【高松宮記念】サトノレーヴがGI初V!記憶に残り続ける兄を越えたビッグタイトル

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2025.4.1


サトノレーヴ(c)SANKEI

愛される競走馬には、2つのパターンがある。レースで圧倒的な強さを見せつけてファンを魅了するか、日ごろのエピソードや走りに個性を見出すことでファンの記憶に残るか。

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そう考えるとチリエージェを母に持つ、ハクサンムーンとサトノレーヴの兄弟はどうだろうか。

兄のハクサンムーンは間違いなく「記録よりも記憶に残る馬」。短距離戦での圧倒的なスピードはもちろんだが、彼の戦績に触れるよりもレース前の行動の方にファンはくぎ付けになったことだろう。

本馬場入場の際に騎手が乗れば、必ずその場でクルクルと周回する様子はまるでロデオのよう。

現地ファンしか見られないパフォーマンスはいつしか話題になり、時にレース以上に盛り上がった。レースよりも本馬場入場の時に沸かせた馬なんて、後にも先にもハクサンムーンしかいないだろう。

そんなハクサンムーンからちょうど10コ下の弟にあたるサトノレーヴ。

ハクサンムーンの現役時代のライバルだったロードカナロアを父に持つことでもファンの間では話題になったが......兄のような個性はなかった。

2歳ですでにGⅠに出走していた兄とは異なり、弟は3歳4月にデビュー。馬体重も50キロ以上弟の方が重く、逃げ一辺倒だった兄とは違い、好位から動いていくという優等生なレース振り。

兄は負ける時も豪快だったが、弟の最低着順は勝ち馬から0.4秒差の7着という具合にどうにもこうにもクセがない。

「記録よりも記憶に残る兄」と「記憶よりも記録を求める弟」... この2頭を見ているとそんな言葉が浮かんでくる。

自由奔放に行動し、気分よく走ってきたハクサンムーンと例え地味でも着実にひとつずつ歩を進めてきたサトノレーヴ。

そんな彼でも初のGⅠ挑戦となったスプリンターズSはその壁に跳ね返されたが、続く香港スプリントでは強豪馬を相手に3着に健闘。同じ轍は踏まないと言わんばかりの走りを見せ、この春は高松宮記念に挑んだ。

6年ぶりに良馬場で行われることになった今年の高松宮記念。

昨年の王者マッドクールにスプリンターズSの勝ち馬ルガル、そして悲願のGⅠ制覇を狙うナムラクレアに2年ぶりにGⅠ制覇を目論むママコチャなどスプリント路線のトップホースが大挙して集まったが、どの馬も決め手に欠けるという混戦模様。

そのため、上位人気5頭はすべて単勝オッズ10倍以下。単勝1番人気に推されたナムラクレアでさえ3.5倍というオッズだった。

そんな中でサトノレーヴの単勝オッズはというと2番人気に相当する3.8倍。

香港スプリントでタッグを組んだジョアン・モレイラを鞍上に迎え、530キロの馬体ははちきれんばかりの筋肉で包まれ、鹿毛の馬とは思えないくらいに光り輝いている。見るからに調子がいいのは明らかだった。

サトノレーヴの好調さはレースでもすぐに表れた。

素晴らしいタイミングでゲートを出ると、すぐに好位に付けていこうとしたが、内側にいたマッドクールやルガル、さらに外から被せてきたペアポルックスらの動きを見てすぐに下げた。

ちょうど1年前、初めてモレイラが騎乗した春雷Sの時と同じように馬群の真ん中あたりで末脚を溜めることに。逃げ一辺倒だった兄ハクサンムーンにはない戦法をサトノレーヴとモレイラは選択した。

そして、その作戦が間違っていなかったことは間もなく証明される。

迎えた最後の直線。先行していたビッグシーザーとルガルを目がけて各馬が迫る中、ワンテンポ早く動いたのがエイシンフェンサーとママコチャの7枠2頭。

くしくもサトノレーヴのすぐ前と隣にいた馬だった。この2頭が先に動いたことでサトノレーヴに進路が開き、モレイラは迷わず外へと進出。

サトノレーヴの末脚を引き出すために少しでも馬場がきれいなコースを選択した。

残り200m過ぎ。先頭を争うママコチャ、エイシンフェンサーを外から交わしに行ったのがサトノレーヴだった。

どちらかというとジワジワと伸びてくる馬がこの時はまるでナイフのように鋭利な切れ味で前を行くママコチャを捕らえて先頭に。

残り100m。先頭に立ったサトノレーヴに唯一迫ってきたのが、クリストフ・ルメールとタッグを組んだナムラクレアだった。

スタートから一貫して後方に控えて脚を溜めていた彼女がここぞとばかりの爆発。悲願のGⅠタイトルを掴むためにと懸命に脚を伸ばしてきた。

だが、先に抜け出したサトノレーヴはゴール直前、モレイラから左鞭を打たれるともうひと伸び。

迫りくるナムラクレアを3/4馬身離してのゴールを迎えた。兄ハクサンムーンが何度走っても届かなかったGⅠのタイトルを弟サトノレーヴは2度目で掴み、ハクサンムーンの記録した7勝を越え、8勝目を挙げた瞬間だった。

「能力の高い馬だし、このタイミングで乗れて勝てたことは嬉しい」――

インタビューでモレイラはサトノレーヴのポテンシャルを絶賛。「(直線に吹いていた)向かい風の影響を受けないように前に壁を作り、残り250mの当たりから動いて行った」という"マジックマン"ならではの騎乗がこの結果を生んだ。

記録に残るGⅠ制覇を果たし、名馬の仲間入りを果たしたサトノレーヴ。兄とは違う個性を求める彼は今後、どんな競走馬生活を歩み、どんなタイトルを掴むのだろうか。


■文/福嶌弘