帯広 豚丼の発祥の店『ぱんちょう』。ここでしか食べられない元祖の味と豚丼誕生秘話を探る!

2016年4月22日

帯広 豚丼の発祥の店『ぱんちょう』。ここでしか食べられない元祖の味と豚丼誕生秘話を探る!
全国各地に同じ名前の料理は数あれど、本場の『豚丼』といえば帯広のものを指します。厚切りの豚肉にしょうゆベースの濃厚なタレをからめ、丼にあふれんばかりに肉がのっているのが王道のスタイル。今では、スーパーでも豚丼のタレが売られるほどメジャーな料理となりました。そんな豚丼の発祥の地、北海道帯広市で豚丼のルーツに迫ります。

鰻丼をヒントに生まれた「豚丼」

豚丼のルーツをたどっていくと、北海道帯広市にある『ぱんちょう』という一軒のお店にたどり着きます。1933(昭和8)年、阿部秀司さん(故人)は、JR帯広駅前の現在と同じ場所に大衆食堂『ぱんちょう』を開業。店名は、中国語で「飯亭(食堂)」を意味します。 現在お店を切り盛りする長女の阿部幸子さんは、「父は西洋料理のコックでした。農家にいる豚を見たとき、冬場はマイナス30度にもなる帯広で一生懸命働く人々に、豚肉で元気の出る料理を作れないかと考えました。当時は肉といえば鳥の時代。豚はまだ珍しく、豚カツなどの洋食は庶民の手の届かない料理でした」と話します。 寝ても覚めても豚肉を使った新しい料理の研究に没頭した阿部秀司さんは、苦労の末に、炭火の網焼きで豚肉を焼き、日本人の大好きな鰻丼をヒントにしたタレをからめ、丼として提供する豚丼を生み出しました。大衆食堂『ぱんちょう』の開業時に、すでにメニューの中に豚丼はあったと言います。
帯広 豚丼の発祥の店『ぱんちょう』。ここでしか食べられない元祖の味と豚丼誕生秘話を探る!
帯広駅前にある『ぱんちょう』。お昼時ともなると、豚丼の元祖の味を求める人で、長蛇の列ができます
帯広 豚丼の発祥の店『ぱんちょう』。ここでしか食べられない元祖の味と豚丼誕生秘話を探る!
『味が落ちるから支店を出すな』という先代の遺言を守り、唯一この地で営業を続けています

出張や単身赴任の人の口コミで広がる

『ぱんちょう』のメニューとして豚丼は誕生しましたが、すぐに世の中に広まったわけではありませんでした。当時は、豚肉を食べ慣れていなかったため、敬遠した人が多かったようです。 「そんな中、出張や単身赴任で帯広にやってきたお客さんが、豚丼を食べて、帯広にはこんな料理があったと広めてくれるようになったのです」(阿部さん) それがきっかけで豚丼の知名度が高まり、道内のテレビで帯広名物として取り上げられたこともあり、徐々に豚丼の人気は高まっていきました。こうして、1965(昭和40)年に、『ぱんちょう』は、大衆食堂から豚丼専門店となります。 「豚丼を商標登録したらどうか、と勧められたこともありました。しかし父は、料理は美味しければお客さんが来てくれるし、そうでなければ来てくれない。それだけのこと。真似するなら、自由に真似をして構わないという姿勢でした」(阿部さん) 先代の寛大な考えによって、豚丼は帯広市内の飲食店に広まり、現在は100以上のお店で提供され、学校給食のメニューにもなりました。豚丼の製法も、『ぱんちょう』のような炭火の網焼きの他、電気グリルを使ったものや、フライパンを使ったものなど、多様化。そして今や、豚丼は全国に知れ渡り、帯広の重要な観光資源のひとつとなっています。
帯広 豚丼の発祥の店『ぱんちょう』。ここでしか食べられない元祖の味と豚丼誕生秘話を探る!
『ぱんちょう』のメニュー。松竹梅が逆さなのは、創業者の阿部秀司さんが妻の梅さんに敬意を払ってのこと。最大サイズの豚丼はもともと「特」だったが、女性も注文しやすいようにと「華」に改名(価格はすべて税込)
帯広 豚丼の発祥の店『ぱんちょう』。ここでしか食べられない元祖の味と豚丼誕生秘話を探る!
お客さんが黙々と食べる姿が印象的。土日の食事時は混雑するため、時間をずらすと入りやすいかも

フタを取って、ひととき至福を味わう

『ぱんちょう』ののれんをくぐったら、華1,300円(税込)となめこ椀200円(税込)を注文します。待つこと十数分、フタをされた丼が運ばれ、テーブルに置かれます。丼に収まりきらず、フタの端から肉がはみ出しています。
帯広 豚丼の発祥の店『ぱんちょう』。ここでしか食べられない元祖の味と豚丼誕生秘話を探る!
このフタを取る瞬間が、何とも言えないワクワク感を演出してくれます フタを取ると、網の焼き目がついた、秘伝のタレをまとう豚肉が、ご飯の上に重なりあうように並びます。
帯広 豚丼の発祥の店『ぱんちょう』。ここでしか食べられない元祖の味と豚丼誕生秘話を探る!
『ぱんちょう』の豚丼。道内で仕入れた生の豚肉を炭火で焼き上げ、秘伝のタレをつけ、丼に敷き詰める。その上に、彩りのグリーンピースが乗ります 香ばしい炭の香りと、甘い匂いが食欲をそそります。ほどよく脂ののった柔らかな歯ごたえの豚肉は、甘いタレで旨みが引き立ち、ご飯がどんどん進みます。至福のときはあっという間に過ぎ去り、気づくと丼をきれいに平らげています。 近年は、海外のお客さんも増えているのだとか。中には、この味に魅了され数年のうちに8回訪れたというリピーターや、「豚丼」と書かれたオリジナルTシャツを着て来店する熱狂的なファンもいるそうです。帯広の地で誕生した豚丼が、世界の豚丼になる日も、そう遠くはないのかもしれません。
帯広 豚丼の発祥の店『ぱんちょう』。ここでしか食べられない元祖の味と豚丼誕生秘話を探る!
創業者の長女である阿部幸子さんは、今年で83歳になる看板娘。お客さんを大切にもてなす、心尽くしの接客も『ぱんちょう』の魅力です ■ぱんちょう 住所:北海道帯広市西一条南11-19 電話番号:0155-22-1974 営業時間:11時00分~19時00分 定休日:月曜、第1・第3火曜(祝日の場合は翌日休) 駐車場:無 関連記事: 十勝・帯広でしか食べられない幻のカレー『インデアン』。地元民が鍋で持ち帰る、その人気の秘訣とは?