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東京、下町のとあるマンション。間宮兄弟はここで一緒に暮らしている。
兄、間宮明信は、ビール会社の商品開発研究員。子供のころから色水を作るのが大好きで、いつかその色があまりに気に入り、飲んでしまい下痢が収まらず、病院に運ばれたこともあった。
弟、間宮徹信は、小学校の校務員になるため、真っ赤な顔して汗をかきながら途方もなくたくさんの講習を受けた。そんな彼は、何かとことん落ち込んだり哀しいことがあると必ず新幹線の操作場に行く。彼は新幹線が好きなのだ。
彼らには共通の大好きなもの?とその楽しみ方?がある。横浜ベイスターズの試合をテレビ観戦する時は、ベイスターズの帽子をかぶりスコアを記入する(勝った時用の紙ふぶきも忘れない)。ビデオ鑑賞に欠かせないのはお気に入りの飲み物(明信はビール、徹信はコーヒー牛乳)と山盛りのポップコーン。休日の午後の昼寝、散歩、餃子じゃんけん、自転車、クロスワードパズル、紙飛行機etc.……彼らは自分たちの世界で、楽しく穏やかに何不自由なく暮らしている。お互い、恋人はいないけれど。
「この部屋でカレーパーティーやろうか」
ある日、徹信が兄に持ちかける。招待客は二人の女性だ。
一人目は、徹信と同じ小学校で働く葛原依子先生。依子は、密かに同僚の教師、犬上と交際中だが、なかなか煮え切らない犬上の態度に苛立っている。教室で徹信に誘われた依子は、気晴らしにとOKする。
二人目は、行きつけのビデオショップでアルバイトしている大学生の本間直美。直美には浩太というボーイフレンドがいるが、野球部の練習ばかりでろくにデートもしてくれず、不満を抱えている。お店で明信に誘われた直美は、暇つぶしと興味本位でOKした(本当は事前に徹信に頭を下げられ、断れきれなくなっていた)。
カレーパーティー当日。カレーは3種類のチョイスカレー(チキン、ビーフ、シーフード)、テーブルの上には花、食後のボードゲーム、準備は完璧。
緊張する兄弟をよそに、依子と直美は部屋にある様々な物(新幹線の模型、ボトルキャップのコレクション、最新型洗濯機、大量のゲーム、本etc.)を珍しそうに物色する。カレーは大好評、モノポリーは大興奮、パーティーは大成功に終わり、今日の反省会?は史上最高に盛り上がった。
夏休み、間宮兄弟は、母と祖母の暮らす故郷・静岡に帰省する。母の大好きなお土産をたくさん買って、大好きな新幹線に乗って。
新富士駅には母、順子が中古で買ったロールスロイスでお出迎え。田舎に帰れば兄弟は今も子供のまま。おこづかいをもらい、ここでもやっぱり昼寝をし、海水浴を楽しんだ。
仕事帰りに時々、明信はビール会社の先輩である大垣と安西とバーに立ち寄る。この日は、大垣と二人カウンターに座り、ある相談を受けていた。大垣は妻、さおりに離婚を切り出して以来、家に入れてもらえないという。そして離婚の原因は安西との不倫にあるというのだ。「さおりと安西の二人を知っているのはお前だけ。何とかしてくれ」と言われ、明信は唖然とする。
数日後、大垣家のリビングで向かい合う大垣と明信、そしてさおり。離婚の話は平行線、さおりの用意した料理も手付かず……明信は大事な弟の待つ家に早く帰りたいと思っていた。
しかし同じ夜、徹信は兄の帰りを待っていなかった。セクシーキャバクラで過ごした後、ゲームセンターで知り合った女エイコに誘われるがままバーに行き、「コーヒー牛乳2杯で10万円」というとんでもないぼったくりに遭っていた。
怒りに震えながら家に帰った徹信を、明信が暖かく迎える。兄の得意の塩むすびを食べながら落ち着きを取り戻し、癒やされる徹信。幸福な深夜の風景。
夏もそろそろ終わり。今日は、間宮兄弟の家で浴衣パーティー?。
今回は依子と直美に加え、直美の妹の夕美とその彼氏の玉木も参加した。初めて来た夕美と玉木は、例によって兄弟の部屋のマニアぶりを見学。ベランダでは、依子が犬上と別れたことを直美に打ち明けている。神経衰弱、モノポリー、そして線香花火……最後の炎が消えたところでパーティーもお開き。今日の反省会?でさっきまでの出来事をかみ締めながら、明信は自分が直美に恋していることをあらためて実感する。
明信が仙台出張の夜、間宮家の電話が鳴る。電話をしてきたのは大垣の妻、さおり。どうしても大垣に渡して欲しいものがあるとさおりが言い、徹信が代理で受け取りに行く。
喫茶店でさおりと対面する徹信。なぜ大垣はこんなに素敵な奥さんと離婚しようとしているのだろう? そして、なぜ兄はその片棒を担いでいるのか?
