町田樹NHK杯解説 樋口新葉「ロシア勢に肉薄」新星・松生理乃「ジャンプの質も高い」

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2020.12.23



【町田樹のNHK杯解説】

第3弾は、大技トリプルアクセルを着氷させ、2位となった樋口新葉選手(19)について。
そして16歳の新星・松生理乃選手についても、その魅力を語ってもらった。

ー女子シングル2位だった樋口新葉選手(19)について

トリプルアクセルを成功させたことは、本当に評価できると思います。

10月のジャパンオープンではオーバーターンと言って、ランディング(着氷)はしたんですけどくるっと余分に回ってしまいました。でも今回のNHK杯では、しっかりとランディングしている。大技を大舞台で発揮するという集中力と技術力が身に付いてきているので、樋口選手も着実に前進しているのだと思います。

そして、樋口選手のストロングポイントはジャンプの質の良さなんですけれど、今回跳べているジャンプの質が非常に良かったですし、ストロングポイントがしっかりと維持ないしは向上できているという点で評価できると思います。

ただ、少し厳しいことを言えば、フリーの演技の後に樋口選手はガッツポーズをしました。それはトリプルアクセルを降りたからだと思うんですけれど、実はトリプルサルコウとトリプルルッツという技でパンク(踏切が上手くいかず回転数が減ってしまうこと)をしてしまった。その2つを合わせると多分10点は確実にロストしているんですね。それにも関わらず、ガッツポーズをしているというのは少し考えが甘いかなという印象を受けました。

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写真:長田洋平/アフロスポーツ

フィギュアスケートは大技を決めればいいという競技ではないのです。とりわけ今のルール上は、もちろん大技を跳ぶことも大事ですが、一つのプログラムとして完全なものをやればその人は評価されて上に行くんです。その悟りを坂本花織選手は開いているからこそ、差がついた。

だから樋口選手もトリプルアクセルを跳ぶ・降りる、という目的は分かります。目標を達成した、成功した、それは素晴らしいことですが、その大技を成功させるということだけに集中したり、目的意識を置いてしまったりしては、これから先戦っていけないと私は考えています。

大技というのは、他の土台がしっかりしている中で大技も決めるから効果が発揮されるのであって、大技だけに気を取られて細かなミスやジャンプが疎かになって減点してしまうと、大技を跳んだ意味がないんですね。

樋口選手はせっかくトリプルアクセルという大きな武器を手に入れたんですから、それを最大限に活かすべく他のところは守り切る、ミスをしないという鉄壁の防御を張った上で、トリプルアクセルという大きな武器を撃ち込んでいくことで、4回転ジャンパーが多くいるロシア勢に肉薄していけると思います。

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ぜひこれからの樋口選手には、大技も含めて一つのプログラムというパッケージを完全無欠にしてコンスタントに発揮していくというところに意識を向けてほしいと思っています。期待しています。

ー女子シングル3位だった16歳の松生理乃選手について

松生さんはジュニア選手なんですけれども、素晴らしい成績を残しました。

フリーレッグ(氷についていない方の脚)が綺麗で非常にジャンプの質も高いし、フリーレッグ一つ一つに気を配る丁寧なスケーティングが印象深かったです。

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写真:松尾/アフロスポーツ

今年は残念なことに、世界ジュニア選手権がコロナウイルスの影響で中止になりました。世界ジュニアだけでなくグランプリシリーズも今年はないんですよ。そういう意味でジュニアの選手たちは可哀想なことに国際舞台を経験できていません。

<動画>【町田樹のNHK杯解説】トリプルアクセル着氷の樋口新葉&16歳の新星・松生理乃

だからこそNHK杯という、ほとんどプレ全日本みたいな舞台ですけれど、それでもISU(国際スケート連盟)公認の国際大会です。今を輝くジュニアの選手たちにもこういった国際舞台を味わってもらえたことは非常に良かったと思います。

もう今シーズンはジュニア勢は国際舞台がなかなか叶わないと思うんですけれども、来シーズンはあると信じて、世界のジュニア勢も破竹の勢いで伸びてきていますから、直接相まみえなくても相手のことを感じて切磋琢磨して、邁進していってほしいと思います。