錦織圭 長期離脱を経て、新たな自分へ!全仏と歩むテニス人生

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2020.10.9


そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない

今年の全仏はすべてが異例尽くしだった。

例年の賑わいはなく、人影はまばら。新型コロナウイルスの影響で四か月遅れの開催となった。錦織圭は手術後、初めてのグランドスラムで、10回目となる節目の出場だった。錦織にとって全仏は印象深い戦い、感慨深い結果が多い。

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日本人選手として75年ぶりのベスト16進出を果たした2013年もそう。当時23歳だった錦織はベスト8をかけてナダルと対戦し、世界の壁を知らされる。身長178センチとトップ選手の中で小柄な錦織は得意のストローク戦に持ち込み、相手のミスを待つ。しかし、赤土の王者にミスはなかった。

自ら決めきる力がなければ世界では勝てない。それを思い知った年の終わりに、大きな出会いと変革が訪れる。

マイケル・チャンコーチとの出会い

マイケル・チャンがコーチに就任したのだ。身長172センチのチャンは史上最年少の17歳で全仏制覇を果たしている。小柄な体でどう勝つか。その道筋を知る往年のレジェンドは錦織のプレーを変えていく。

チャンは錦織にフォアハンドを中心にした打球の強さを求めた。2014年、全米オープン準優勝などの快進撃はその賜物だった。ただ待つのではなく、一球一球を攻めながら待つ。その結果が逆転の錦織という異名を呼んだ。

攻めるタイミングと守るタイミングを明確に見極める。その結果、相手のウイニングショットが精度を欠きチャンスが生まれる。それが逆転の錦織の真相。精も根も尽き果てる一戦をどれだけ繰り返したか。

【動画】全仏テニスでの復活にかける錦織圭に密着!/Humanウォッチャー

今年6月、歴代選手の逆転勝利率が発表された。名だたる大物を抑えて1位に輝いたのが錦織だった。崖っぷちから巻き返す力をデータは証明している。

手術の決断、長期離脱からの復帰

世界に羽ばたいた錦織が心の大切さを痛感した試合がある。22歳で挑んだ北京オリンピック。結果は一回戦負け。日の丸を背負うというプレッシャーは錦織の想像をはるかに超えていたのだ。

だが経験を生かすのが一流選手。8年後のリオオリンピックではメダルを賭けて過去1勝7敗と大の苦手にしていたナダルを撃破し、銅メダルを獲得した。

何かと運命的な全仏。去年、因縁の深いナダルとの対戦で、それは起きた。立て続けに2セットを失った時、錦織の表情には深い疲労の色が滲んでいた。

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実はこのナダル戦の前日まで2試合で実に8時間以上を戦ってきた。それでも試合は続けたが、完敗だった。

去年10月、ついに手術を決断し、ツアーを長期離脱することにした。さらにチャンコーチとも相談し、去年12月から新コーチを招き入れた。サーブ&ボレーを得意としロンドンオリンピックのミックスダブルスで金メダルを獲得した経歴に、吸収できる何かを感じたのだ。

出場を目指した8月の全米オープンは、新型コロナウイルスに感染し、欠場を余儀なくされた。

トンネルの先で出会える自分を信じて

復帰戦は今月8日のオーストリア。375日ぶりのコートでまずは第1セット。早い仕掛けが目立ったのは試合時間を短くし、体への負担を軽減する作戦だった。しかしまだ試合勘とスタミナが足らず、後半になるとミスも目立つようになり逆転負けを喫した。

新たなスタイルはすぐには身につかない。その後の試合も不満足な結果が続く。言わばそれは生みの苦しみ。この長くて暗いトンネルの先に新しい錦織圭がいる。

全仏オープン開幕2日前、錦織圭がインタビューに応じてくれた。

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思いのほか明るくてまずは一安心。

思う練習は積めている。
新しい自分に会う。
その喜びが今はある。