間違いなく2021年は彼の年だった。
ブレイクの予兆は確かにその前年からあった。重賞を制し、GIでも穴を開けるなどの好走を見せるようになっていったが、そんな時に出会ったのがエフフォーリアだったことが彼にとっての幸運と言えるだろう。
エフフォーリアがクラシックの舞台で活躍すればするほど、それと同じかそれ以上に横山武史にとっては大きな経験になっていった。
その結果がエフフォーリアとつかんだ3つのGIタイトルと、タイトルホルダーの菊花賞だと言える。
そんな横山武史だが、レース後のインタビューでは「初めて走る距離が心配だったけれど、ダービーの時とは違ってファイトしなかったのでスムーズに走れた」と語っていたように愛馬の成長をひしひしと感じている様子が伺えた。
さて、先手を取っても良し、後方から動いても良しとばかりにどちらの脚質でも結果を出したエフフォーリア。
今回の有馬記念を制して通算戦績は7戦6勝、2着1回となったが、唯一の敗北となったダービーだって結果はほんの数センチ差の接戦による敗北と、実質7戦無敗でもおかしくない戦績を誇る。
それだけに今後のレース選択が大いに気になるところだが......来年の春、もうひと回りスケールアップしたエフフォーリアがどのレースに出るかを楽しみに待ちたい。
そしてこの有馬記念、主役はエフフォーリアだけではなかった。グランプリレース4連覇という快挙が掛かっていた芦毛の女王、クロノジェネシスの引退式としての顔も持っていたのだ。
エフフォーリアがあまりに堂々と周回していたために目立たなかったが、今回のクロノジェネシスのパドックの所作はいつになくおとなしいものだったように思う。
凱旋門賞での大敗の尾をまだ引きずっているのでは?とさえ感じさせた調教内容やどこか頼りなげな様子などを見ると、とても走れる状況ではないように思えたが......そこは稀代の名牝、地力だけで走って3着と意地を見せた。
この原稿を書いている現在は彼女の引退式の真っ最中だが、最後までファンの前でチャカついている彼女を見ていると、不屈の闘志を燃やして走っていた先ほどまでの姿が甦ってくるようである。
エフフォーリアとクロノジェネシスの間に入る形で2着に食い込んだのが、4歳馬ディープボンド。
彼もまたクロノジェネシス同様に凱旋門賞での大敗明けのレースでどうかと思われたが、結果的には自己最高の走りを披露。冬枯れの中山の芝という力の要る馬場もこの馬には合っていたように思う。
最後に4着ステラヴェローチェ、5着タイトルホルダーの3歳馬について触れたい。
エフフォーリアの勝利で今年の3歳馬による古馬重賞勝利は11勝をマークし、彼らもまた古馬相手に惜しいところまで迫った。
彼らもまた、この1年で急成長を遂げたエフフォーリアのようにさらなる進化を遂げ、2022年の競馬界を支えるような存在になって欲しいと切に願う。
■文/福嶌弘