【ブリーダーズカップ みどころ】アメリカ競馬界のもっとも長い1日に、日本馬が頂点に立つか
2026.11.1
フォーエバーヤング PHOTO:Getty Images
秋も深まり、いよいよアメリカ競馬の最高峰・ブリーダーズカップデーが幕を開ける。
1984年に開催が始まり、今年も2日間で14のGⅠレースが行われるという大イベント。世界の大レースでも屈指とされる高額賞金を懸けて世界各国のスターホースがアメリカに集まっては数々の名勝負を繰り広げてきた。
日本馬は1996年にタイキブリザードがブリーダーズカップクラシックに挑んだのを皮切りに数多くの馬たちが参戦し、昨年はメインレースであるブリーダーズカップクラシックで日本のフォーエバーヤングが勝利。
タイキブリザードが最下位に沈んでから29年後、悲願のアメリカ最高峰のGⅠ制覇を果たした。
これで3年連続の挑戦となるフォーエバーヤングをはじめ、日本馬は今年も7頭挑戦する5レースに注目したい。
まずは日本時間1日の午前3時26分にスタートが予定されているブリーダーズカップダートマイル。2007年に新設された比較的新しいカテゴリーのレースだが、今年で節目の20回目を迎える。
過去すべて地元アメリカの所属馬が勝利しているというレースに、今年は日本からロードフォンスが挑む。
昨年の2月にかきつばた記念を勝利し、5歳にして重賞初制覇を飾ったという遅咲きの馬だったが、そこから地方交流競走をメインに走り掲示板を外さないという安定感ある走りを披露。
6歳になった今年は黒船賞4着、かしわ記念3着の後に臨んださきたま杯で念願のJpn1制覇。4角先頭に立って押し切るという強気なレース運びを見せた。
今年のブリーダーズカップの舞台はアメリカ競馬界で唯一、1周1700mのコースであるキーンランド競馬場。
当然ながら先行策を取れる馬が有利になりがちなので、ロードフォンスも強気のレース運びを見せられるかがカギになるだろう。
ライバルとなりそうなのは、レーティングでも上位のファーザーアドゥとチャンクオブゴールド。
春のブルーグラスSで2着馬に11馬身もの大差をつけて圧勝したファーザーアドゥは現役屈指のキーンランド巧者。
そしてチャンクオブゴールドは通算13戦中12戦で3着以内という堅実派。大崩れがないだけに初めてこのコースに挑むロードフォンスには厄介な存在となりそうだ。
次に行われるのが日本時間1日の午前4時42分に発走するブリーダーズカップスプリント。ここにはチャーチルダウンズSで勝利を収めたテーオーエルビスと、昨年のこのレース4着馬アメリカンステージがエントリーした。
3歳の3月からトントン拍子で連勝を重ねてきたのはテーオーエルビス。
切れ味抜群の末脚を武器に古馬をも蹴散らしてカペラSを快勝。ダート短距離界に新星が登場したかと思われたが、そのスピードはスプリントでこそ。
ということで日本国内に目指すべきレースが少ないと見るやすぐにダートの本場アメリカへ遠征。手始めに挑んだチャーチルダウンズSで楽々と勝ち切ってみせ、GⅠ初制覇を果たしてしまった。
あの衝撃から半年。じっくり乗り込んできたことを考えれば体調面の不安はなさそうで、1200mはベスト条件。自慢の末脚を武器にここでも度肝を抜く走りを披露するだろうか。
そして2年連続の挑戦となるアメリカンステージ。
もともと安定感に乏しいタイプなだけに時にポカがあるように見えるが、ここ一番での集中力は抜群。昨年は直線で2番手に付けるという見せ場を作っただけに今年も流れがハマれば一発があるだろう。
迎え撃つアメリカ勢のライバルたちは3歳馬イングリッシュマンに要注目。
ここまで5戦4勝、2着馬に付けた着差の合計は24馬身オーバーというまさに怪物。直近もGⅠを2連勝してきて臨戦過程もバッチリ。初古馬相手の一戦となるが軽々と通過するかもしれない。
そんなモンスターを相手に、ロードフォンス&アメリカンステージはいったい、どんなアプローチでこのレースに臨むのだろうか。
今度は日本時間1日の午前5時20分に発走するブリーダーズカップマイル。
芝で行われるレースということもありアメリカ所属馬よりも欧州馬の活躍が目立つが、日本からは2年前のスプリンターズS勝ち馬ルガルと今年のNHKマイルC2着馬アスクイキゴミが挑む。
ルガルと言えば、浮き沈みが激しい馬で2年前のスプリンターズSを制する前は高松宮記念で10着に惨敗。
