11月5日放送の『卓球ジャパン!』は、9月に行われた第2回パリ五輪日本代表選考会 全農CUP TOP32の準決勝、伊藤美誠(スターツ)対早田ひな(日本生命)の一戦をピックアップ。
日本卓球界のレジェンドで、現在はWTTジャパンジェネラルマネージャーを務める福原愛をゲストに招いて両者の奥深い駆け引きをDEEPに分析してもらった。
順当に勝ち上がり準決勝進出を果たした伊藤と早田。好調の早田はすべてストレートで勝利し、準々決勝では平野美宇(木下グループ)を圧倒するほどの強さを見せた。
今年1月の全日本選手権では4-1で伊藤が勝利。その時は伊藤に対して短いサーブを軸に戦った早田だったが、今回は長いサーブで伊藤のレシーブを崩していく。
たとえば第1ゲーム8-6、早田が出したフォア前へのショートサーブに対して、伊藤は若干出遅れてフォアでレシーブ。伊藤としては表ソフトでのバックで仕掛けていきたい場面だが、ロングサーブがあることで思い切って前に出ることができなかったのだ。
逆に伊藤のほうも早田のロングサーブを狙い、少しでも甘くなったサーブは回り込んでレシーブ強打。早田も鋭いサーブを出したいが、距離の短いストレートへのロングサーブはミスしやすく、そう簡単に厳しく出すことはできない。
また伊藤はショートサーブに対しては台から出るか出ないかのハーフロングのレシーブをうまく使い、ドライブで軽くかけさせて上から叩く戦術で早田のパワープレーを封じた。
お互いのサーブ、レシーブだけでも深い駆け引き、戦術があることを、福原とMC平野早矢香が深く深く分析していく。一進一退となった第1ゲームは、終盤の4連続ポイントで逆転した早田がゲームを奪った。

第2ゲームもシーソーゲームとなるが、徐々に早田のサーブに対する伊藤の読みが冴えていく。伊藤のすごいところは普通の人と真逆のレシーブができること。
「本来はフォア前はフォアハンド、バックに長いのはバックハンドで取るのが自然だけど、バックに長いのをフォア、フォア前はバックで取るというイレギュラーなことをやっている。これは思い切りがないとできない。フォア前をバックで取るのは賭け」と、同じくバック表異質型の福原も舌を巻く伊藤のハイレベルなレシーブテクニックだ。
また「(伊藤は)卓球が変わってきた」ともコメント。「前よりもすごく落ち着いてプレーをしている。前は良くも悪くも"美誠ワールド"があったけど、淡々とプレーすることがさらに多くなった」とリオ五輪の団体では伊藤とダブルスも組んでいた福原が語った。
第2ゲームで平野が驚かされたのは、早田リードの10-9での伊藤のプレー。ピンチの場面でミドルに来たボールを体勢を崩しながらスマッシュを決めたのだ。
「自分のエースボールではないけど、入るギリギリのところで最高の攻め方をしている」(平野)
逆に追いついてからは、無理に攻めすぎず我慢のプレーで早田のミスを誘ってゲームを奪い返した。押すプレー、引くプレーを状況に応じて変化させられるのが伊藤の強みだ。
第3、第4ゲームを伊藤が取って、ゲームカウント3-1となったところで再び早田が盛り返す。
第5ゲームは回転をかけて、弧線をうまく使った返球で伊藤のミスを誘うと、第6ゲームは怒涛の攻めで早田がゲームカウント3-3に追いついた。

そして勝負の最終第7ゲームは1本目からハイレベルなラリーが繰り広げられ、これを伊藤がものにする。
「今までの6ゲーム目までのものがすべてこの一球に入ってる感じ」と福原。
出足の1本で主導権を握った伊藤は、台からの距離もぴったりと合い、ラリー戦をことごとく制していく。
そんな高速のラリー戦で光ったのは伊藤のフォアミドル処理。ミドルを突かれてもボディワークを使ったコンパクトなスイングできっちり対応した。
「伊藤選手は手首を使ってドライブするタイプじゃないのでフォアのボールが安定する。あと早田選手が左利きなのでバックドライブのボールは伊藤のフォア側に逃げていくのでドライブがしやすい」(福原)
8-1と一気に突き放した伊藤だったが、ここからの早田の粘りもすさまじく、10-4からじわりじわりと追いつき一本差まで迫った。しかし最後は伊藤がレシーブから攻めて11-9で勝利。大激戦となったライバル対決は、お互いに持ち味を存分に出し切った結果伊藤に軍配が上がった。
「2人はすごい戦術を組み立てているわけではないと思う」と福原が意外な発言。「中国人コーチに教わっている選手だとサーブから3球目、5、7、9球目くらいまで頭に入れて、サーブレシーブするが、2人は大まかに決めているけど、あとは反射神経や自分がやりたいことをやる。だから逆に中国選手にとっては読みにくく、そこが勝てる秘訣ではないかと感じました」と両者が中国に対抗できる理由を分析した。
中国選手も手を焼く"みまひな"の独創的な戦術&プレー。パリ五輪へ向けてさらなる進化を期待したい。

