明治大学、箱根駅伝に見つけた友情物語 「一緒に箱根を走りたい」絶対的エースと異色の苦労人選手の絆
そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない。
去年10月の箱根駅伝予選会。
10位以内に入れば本戦出場が決まるレースで、見事な走りを見せたのがエース鈴木を擁する明治大学だった。
前回の箱根は1月の本戦に出場して11位。
予選会を免除されるシード権をあと一歩で逃した明治大学はこの予選会を1位通過し、本戦への期待を高める。
異色の選手・橋本大輝
悲願のシード権獲得へ、本戦への鍵を握る異色の選手がいた。
それが4年生の橋本大輝だ。
部員の大半がスポーツ推薦という中、橋本は数少ない一般生として入部してきた。それゆえ練習が終わると仲間は寮に帰る中、橋本は一人暮らしのアパートへ。
これが一般生の現実。橋本はスポーツ推薦ではないため、他の部員が暮らす寮に入れなかったのだ。
自他共に認める苦労人で、3年生までは芽が出なかったがこの4年間で5千メートルのタイムを1分近く更新。
予選会では出場475人中、25位に入ったことで4年生にして初めて箱根駅伝本戦への出場が叶った。
絶対的エースで主将・鈴木聖人
橋本がここまで成長できた要因のひとつに友との出会いがある。
部の仲間はみな走りのエリートばかり。だがそこに道を開く出会いはあった。相手は主将の鈴木聖人。
鈴木は全国高校駅伝でも活躍し、大学では1年生の時から箱根駅伝本戦に出続けている絶対的エース。
去年の箱根駅伝は11位で、わずか26秒差でシード権に届かなかった。今回こそはそれが部の悲願だ。
だがそこには責任感が生むエースの孤独もあった。タイムが出ず鈴木が「腐っていた」と語る時期、相談に乗っていたのが橋本だった。
絶対的エースと一般生。立場の違う相手だからこそ話し込めた。
二人に生まれた友情。
箱根駅伝には走る選手に水を渡す給水役の部員がいるが、鈴木が2年のときそれを務めたのが橋本だった。
「来年は一緒に箱根を走りたい」
レース直後、2人の想いは一つだった。
どうしても果たしたい約束
1月2日。運命のレースは幕を開ける。
シード権獲得へ、10位以内を狙う明治。
しかし、1区は13位で襷は花の2区へ。そこを任されたのが主将の鈴木だった。
「遅れを取り戻さなければ。」
責任感の強い鈴木にはその思いが力みとなり足が出ない。順位を二つ下げ、15位で走り終えた。その後も明治は巻き返せず17位。10位まで3分22秒差で往路を終えた。
翌朝、鈴木は寮から橋本にLINEを送った。
「俺みたいに後悔しないようチームのことは忘れて区間賞だけ狙って頑張れ!!」
青山学院首位独走の陰でシード権を巡る激戦は続く。明治は7区で14位に浮上。襷は10区の橋本へ。
橋本が襷を受け取る少し前、鈴木は寮を出て、ある場所へと向かった。着いたのは橋本が走る10区の給水地点。どうしても果たしたい約束があった。
そしてやってきた橋本。その横には水を持った鈴木が。
これが二人の約束。2年前とは逆に今度は鈴木が橋本に。
シード権を持てる10位まで、1分42秒届かなかったが快心の走りで思いを果たした。
翌日、嬉しい報告があった。主将の鈴木はかねてから実業団に進むことが決まっていたが、橋本もまた別の実業団から声が掛かり、入社が決まったのだ。
箱根駅伝に見つけた友情物語。
人は出会いで強くなれると彼らは教えてくれた。