【日本ダービー みどころ】生涯一度だけのドラマ 主役になる馬は

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2021.5.30

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日本ダービー(東京優駿)写真:東京スポーツ/アフロ

 最も運が強い馬が勝つ――日本ダービーにおける古くからある格言である。生涯でたった1度しか走れない大舞台、7398頭もの3歳馬の中からレースに出られるのはたったの17頭。

出られるだけでも強運の持ち主だが、さらに頂点に立つのはたった1頭だけ。確かに実力以上に運が必要なレースなのかもしれない。

【日本ダービー】エフフォーリアが1.8倍で断然1番人気、サトノレイナス5.5倍、ワンダフルタウン10.7倍 前日最終オッズ

 だが、運だけでは日本ダービーは勝てない。それは87回の歴史が証明している。

 日本ダービーの歴史は日本競馬の歴史ともイコールとも言える。史上初の三冠馬となったセントライトに快速二冠馬コダマとメイズイ、その翌年には五冠馬シンザンが制した。70年代に入ると、有無を言わさぬ逃げで押し切ったカブラヤオーに類まれな勝負根性で父ハイセイコーの無念を晴らしたカツラノハイセイコが現れた。

80年代にはミスターシービーにシンボリルドルフと2年連続で三冠馬が生まれ、90年代に入ればシンボリルドルフの息子、トウカイテイオーが親子2代のダービー制覇を果たし、シャドーロールの怪物・ナリタブライアンが大外から差し切った。

2000年代には英雄ディープインパクトが飛ぶように走って勝利し、牝馬ウオッカが64年ぶりに牡馬を蹴散らした。

そして10年前にはオルフェーヴルが雨の中を突き抜け、昨年はコントレイルがディープインパクトとの親子制覇を成し遂げた。日本ダービーの歴史はまさに日本競馬の歴史そのものだ。

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東京競馬場 写真:アフロ


 そうした意味では今年の日本ダービーの主役を張るであろう、エフフォーリアはどうだろうか。

 彼の背中にはデビューからずっと、横山武史がいた。名手・横山典弘を父に持つ彼も当時はGIでの実績はなかった若手のひとり。

エフフォーリアとの初コンビを組んだデビュー戦に2戦目の百日草特別と連勝したが、当時は注目されることはなかった。

 だが、エフフォーリアとの出会いが横山武史を変えた。この年に重賞初制覇を飾るなどデビュー4年目にしてブレイクの兆しを見せていたが、エフフォーリアとのコンビを組んで以降も勝ち星を重ねていき、関東リーディング騎手争いに食い込むように。

自身よりも10歳以上も年上の吉田隼人との熾烈なリーディング争いは「眠れない日々が毎週のように続いた」と振り返るほど精神的にも追い込まれていたが、横山武史はこのプレッシャーに打ち勝って年間94勝をマークして関東リーディング騎手の座についた。

22歳でのリーディング獲得はそれまでの記録を上回る史上最年少での達成というトピックもついてきた。

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2021 皐月賞 エフフォーリアが優勝 写真:スポニチ/アフロ

「勝ったことで自分の自信へとつながり、精神的にも強くなった」というリーディング争いを経験して迎えた2021年、今度は横山武史がエフフォーリアをクラシックへと導いた。

4番人気で迎えた共同通信杯では早めに抜け出して重賞初制覇を飾ると、皐月賞でも4番手から押し切る形で勝利。人馬ともに掴んだ初のGIはその絆をより深くするものだった。

 迎える日本ダービーでは絶好枠とされる1枠1番を引き当てて、本番へ臨む。運も絆の強さも申し分のないこのコンビが世代の頂点へと駆け上がるのだろうか。


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横山武史騎手 写真:日刊スポーツ/アフロ

 若武者が駆け上がっていく一方、関東の名伯楽・国枝栄調教師は牝馬サトノレイナスで悲願のダービー制覇を目指す。

 アパパネ、アーモンドアイという2頭の牝馬三冠馬を育て上げた関東屈指の名トレーナーだが、牡馬クラシックは未勝利。中でもダービーはこれまで7度挑戦して3着が最高成績。サトノレイナスの全兄であるサトノフラッグで挑んだ昨年も11着に終わっている。

「兄以上に素軽い動きを見せる」と期待していた少女はその期待通りにデビュー戦、サフラン賞と連勝。迎えた阪神JFでも内から伸びてソダシにあと一歩というところまで迫る2着に。

年明け緒戦となった桜花賞は打倒ソダシを胸に挑んだが、4角16番手から上がり3ハロン32秒9という驚異的な末脚を繰り出したが、それでもソダシに届かず2着。

 本来ならば、牝馬クラシック2冠目のオークスに向かい、リベンジを期すところだが、国枝栄が選んだのは日本ダービー。自身、そしてオーナーの悲願を果たしたいという想いだけでなく、この馬の切れ味をもってすれば勝てると強く信じているからこそのエントリー。

牝馬が日本ダービーに挑むのは7年ぶり、勝ったのは14年前のウオッカが最後というようにその壁は果てしなく大きいが、サトノレイナスならばその壁すら突き崩すのではと思わせる。

「ダービーに勝ちたい」とはホースマンならば誰もが思うこと。それはすでに5勝を挙げている武豊もまた同じこと。

今年は右足骨折で皐月賞の騎乗を断念するなど、決して順風満帆というわけではないが、「ダービーに乗りたい、勝ちたい」という思いで過酷なリハビリにも耐え、ダービーの舞台に戻ってきた。

今年のパートナーとなるディープモンスターは自身が騎乗したディープインパクトの息子。しかも枠番はディープインパクトと同じ3枠5番。何か期するものがあるのかもしれない。

 88回目の日本ダービー、新しいドラマの主役となるのは果たしてどの馬だろうか。


■文/福嶌弘

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第88回東京優駿(GI)枠順
5月30日(日)2回東京12日 発走時刻:15時40分

枠-馬番 馬名(性齢 騎手)
1-1 エフフォーリア(牡3 横山武史)
1-2 ヴィクティファルス(牡3 池添謙一)
2-3 タイムトゥヘヴン(牡3、石橋脩)
2-4 レッドジェネシス(牡3、横山典弘)
3-5 ディープモンスター(牡3、武豊)
3-6 バジオウ(牡3、大野拓弥)
4-7 グラティアス(牡3、松山弘平)
4-8 ヨーホーレイク(牡3、川田将雅)
5-9 ラーゴム(牡3、浜中俊)
5-10 シャフリヤール(牡3、福永祐一)
6-11 ステラヴェローチェ(牡3、吉田隼人)
6-12 ワンダフルタウン(牡3、和田竜二)
7-13 グレートマジシャン(牡3、戸崎圭太)
7-14 タイトルホルダー(牡3、田辺裕信)
8-15 アドマイヤハダル(牡3、M.デムーロ)
8-16 サトノレイナス(牝3、C.ルメール)
8-17 バスラットレオン(牡3、藤岡佑介)

※出馬表・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。