森保一監督 日本代表強化のポイントは60分以降のデュエル

サッカー

2021.1.16

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森保一監督 写真:JFA/アフロ

 日本代表の森保一監督がオンラインで行われた日本サッカー協会主催のフットボール・カンファレンスに登壇し、2018年ワールドカップ・ロシア大会のベルギー戦の分析から60分以降のデュエルがワールドカップ16強突破へのカギになると指摘。全国の指導者を前に今後へ向けた強化のポイントを説いた。

 「デュエルの部分で五分五分にやっていければ、日本は組織力で絶対に相手を上回って勝っていける」

 そう力説したのは、全国の指導者を対象に開催されたカンァレンス3日目の11日に登壇した日本代表の森保監督だ。

指揮官は、2022年ワールドカップ・カタール大会で16強の壁を破るべく、2018年ロシア大会後から日本代表で指揮を執る。そのなかでチーム強化の出発点となっているのが、ロシア大会でのベルギー代表に破れた決勝トーナメント1回戦の対戦だ。

その試合で日本は前半を0-0で折り返した後、後半開始早々の48分に原口元気選手、52分に乾貴士選手が得点して2-0のリードを奪ったが、その後、69分、74分と失点。さらに後半アディショナルタイムに決定打を許し、逆転負けを喫した。

 森保監督は今回、全国の指導者が視聴するカンファレンスで、ロシア大会のグループステージ3試合と決勝トーナメント1回戦の4試合でのデータを提示。

日本戦の後、勝ち進んで3位に入ったベルギーをはじめ、優勝したフランス、準優勝のクロアチア、イングランド、ブラジルなどベスト8入りした各国と比較して、相手との1対1での戦いのデュエルで、59分までは互角の戦いを見せていながら、60分以降では9チーム中最下位に落ちていたことを示した。

 特に興味深かったのが、ベルギー戦後半を時間帯によって4分割して分析したデータだ。

 1区分目は、乾選手の52分の得点で日本が2-0とするまでの時間帯。2区分目はベルギーがフェライニ選手とシャドリ選手の二人を投入する65分まで。

3区分目はベルギーが2得点して2-2する74分まで。そして、4区分目をそこから試合終了までとして、プレー時間、パスの本数とミスの数、パス成功率を比較した。

すると、1区分目ではプレー時間(ベルギー51%、日本49%)やパス成功率(ベルギー84%、日本87%)、ミスの数(ベルギー8。日本5)で日本は互角かそれ以上だった。

ところが、これが2区分目から変化する。プレー時間ではベルギーの59%に対して日本は41%、パス成功率がベルギーの82%に対して日本は64%と1区分目から激減。ミスの数も相手の16に対して日本は18と増加し、試合情勢が変わっていったことが数字から見て取れる。

そして、選手交代を機にパワープレーに転じたベルギーに2失点した3区分目の時間帯では、プレー時間が相手の63%に対して日本は37%とさらにダウン。

ミスの数もベルギーの5に対して日本は10と増加した。パス成功率で日本は74%とその前の時間帯から少し戻したものの、ベルギーは90%と圧倒していた。

最後の時間帯では、日本はプレー時間43%(ベルギー57%)とパス成功率77%(ベルギー85%)と少し改善がうかがえるものの、ミスの数は相手の16に対して22を数えた。

 これらの数字を示して、森保監督は60分以降の戦いで「個々の部分でインテンシティを維持する力を上げていかなければならない」と話した。

さらに、ベルギー戦では交代選手の投入によるパワープレーの圧力に対応できなかったという指摘に触れて、「パワープレーというより、日本がボールを保持できなくなって相手の攻撃が多くなり、日本はリアクションの守備が多くなって疲弊し、最後負けに至った」という分析を披露した。

 デュエルについては、代表選手を輩出するクラブでの数値も紹介。昨シーズンの開幕からの10試合について、Jリーグとイングランドのプレミアリーグ、スペインのラ・リーガの上位3クラブを比較して、他2リーグではデュエル勝率がほぼ40%後半であるのに対して、日本の3クラブはいずれも30%台にとどまっていたことを示した。

森保監督はまた、日本代表MF遠藤航選手(デュッセルドルフ)がドイツのブンデスリーガで、DF富安健洋選手(ボローニャ)がイタリアのセリエAで、デュエル部門でトップに立っている実績にも言及して、「個の強さがあってこそ、日本の組織力が発揮できる」とコメント。

所属クラブでの個々の選手のレベルアップが日本の国際舞台での競争力を上げる重要な要素であるとして、二人のような選手が多く現れることを期待した。

そして、「フィジカルの強度を上げ、攻撃でボールを握ってインテンシティ高く戦える時間を長くする。それが日本の技術力、良さを活かす戦い方になる」などと語った。


西野前日本代表監督の見解

ところで、森保監督が提示した日本代表のベルギー戦の後半の変化については、ロシア大会で日本代表の指揮を執った西野朗氏(現・タイ代表監督)も、このカンファレンスの別のセッションで触れている。

2-0とリードした直後、キャプテンの長谷部誠選手(フランクフルト)が「残り30分の戦い方をはっきりしてくれと訊いてきた。長谷部は冷静だった」と西野氏は振り返り、「自分は『このままでいい』と3回言って送り出した。

でも、リスクを負ってでも3点目を獲りに行くのか、多少抑えてカウンターを狙うのか。あそこは、しっかり方向性を示す戦い方をさせなければいけなかった」と話した。

ロシア大会直前の4月に前任のヴァイッド・ハリルホジッチ監督解任を受けて指揮官に就いた西野氏は、ワールドカップで日本が初めてベスト8にあと一歩と迫る戦いを見せたのだが、当時、ベルギーが2-0のリードを追ってパワープレーに転じる可能性は「全く考えていなかった」と言う。

「ベルギーと言えば高速カウンターだが、一瞬にして戦術を変えてきた。ワールドカップは全く違うのだと感じた」と、大舞台での1つの判断の重さについて言及した。

今後のチーム強化については、「紙一重というところと、まだまだというところを謙虚に感じた上でやっていかないとならない」と語り、結束して違う力を作るチームづくり、レベルの高い中で戦う経験が不可欠だと説いた。

今回のカンファレンスでは、日本サッカー協会が設立100周年を迎えることから、日本代表を中心にその歩みを振り返り、1998年と2010年のワールドカップで日本代表を率いた岡田武史氏をはじめ、かつて名古屋の監督を務めた前アーセナル監督のアーセン・ベンゲル氏と、浦和を率いたホルガ―・オジェック氏らもオンラインで欧州から出席。

日本人選手の特性、近代サッカーの変化や求められる資質などについての見解も披露された。


取材・文:木ノ原句望