【菊花賞 みどころ】乗り越えるべき”壁” 苦難を乗り越えてこそ、新たなスターは輝きを放つ

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2021.10.23

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2021神戸新聞杯 ステラヴェローチェが勝利 写真:東京スポーツ/アフロ

競走馬とは、戦いの連続だ。文字通りレースでは常にライバルたちと争い、頂点を目指していく。

その都度自分よりも強い馬や新しいコース、さらに未知の馬場や距離への体験も行っていく。そう考えると競走馬は闘いながら何かしらの壁を超えていく存在なのだと思う。

そして、菊花賞と言えば競走馬にとっての"壁"の最高峰かもしれない。

3歳馬たちどころか、ほとんどの馬たちにとってほぼ未知の距離となる3000mを3歳にして経験するという日本でも数少ないマラソンレース。

菊花賞以上の距離の重賞と言えば、平地では4つだけなので、3000m以上のレースを走ったというのは現在の競馬界にとって本当に貴重な経験となる。

そう考えると、歴代の菊花賞馬を振り返ると何かしらの壁を乗り越えた馬たちが多いように思う。しかもここ数年は菊花賞制覇後にブレイクした馬も多い。

例えば、6年前の菊花賞馬であるキタサンブラック。なかなかGIタイトルに届かなかったこの馬もこのレースを制して以降はタイトルを積み重ね、いつしか誰からも愛される存在になっていった。

その他にも直近5年の菊花賞馬のうち、後にGIを勝った馬は3頭もいる。数あるクラシックレースの中でもその後の出世度合いを見れば菊花賞馬を勝った馬がダントツで優れているように思う。

言い換えれば、菊花賞で壁を乗り越えた馬こそ、後の競馬界を支える存在になる。ましてや今年は皐月賞馬もダービー馬もいない菊花賞なのだから。

今年の菊花賞の出走馬の中で、最も「壁を超えたい」と考えている馬はステラヴェローチェだろう。

デビュー前から「凱旋門賞馬バゴの最高傑作」と称された素質馬で、デビューからトントン拍子で2連勝。2歳王者決定戦の朝日杯FSでも2着に入った。

翌年のクラシック戦線での活躍を期待されたものの、年明け緒戦の共同通信杯で1頭だけ重い斤量に泣かされて5着に完敗。これで評価を下げ、皐月賞では6番人気、ダービーでは9番人気という低評価に終わったが、それでも意地を見せてともに3着に健闘した。

皐月賞、ダービーともに3着に入って迎えた秋緒戦は菊花賞への重要プレップとなる神戸新聞杯。

あいにくの雨の中で行われたレースとなったが、中団から見事に伸びて、ダービー馬シャフリヤールを相手に勝利。顔をドロドロに汚しながらも「今度は俺が勝つ!」と言わんばかりの走りは菊花賞制覇に最も近いように思えてくる。

皐月賞、ダービーで彼に先着したエフフォーリアもシャフリヤールも今回は出走していないだけにチャンスは大きいと考えるのが自然だろう。

二冠馬を除いて、春のクラシックで2戦とも3着に入りながら、菊花賞に挑んだ馬と言えば2013年のエピファネイアや2016年のサトノダイヤモンドなどが念願のGI制覇を叶えているが、果たしてステラヴェローチェはその流れに続くことができるだろうか。

春のクラシック戦線で活躍した馬がリベンジすることもあれば、夏に急成長を遂げた馬がタイトルをかっさらうこともある。今年の場合、レッドジェネシスが後者に当たるだろう。

父ディープインパクト×母父ストームキャットという活躍馬が多数あふれる血統を持つ彼は当然ながらクラシック制覇を期待された素質馬だったが、初勝利はデビューから4戦目とその足取りは極めてゆったりとしたもの。

皐月賞には間に合わず、ダービーを目指して挑んだ京都新聞杯で上がり最速の末脚を叩き出して見事に重賞初勝利。その勢いのままダービーに挑んだが、後方から脚を伸ばすことができずに11着に完敗して休養に。

秋はステラヴェローチェと同じく神戸新聞杯から挑み、タイム差なしの2着に好走した。

ステラヴェローチェとはダービー当時0.9秒もの差があったにもかかわらず、ひと夏を越えて追いつくなど、まさに急成長。血統的にも距離延長は歓迎できるクチなだけに本番での逆転は十分にあり得る話。

その名血通り、聞くの舞台で大輪を花咲かせることができるか。

今年の菊花賞は京都競馬場が馬場改修のため、1979年以来42年ぶりとなる阪神競馬場での開催に。いつもと違う菊花賞ならば例年ならあり得ないと言われるようなセオリーに当てはまらない馬を狙ってみる手もある。

ならば、牝馬ディヴァインラヴの一発があってもいい。

初勝利を挙げた直後に挑んだエルフィンSで8着に敗れると牝馬クラシックには見向きもせず、春クラシックが終わった6月以降に2連勝。しかもいずれも2000mを超えた中距離戦で先行して流れに乗って押し切っている。

スタミナ面ではどの馬よりも優れていることが伺える上、鞍上は昨年コントレイルで菊花賞を制した福永祐一。牝馬クラシックに見向きもしなかった彼女が、牡馬を蹴散らすシーンだって十分考えられる。

ちなみに牝馬が菊花賞を勝つというのは1947年のブラウニー以来、74年ぶりになるという。核となる王者がいない年だからこそ、彼女が輝いても何らおかしくない。

3000mという距離の壁は3歳馬たちにとって、確かに高いもの。しかし、その壁を乗り越えた馬たちには輝かしい未来が必ず待っている。今年の菊花賞が新しいスター誕生の舞台になることを楽しみに待ちたい。


■文/福嶌弘