1月21日放送の「卓球ジャパン!」は、"平野美宇、復活の軌跡スペシャル"。昨年11月に行われた第3回パリ五輪日本代表選考会「全農CUP TOP32」で優勝し、選考ポイントで3位に躍り出た平野だが、ここまでの道のりは平坦ではなかった。その軌跡をDEEPに掘り下げた。
ゲストに世界卓球2008、2010団体銅メダルの藤井寛子、元日本代表男子監督で現在は平野が所属する木下グループ総監督の倉嶋洋介を迎え、復活の鍵を探る。
平野は幼いころから天才卓球少女として注目されてきたが、なんと言っても卓球界をあっと言わせたのが2017年アジア選手権での活躍。中国が誇る丁寧、朱雨玲、陳夢を3連続で破り、日本選手として21年ぶりの優勝を果たした。
「神がかってましたよね、両ハンドが」(倉嶋)
「中国選手から1ゲーム取るだけで大変なのに勝ち切ってましたから。新時代が来たなって思いました」(藤井)
そのあまりにも速い卓球は"ハリケーン・ヒラノ"と呼ばれた。
「みんなが感じたことのない打点の早さでした。今の卓球を平野選手が作り上げてきたと言ってもおかしくない」(藤井)
しかし、この平野の活躍が中国を本気にさせてしまった。さらに、世界の卓球も平野に触発されたように高速化が進み、勝てない時期が続く。
その苦しい時期に行われたのが2020東京五輪の代表選考レースだった。平野は2019年グランドファイナルで王芸迪(中国)に敗れ、惜しくもシングルス代表の座を逃す。
この時期の平野について「中国選手のボールが深くなった。それによって台から下げられて、ボールが軽くなったところ打たれる形だった」と藤井が言えば、「中国選手は台から下がり気味にして速いボールに対応し、タイミングを外しながら高速卓球を潰していくやり方。それに対してこのときの平野は決定打を打てなかった」と倉嶋。
そんな平野に大きな転機が訪れる。去年4月に木下グループに移籍し、JOCエリートアカデミー時代に指導を受けた中澤鋭コーチと再びタッグを組むことになったのだ。アジア選手権で優勝したときのコーチであり、平野にとっては心強い存在だ。
同時に倉嶋も総監督として平野の卓球を見るようになる。倉嶋が気がついた課題は次の3つだった。
「ひとつは、タイミングを早くしようとしすぎてフォームが小さくなっていたこと。もうひとつは平野の代名詞とも言われる巻き込みサーブをやり続ける傾向があったため、サーブの種類を増やすこと、それとフットワーク。これだけ技術があるのに力を発揮できないのは動きが悪いためです」(倉嶋)
練習のやり方も工夫をした。女子は男子と比べると同じ練習をやり続ける傾向があるという。
「あと、おしゃべりが半分くらい入ってくる(笑)」(倉嶋)
「そこはね、みんな好きなんです」(藤井)
それに対して男子は動く練習が多いため、その男子的な練習を取り入れてフットワークを強化した。
そして迎えた第3回選考会、準々決勝の相手は伊藤美誠。
藤井が注目したのは、平野のサーブだった。得意の巻き込みサーブに加えて、シンプルな下回転を混ぜることで、伊藤のレシーブを単調にすることに成功していたのだ。
「みんな伊藤を倒そうといろんなことをするんですけど、伊藤は対応力がもの凄いので、複雑にやろうとすると全部対応されて、かえって複雑に返ってくる(笑)」(倉嶋)
そのため、伊藤に勝つにはシンプルなやり方をするのがよいと、世界中で言われていると倉嶋は語る。そこまで対策が知れわたっているのも、世界的選手の宿命だろう。
また、両ハンドを振る平野がいつも相手に狙われるのが、フォアハンドとバックハンドの中間、つまりミドルだ。そのため、ミドル処理も徹底的にしてきたと倉嶋。
この試合でも、伊藤が平野のミドルを攻めてきたが、見事なボディワークで対応した。結果、平野は驚きのストレート勝ちを収め準決勝に進んだ。
次の対戦相手は芝田沙季。ミスが少なく非常に粘り強い選手だが、4-2で押し切った。
そして迎えた決勝の相手は、選考ポイントでトップを独走する早田ひな。
立て続けに2ゲームを奪われたが、ここから平野が反撃の狼煙を上げた。藤井が注目したのが、早田のミドルをついてからフォアに攻める平野の作戦。こうした場面で早田の体勢が崩れるという。
「この辺りは作戦としてあったんでしょうか?」(MC武井壮)
「ありましたね。あんまり言うと後で平野に怒られるかもしれないんですけど(笑)」(倉嶋)
そう言いながらも作戦を明かしてしまう倉嶋だったが、実はトップ選手は、良かった戦術は次の試合では出さないことが多いという。相手は必ずその上をやってくるので、お互いにその先の読み合いで戦術を決めてくるというのだ。DEEP解説の真骨頂である。
こうして、平野は怒涛の4ゲーム連取で逆転勝ちし、見事に優勝を遂げた。
この復活を期に、"ハリケーン・ヒラノ"を超える"スーパーハリケーン・ヒラノ"を期待したい。