【皐月賞みどころ】人馬の絆か師弟の絆か... 皐月賞にまつわる人間ドラマ

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2021.4.18

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写真:日刊現代/アフロ

 名馬との出会いは、騎手を変える――皐月賞の歴史を紐解けば、名馬の鞍上には未来のトップ騎手がいた。

 例えば岡部幸雄。デビュー当初から活躍して八大競走もすでに4勝していたが、彼が真のトップジョッキーになる過程には常に皇帝・シンボリルドルフがいた。

そのルドルフと初めて臨んだG1レースこそ、1984年の皐月賞だった。かつて自身が鞍上を務めたライバル、ビゼンニシキとのデッドヒートを制した若き日の岡部とルドルフはその後G1タイトルを積み重ねていき、ルドルフ引退後の岡部は全国リーディングに2度輝き、通算2943勝を記録する日本を代表する騎手となった。

 皐月賞で騎手人生が変わった騎手は岡部だけではない。以前までは穴男の印象が強かった池添謙一はオルフェーヴルとともに皐月賞を制すると、三冠制覇を達成。勝負強い騎手としてその地位を確立していった。

そして2017年の皐月賞でアルアインに騎乗して人馬ともにGI初制覇を成し遂げた松山弘平はその3年後、デアリングタクトで牝馬三冠ジョッキーとなり、トップ騎手への道をスターダムに駆け上がっている最中である。

 春は出会いの季節というが、皐月賞にもそんな趣がある。そして今年の皐月賞にもまた、そうした人馬がいる。エフフォーリアと横山武史だ。

 昨夏に札幌競馬場でデビューして以来、ここまで3戦全勝。

スタートからスッと動けるレースセンスの良さ、3戦すべてで上がり3ハロンのタイムがメンバー2位以内という末脚を見せるなど、いかにも乗りやすく優等生なレース運びをする馬だが、この馬がクラシック候補として高らかに名乗りを上げたのは前走の共同通信杯でのことだった。

 前半3ハロンの通過ラップが37秒4、前半1000mのタイムが61秒9というスローな流れになり、直線はヨーイドンの切れ味勝負に。先行勢が切れ味勝負で屈する中、4角3番手にいたこの馬だけが上がり3ハロン33秒4の脚を使って快勝。

後にスプリングSを制するヴィクティファルス、毎日杯を勝ったシャフリヤールを寄せ付けなかった。世代最高クラスの切れ味を見せた一戦で一気に皐月賞の本命候補となった。

 そんなエフフォーリアの背中にはずっと横山武史がいた。関東きっての名手・横山典弘の三男坊としてデビューすると、順調に勝ち星を積み重ねていき、4年目となった昨年はウインマリリンで重賞初制覇を飾るなど94勝を挙げ、史上最年少での関東リーディングジョッキーの座に就き、偉大なる父の勝ち星を初めて超えた。

 思えば、若き日の父・典弘がメジロライアンとともにクラシックへ参戦したのもデビュー5年目の年。ライアンとともに皐月賞に挑んだ父は3着だったが、果たして息子はここでも父を超えることができるのか――

未来のトップジョッキーにとって、今年の皐月賞は試金石の一戦となることは間違いないだろう。

 無敗でクラシック制覇へ挑むエフフォーリアの隣には、2歳王者ダノンザキッドがいる。彼はこのレースで「復権」を賭けている。

 デビュー戦→東京スポーツ杯2歳S→ホープフルSという無傷の3連勝は昨年のこのレースの覇者、コントレイルと全く同じローテーション。

しかも過去2年の皐月賞は前年のホープフルS勝ち馬が連勝と、3歳年明け時点ではこの馬が皐月賞制覇に最も近い存在と目され、コントレイルに続く、2年連続となる無敗の三冠馬誕生の期待までかけられた。

 無敗の2歳王者が躓いたのは3歳緒戦として選んだ弥生賞ディープインパクト記念。皐月賞前にもう一度、中山の芝2000mを経験して本番に臨むという目算だったが、先行するタイトルホルダーを最後まで捕らえることができず、馬券圏内の3着に食い込むのがやっとという完敗ぶり。

本番を見据えて余裕を残した調整ではなく、しっかりと馬体を仕上げた状態でこの結果というのは今年のクラシック戦線が混戦模様になることを意味する。実際、今年の3歳重賞(牝馬限定戦を除く)での1番人気馬はわずか1勝しか挙げられなかった。

 無敗だった2歳王者が初めて敗れた3歳の春。陣営のショックも計り知れないが、それでも鞍上を務める川田将雅、管理する安田隆行ともに前を向いた。

若くして安田隆行調教師に才能を認められた川田将雅はメキメキと頭角を現し、今や押しも押されもせぬトップ騎手に成長。師弟の強い絆はダノンザキッドをクラシックホースへと押し上げることはできるのだろうか。

 競走馬としてまだまだ未完成な3歳の春に行われる皐月賞。

それだけにデビューから一戦ごとに若駒にレースを教え、人馬ともに歩んできた馬が好成績を挙げるレースだが、そうした伝統を破ろうとする馬もいる。すみれS勝ち馬のディープモンスターがその1頭だ。

 エフフォーリア、ダノンザキッドと未対戦なのはおろか、今回の出走馬で対戦経験があるのはアドマイヤハダルだけというまさに未知なる存在。

それでも中団から伸びてくる脚は素晴らしく、すみれSではレース直前に蹄鉄を打ち換え、スタート直後にはヨレるというチグハグなレースとなったが、それでも直線では豪快に突き抜けて完勝。

そのスケールの大きさには鞍上の武豊も惚れ込んでいたが、負傷のため今回は代打・戸崎圭太でこの大舞台に臨む。新パートナーとともに父ディープインパクト顔負けの末脚は果たして炸裂するのだろうか。

 父を超え、名実ともにトップを目指す若武者、師匠へクラシックのタイトルを届けたい一流騎手、そして歴史に反旗を翻すピンチヒッター......今年の皐月賞は馬だけでなく、人間ドラマからも目が離せない。


■文/秋山玲路


第81回皐月賞(GI)前日最終オッズ

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2021年4月18日(日)3回中山8日発走時刻:15時40分
第81回皐月賞(GI)

枠-馬番 馬名(性齢 騎手)前日単勝オッズ
1-1 アドマイヤハダル(牡3 C.ルメール)9.7
1-2 ルーパステソーロ(牡3 木幡巧也)118.2
2-3 ステラヴェローチェ(牡3 吉田隼人)15.4
2-4 イルーシヴパンサー(牡3 大野拓弥)100.0
3-5 ヴィクティファルス(牡3 池添謙一)10.9
3-6 ヨーホーレイク(牡3 岩田望来)22.9
4-7 エフフォーリア(牡3 横山武史)3.4
4-8 ダノンザキッド(牡3 川田将雅)3.3
5-9 ラーゴム(牡3 北村友一)14.2
5-10 シュヴァリエローズ(牡3 三浦皇成)77.1
6-11 ディープモンスター(牡3 戸崎圭太)17.7
6-12 ワールドリバイバル(牡3 菱田裕二)113.3
7-13 タイトルホルダー(牡3 田辺裕信)20.0
7-14 アサマノイタズラ(牡3 嶋田純次)32.5
8-15 グラティアス(牡3 M.デムーロ)15.1
8-16 レッドベルオーブ(牡3 福永祐一)22.1

※出馬表・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。