【桜花賞】純白のアイドルが魅せた1分31秒1のショータイム 〜なんてったって、アイドルホース〜

その他

2021.4.11

aflo_157924260.jpg
2021桜花賞 ソダシが優勝 白毛馬初のクラシック制覇 写真:日刊スポーツ/アフロ


桜花賞のゴール直後、不意にこんなことを思った。

「やっぱり、ソダシはアイドルなんだな」と。

昨年の阪神JFをハナ差で制し、世界初となる白毛馬によるGI制覇を果たしたソダシ。サトノレイナスをハナ差振り切るというドラマチックな内容も相まって競馬ファンの盛り上がりはピークを迎えたが、桜花賞前の盛り上がりはそれをはるかに上回った。

実際、レースの2日前にソダシのぬいぐるみが販売されると、純白の馬体を模した真っ白なぬいぐるみは多くの競馬ファンの心をつかみ、販売開始からたった6分で売り切れ。

2歳GIを制した馬のぬいぐるみが作られること自体、異例中の異例だが、それでも即完売するのだからソダシの人気はアイドル並みと言っても過言ではないだろう。

ただ物珍しいだけなら、ここまで人気になることはなかったが、ソダシはその人気以上に強い馬でもあった。スタートと同時に前に出て流れに乗ると、直線早めに先頭に立って後続の追撃を振り切るというソツのないレースで2歳時は阪神JFを含めて4戦4勝。

誰よりも目立つ馬体を持つ彼女に直線で釘付けとなるファンも多かったことだろう。常に日の光を浴び、観客の注目を集めてきた彼女はまさに競馬界における唯一無二のアイドルだった。

 そんなアイドルの年明け緒戦となった今年の桜花賞。彼女はパドックから魅せてくれた。久々のレースとなっても馬体重の増減はなく、堂々とした立ち振る舞いでファンの前に姿を現すと、春の暖かな陽射しに純白の馬体を輝かせて周回。まるで絵画のような姿をソダシはファンの前に披露した。

 だが、今年の桜花賞は例年に比べ時計の出やすい馬場というコンディション。これまで力でねじ伏せる形で振り切っていたソダシには決して得意とは言えない舞台となっていた。

切れ味が問われる展開ならば先に抜け出すソダシよりも、阪神JFでソダシを最後まで追い詰めたサトノレイナスに分が出てくるはず。そもそも世界初となる白毛のGI馬が、このまま無敗でクラシックを勝つなんてさすがに出来すぎている――不安からか、それとも真っ白なものをついつい汚したくなったのか、ソダシは締め切り直前、2番人気に落ちた。

 だが、ソダシは動じなかった。もしや逃げるのではという勢いのままゲートを飛び出して3番手に付けて折り合うと、前半45秒2-後半45秒9という平均ペースの流れに追走。そして最後の直線に入るといつもよりもワンテンポ早めに先頭に立つという大立ち回り。その姿はまるで「さあ、かかってこい!」と言わんばかりに。

aflo_157924238.jpg
2021桜花賞 ソダシが優勝 白毛馬初のクラシック制覇 写真:日刊スポーツ/アフロ


 スタートから最後の直線まで常に先団に付け、誰よりも目立つレースをしてきたソダシ。通常ならマークされることを考え、多少なりとも警戒するものだが......そこは生まれながらのアイドル、その純白の馬体で幼少期から多くの人々の注目を集めてきた馬だ。

レースで目立つのくらい慣れたものだったのだろう。競馬場、テレビ画面で「頑張れソダシ!」とエールを送るファンの声援を受けてソダシは桜花賞というショーで輝きを放った。

結果、ソダシは直線では内から懸命に伸びるファインルージュ、必死に食らいつくアカイトリノムスメらを相手にせず、最後外から迫ってきたサトノレイナスにクビ差をつけてゴール。

5戦無敗、敗北の汚れを知らない純白の桜の女王が誕生した。その走りを称えるかのように電光掲示板には「1分31秒1・レコード」と真っ赤な文字で記されていた。

ソダシの鞍上を務めた吉田隼人が「最高に気持ちいい」と口にしたように、今日のソダシの走りは胸のすくものだったと言える。真っ白な馬体に桜色の優勝レイが掛けられた姿はあまりに美しいものだった。

誰よりも美しく、誰よりも目立ち、そして誰よりも速く走って強さをアピールする......場所を問わず、様々なアイドルが乱立する芸能界と比べても、ソダシ以上に完璧なアイドルなんて、そうそういないだろう。

「先は無限大にある」という吉田隼人のコメント通り、オークスではどんな走りを見せてくれるのか......樫の舞台公演が早くも楽しみになってきた。

 一方、阪神JFに続いてまたも同タイムでの2着に終わったサトノレイナス。阪神JFの敗戦を考慮して末脚に賭けたが、またもクビ差届かず。しかし上がり3ハロン32秒9はメンバー最速で上がり勝負になればと逆転を期したファンの願いに応える走りは見せた。続くオークスで打倒ソダシ、3度目の正直は叶うだろうか。

 そしてもう1頭、気になったのが3番人気馬メイケイエール。パドックでこそ落ち着いていたが、レースではやはりあの気性を抑えられず。3コーナーを過ぎた辺りから強引に先頭に立ったときはソダシ以上に注目を集めたが......直線ではズルズルと後退してシンガリ負けを喫してしまった。

 思えばメイケイエールもまた、ソダシと同じ白毛馬シラユキヒメのファミリー出身。3角過ぎからの暴走は「ソダシよりも目立ちたい!」という彼女なりのメッセージだったのかも......というのは少々考えすぎだろうか。

■文/秋山玲路