仙台から帰った明信を、むすっとした顔で迎える徹信。大好きな笹かまぼこにも見向きもせず、大垣の一件で兄を責める。徹信はさおりの美しく寂しげな表情が頭から離れなかった。
直美のいるビデオショップに、今日は明信が一人でやってきた。勇気を振り絞って明信が言う。「どこかに二人でデートに行きませんか?」 ……直美は好きな人がいると告げた。明信はあっさりフラれてしまった。
徹信を呼び出し、兄弟は行きつけの銭湯でリフレッシュし、夜の公園で紙飛行機を飛ばす。飛行機は修正すれば飛び方を変える。しかし、恋は修正がきかない……。
一方で、浴衣パーティー以来、夕美と玉木は徹信の働く小学校を時々訪れるようになっていた。夕美は徹信の仕事に興味津々だったし、校務員室はなんだか居心地が良かった。
10月12日。間宮兄弟は毎年、母の誕生日であるこの日に順子を東京に招いて、とびっきりのおもてなしをする。正装した兄弟と着物姿の順子は都内の有名レストランで高級フルコースを楽しみ、ボウリング場で大いにはしゃぎ、今度はお正月に会おうと言って新幹線のホームで別れる。
ある晴れた日。精一杯のおしゃれをして、派手にオーデコロンを降りかけた徹信が、電車に乗って、大垣さおりに会いに行く。公園のベンチの端と端に腰掛け、徹信はさおりのために用意したプレゼント(入手困難な犬の健康食と、さおりのために編集したMD)を渡そうとするが、さおりに冷たくあしらわれる。ペットはイヌノコブちゃん?という名前のネコだったし、@│Podを愛用しているさおりにMDは必要なかったから。
そして、徹信は例によって新幹線の操車場にやってくる。夕日に照らされた新幹線たちは哀しくて美しい。そこにいつものように自転車で迎えに来た明信が言う。「二人でこれからも暮らそう。静かに。今まで通りに」
秋も深まった小学校の校庭。仕事中の徹信のもとに、また夕美がやってきた。この日は一人。玉木は勉強をしにパリに渡った。さおりに振られたばかりで元気のない徹信の背中に、夕美が抱きつく。「これは違うよ、アイじゃないよ。友情の抱擁だから……」 そして夕美は何事もなかったかのように徹信の携帯に自分の着メロを作り始める。徹信もドキドキをカモフラージュするかのように再び作業を始める。
公園でシーソーに乗る直美と夕美。クリスマスは間宮兄弟宅のおでんパーティー?に行こうと夕美が誘うが、直美は以前に明信の誘いを断ったことをまだ気にしている様子……。
「私たち、こんな風に二人でぶらぶら過ごせるのも今だけかもしれないね」と直美がつぶやくと、夕美が明るく返す。「そんなことあるわけないじゃん。だって間宮兄弟を見てごらんよ。いまだに一緒に遊んでるじゃん」
もうすぐクリスマス。間宮兄弟は今日もビデオショップにやってきた。直美はもういない。就職が内定した映画宣伝会社でアルバイトを始めた。兄弟には、今年も女の人とのクリスマスの予定はない。今年の計画は、ロケーションのいい映画のビデオを見まくって、今度の兄弟旅行の行き先を決定するというもの。
部屋に帰って、熱心にビデオを見る二人。布団の中でも旅行先をどこにするか、思いを巡らす││ラスベガス、ニューヨーク、ロス、ヴェネチア、カンヌ、ベルリン、上海、釜山││と、いつの間にか徹信は眠ってしまっている。「何だよ、イヴなんだから、朝まで話し合おうって約束したじゃないか」 もぞもぞと起きだす徹信。すると、徹信の携帯が鳴る。夕美からの電話だ! 二人は目を輝かせて液晶画面を食い入るように見つめる。 |