フィギュアスケーター・宇野昌磨 羽生結弦の背中を追って苦しんだ4年間と見せた進化

そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない
ある意味、衝撃だった。寝癖をつけたまま平然と町中へ。
それがフィギュアスケーター宇野昌磨との出会いだった。
どうやら無頓着で自由奔放な性格らしい。その証拠にYouTubeでは自宅の様子を惜しげもなくさらし、女性ファンの視線を釘付けにしている。
24歳、独身。愛犬エマちゃんが大好きで野菜は嫌い。
没頭するゲームの世界
スケートと同じくらい本気、と公言しているものがある。それはゲーム。
この日は人気ゲーム、スマッシュブラザースの配信企画に参加。朝10時から夜8時までの10時間連続プレーに挑戦した。
好きな世界には没頭するタイプで、プロゲーマーが舌を巻く腕前だという。
フィギュアもそう。大好きだから追求して4年前には平昌オリンピックの舞台に立った。そして本番に強いと言われるその滑りを世界に見せつけ、銀メダルを獲得した。
並外れた努力家
根性主義とは違うが、宇野は並外れた努力家でもある。コーチが「練習をやめさせる必要がある」と嘆くほどだ。
苦労しらずの天才肌では決してない。足踏みする悔しさもつまずく痛みも身を持って経験してきた。
トリプルアクセルは習得までに6年を要した。
努力が実ったのは17歳のこと。世界ジュニアで初優勝する。
翌年からはシニアで戦い4年間シリーズ12試合、全てで表彰台にのぼった。
羽生結弦の存在
宇野の競技生活でいちばんの冒険は4年前に始まった。
きっかけは尊敬する「ゆづくん」こと羽生結弦だ。羽生のあとを継ぐ跡を継ぐ存在になりたい。芽生えた願いが冒険の始まりだった。
しかし力みと気負いが宇野の歯車を狂わせる。グランプリシリーズで自己最低の8位に沈み、シニアで初めて表彰台を逃した。
落ちたどん底。新時代のアスリートはそこで何を思ったか?
「ゆづくんを目指すのはもうやめよう。」それが宇野の出した結論だった。
練習拠点をスイスに移し、ランビエールコーチと新たに組んで再出発する。かつてのような伸び伸びとしたスケートを取り戻す。たとえ転んでも、経験値になればそれでいい。だってレベル上げはそういうものだから。
北京オリンピックへの道
迎えた今シーズン、始まった北京オリンピックへの挑戦。
4回転ジャンプを5本取り入れた自己最高難度のプログラムでグランプリ・シリーズを2位と1位。ランビエールコーチの指導に応えた。
人は肩の力が抜けた時、いちばん強い。たぶん今の宇野はその状態だ。
その証拠に先日の全日本選手権。宇野の演技は凄かった。北京オリンピック代表を決める大舞台で宇野昌磨のショートプログラムは伸びやかで余裕があった。これが本番に強い、宇野の真骨頂。
ガッツポーズは満足の証。羽生に次いで2位に入った。
苦しんだ4年間。この道が北京に通じていることを証明してみせる。
全日本選手権での宇野昌磨 写真:西村尚己/アフロスポーツ