スプリンターズS制覇後の香港スプリントは11着とアテにならない印象がどこかにあったが、昨秋辺りからそうした印象を払拭。
昨年暮れの阪神Cで久々に勝利を挙げると、今年の春はスプリントGⅠを求めて海外遠征。アルクオーツスプリントでは海外の強豪相手に2着に食い込んでいる。
海外遠征へのノウハウを積み、体調面も問題がなくなった今ならマイルの距離も異国の地でのレースも対応してくるだろう。
一方、アスクイキゴミはこれが初めての海外遠征。
デビュー2戦目となったチャーチルダウンズCを勝利してNHKマイルCに挑むと、勝ったロデオドライブにタイム差なしの2着と大健闘。
キャリアはわずか3戦、本来ならばブリーダーズカップマイルでは除外対象だったのだが、出走に滑り込んだという強運を考えるとここでも侮れない存在となりそうだ。
そんな2頭の前に立ちはだかるのは絶対王者・ノータブルスピーチ。
昨年のこのレースでもインから突き抜けて勝利しているように爆発的な瞬発力とアメリカの小回りコースへの適性は折り紙付き。
今年もGⅠを2連勝してから挑むという臨戦過程なのでまさにスキがない。他にも今年の英1000ギニー、フォレ賞を勝利した3歳牝馬トゥルーラブなど、実力馬が多数揃った。
芝のビッグレースであるブリーダーズカップターフは日本時間1日の午前6時36分に発走。ここには今年8歳となる古豪・ディープモンスターが出走する。
不世出の名馬・ディープインパクトのラストクロップとしてデビューし、重賞戦線をにぎわしてきた古豪は7歳の秋まで重賞に恵まれなかったが、実に16回目の挑戦となった京都大賞典を勝利して重賞勝ち馬の仲間入り。
これで勢いづいたのか、8歳になった今年は初の海外遠征であるアミールTも制し、さらに春の香港で行われたチャンピオンズ&チャターCでロマンチックウォリアーの3着に入るという狂い咲きを見せた。
国内ではあと一歩届かなかった馬が海外で突然覚醒するというのは、あのステイゴールドと同じパターン。無欲の一発がキーンランドでも炸裂するだろうか。
しかし、芝2400mという条件だけにライバルたちもかなり強力。その筆頭格は今年の凱旋門賞でも3着に入ったGⅠ4勝馬ダイヤモンドネックレス。
結果次第ではジャパンCへの遠征も検討しているということもあり、日本の競馬ファンにとっては見逃せない1頭となりそう。
他にも凱旋門賞2着、英チャンピオンズS3着と相手なりに走れるのが強みのイギリスのベイシティローラー、愛ダービー馬ベンヴェヌートチェッリーニらも楽しみな存在だ。
そして真打ち、ブリーダーズカップクラシックは日本時間1日の午前7時16分に発走を予定。連覇が懸かるフォーエバーヤング、そしてテーオーパスワードがここに挑む。
フォーエバーヤングについてはもはや、語ることはないかもしれない。3歳時からその目は常に海外へ向いており、3歳はケンタッキーダービー3着、ブリーダーズカップクラシック3着といきなりアメリカのトップホースたちと互角のレースを展開。
そして4歳になるとその強さはまさに異次元に。年明け緒戦のサウジCでロマンチックウォリアーをサシカエして世界を震撼させると、秋には2度目の挑戦となったブリーダーズカップクラシックを制覇。日本馬として初のこのレースを制してみせた。
だからこそここで負けられない。現役ラストイヤーとした今年もサウジCを制し、秋はこのレースを目指して調整し、前哨戦のJCゴールドCを楽勝したばかり。ライバルたちを蹴散らすような力強い走りを期待したい。
そしてもう1頭の雄・テーオーパスワード。
フォーエバーヤングとともにケンタッキーダービーに挑みこちらも5着に健闘した素質馬。その後は国内中距離戦で活躍を見せているだけに、そろそろビッグタイトルが欲しい。
日本馬にとって最大のライバルは昨年のアメリカ年度代表馬ソヴリンティ。
今年も前哨戦のホイットニーHを快勝するなどその力は衰えていないが、フォーエバーヤングが勝利したJCゴールドを左後ろ脚の不安で回避。万全の状態でレースに出られるかがカギを握る。
3歳馬では今年の二冠馬ゴールデンテンポも怖い存在。持ち味である強烈な末脚を生かしてここでも番狂わせを演じるだろうか。
連覇を目指すフォーエバーヤングにGⅠ初制覇を目論む古豪・ディープモンスター、そして他の日本馬たちがアメリカ競馬界の祭典でどんなレースを見せるのか......今年もきっと訪れるであろう歓喜の瞬間をぜひとも見届けたい。
■文/福嶌弘