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海は見ていた
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photo1 江戸・深川。
 将軍のお膝元である八百八町の町の中でここは、大川(隅田川)の向こう“川向こう”と称され、ちょいと吉原、辰巳の遊びに飽きた粋人や訳ありの衆が集う岡場所(私娼地)がある、葦繁る外れの町とされていた。
 深川のお女郎宿“葦の屋”で働く、まだ若く器量よしのお新(遠野凪子)は、女将さんやら姐さん方から「客に惚れてはいけないよ」と哀しい掟を教えられていた。ある夜、お新は町で喧嘩して刃傷沙汰を起こし逃げてきた若侍・房之助(吉岡秀隆)をかくまってやる。
 房之助の「こんな商売をしていても、きっぱりやめれば汚れた身体もきれいになる」という言葉に心動かされる。
 その言葉を立ち聞きして感動した姐さんたちは、彼女のために一肌脱いでやろうと提案する。姐さん衆のまとめ役、菊乃(清水美砂)は、気のいい隠居善兵衛(石橋蓮司)の身請け話とヒモの銀次(奥田瑛二)との腐れ縁が断てず悩みを抱え揺れている分、お新の純な恋を暖かく見守る。
photo2  そんな恋路にも終わりが来る。房之助が勘当を許された報告にやって来た際、お新と姐さんたちに自分の婚礼の話を晴れやかに告げたのだった。憤りを隠せない姐さん衆、突然の告白に動揺するお新。そんな彼らに房之助は当惑する。
 彼はただ、お新を姉妹のように慕っていただけだったのだ。
 一時は寝込むほど傷ついたお新も、徐々に立ち直りかけていた。
 そんな彼女の前に一人の謎めいた青年が現れる。名を良介(永瀬正敏)と言い、寡黙な彼が少しずつ自分の厳しい生い立ちを語るにつれ、同じ境遇の宿命を背負った人間だと、お新は理解する。
 不幸に打ちのめされ、自暴自棄になった良介を優しく励ますお新に対して、菊乃は「そんな男はヒモになるのがオチだ」と諦めるようにさとす。
photo3  お新をめぐる人生模様の糸が絡まり合った、ある夏の日。雷鳴の轟音と共に激しい雨が降りしきる。やがて嵐に変わり、川は氾濫、高潮の兆しも見せ始める。
 逃げまどう人々をよそに“葦の屋”を守ろうと居残る菊乃とお新。水位は増し、菊乃もお新も逃げ場を失い“葦の屋”の屋根まで追いつめられる。「みんな水に浸かってだめになるのなら、一番いい着物を着よう」と、とっておきの着物を身にまとい二人は屋根へ登る。海に呑み込まれた“葦の屋”の屋根の上、その時だった、小舟に乗った良介が助けに現れたのは。

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