そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない
始まった新たな戦い。今回の世界卓球は女子ダブルスがとりわけ熱かった。「みまひな」の注目度も高いが、こちらは「かすみう」。石川佳純と平野美宇の世界ランク1位ペアをカメラが追った。
他人の存在によって磨かれる強さもあることを平野の歩みは教えてくれる。最初の手ほどきは母から受けた。上手にできると褒めてもらえる。それが嬉しくて努力の毎日。
初めての全国優勝は7歳だった。平野美宇にとって同学年のライバル伊藤美誠は成長の階段を一緒に登ってくれた人。
14歳の時、ダブルスを組んで史上最年少優勝。夢はもちろんオリンピック。
けれどリオ五輪では同学年の伊藤が代表入りしたのに自分はリザーブメンバー。球拾いや雑用の日々を送った。
日本女子が団体銅メダルを獲得した時、「なぜ自分はあそこに立てなかったんだろう?」離れてしまったライバルとの距離。それを埋めるため、平野は今までの自分を捨てる。
リオの翌年、全日本選手権三連覇中だった石川佳純は驚いたに違いない。かつて安定型のプレースタイルだった平野は速いプレーで果敢に攻める超攻撃型に変わり身を遂げたのだ。
そして女王・石川佳純敗れる。当時16歳だった平野が新女王の座についた。
口も利かなかった二人
一昨年、二人はまだ親友ではなかった。それどころか互いに口も利かない状況だった。
原因は東京オリンピック。シングルス代表の座を二人は争っていた。
数試合を残し、ポイントはわずかに平野が上回っている。そこにあったのは息が詰まるような緊張感。殺伐とした空気の中、直接対決を迎える。
ここで石川は痛恨の敗北。史上最も過酷と言われた代表争いがそこにあった。
1年がかりの代表選考レースは最終戦までもつれ込む。二人の実力はそれほど拮抗していた。結果、石川が勝利し代表の座をつかむ。
だが同時に二人が誰よりも確かに知ったのは互いの強さだった。恨みなんかない。かすみうという最強ペアは、だから生まれた。
かすみうの魅力
平野は団体戦メンバーで東京オリンピックへ。石川佳純とペアを組み快進撃をみせる。
歳の差は8歳。経験と思い切りとが生む相乗効果がかすみうの魅力だ。
なんと決勝まで全試合ストレート勝ち。最後は惜しくも中国に敗れたものの銀メダルを獲得。そして、このあとかすみうの世界ランクは1位になる。
あの過酷だった選考レースで二人だけが見た世界。そこでできた絆がどれだけ強いか。
人は人によって磨かれ、アスリートは戦いによって鍛えられる。この二人ならと期待せずにはいられない。