FW・三浦知良 JFL開幕戦先発”デビュー”で新たな船出

サッカー

2022.3.14

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三浦知良選手 Photo by Masashi Hara/Getty Images

JFLの鈴鹿ポイントゲッターズへ移籍した三浦知良選手が3月13日にホームで行われた今季リーグ開幕戦のラインメール青森戦に先発で出場し、ゴールはならなかったが後半半ばまでプレーして、チームは2-0で勝利。

55歳になってもピッチに立ち続ける元日本代表FWが多くの人を惹きつけた。

出場機会を求めて鈴鹿へ移籍した三浦選手。J2へ降格した横浜FCからJ1でもJ2でもなく、J3の下位で実質4部にあたるJFLでの新しいシーズンが始まった。

ホームの四日市中央陸上競技場で行われた今季初戦で、三浦選手は2020年J1リーグのアウェイでの川崎フロンターレ戦以来となる先発で登場。55歳での出場はJFL最年長記録。2009年にアマラオ選手がFC刈谷で記録した43歳9日を大幅更新となった。

チーム全体に開幕戦の硬さや相手の勢いもある中で、トップに入った三浦選手はなかなかボールに触れず、時には前線から中盤まで下がってボールを受け、パスを出すなど柔軟に対応。前半42分には右サイドからの鋭いクロスにゴール前に飛び込んで触ればゴールという場面を作って観客を沸かせた。

後半10分過ぎには、攻め上がったDF菊島卓選手がゴール前に詰めた三浦選手へ入れたパスを出すが、相手DFにブロックされてシュートに持ち込めない。途中からは、負傷交代したMF橋本晃司選手から引き継いだキャプテンマークを付けてプレーし、後半20分にピッチを後にした。

チームはその後、後半26分にFW三宅海斗選手が右クロスに頭で合わせて先制し、後半アディショナルタイム1分に菊島選手がこぼれ球に反応してミドルレンジから左足を振って追加点を決め、チームは2-0で勝利して今季白星で発進した。

ゴールはならなかったが、約65分のプレー時間は横浜時代に2020年のルヴァンカップ鳥栖戦で63分間出場して以来で、リーグ戦では2017年J2開幕戦(松本山雅戦、65分)まで遡る。昨季の出場はリーグ戦では3月10日のJ1浦和戦での交代出場1分、ルヴァンカップでも3試合交代出場で合計44分に留まった。

三浦選手は、「試合に出るのは選手にとって一番大事なこと。去年のJリーグでは出場1分で、今日はその60倍」と笑顔を見せた。

先発出場でピッチに立つまでの空間には独特のものがあり、「選手冥利に尽きる」と言い、「先発の11人で写真を撮ってもらい、そこで自分が大声でカウントダウンすることは日本代表の頃からずっとやっていたルーティーン。そういうことも自分のモチベーションにつながるし、試合に出るほど自分の体が反応する。忘れかけていたものを蘇えらせてくれる」と語った。

1982年に15歳で単身ブラジルに渡り、厳しい環境の中で揉まれながら4年後に名門サントスFCとプロ契約を勝ち獲ると、その後はキンゼ・デ・ジャウーやコリチーバなどを渡り歩いた。1990年からJリーグ前身の日本サッカーリーグ(JSL)に活躍の場を移し、1993年のJリーグ発足後は初代リーグMVPに輝くなど、日本最高峰のリーグの顔として存在感を発揮。89試合出場55得点という日本代表での活躍とともに多くの実績を積み上げ、長年にわたって日本サッカーをけん引してきた。

この日の自身のパフォーマンスについて三浦選手は、「シュートもなく、いい場面は作れなかった。昨年は公式戦に絡めずに試合コンディションという点で慣れず、60分でガス欠になる。試合の体力がもっと続けば、いい場面がもっとたくさん出せる思っている」と振り返った。

カズ効果

三浦選手の存在は、ピッチ内外で変化をもたらしている。

この日の試合には4,620人の観客が駆け付けた。鈴鹿の昨季開幕戦の観客数は569人。クラブの過去最多観客動員(1308人)を塗り替え、リーグの昨季最多観客動員の2,451人(第34節、いわきFC対FC大阪戦)をあっさりと超えた。

クラブは最寄り駅から試合会場まで徒歩約10分の距離の要所要所には道案内の係員や、場内整理などに約200人のスタッフを用意。集まった報道陣は42社76人を数え、三浦選手の得点を期待して、ゴール裏にはTV各局を含めたカメラの砲列がずらりと並んだ。

ゴール裏の芝生席までほぼ埋まったスタンドには三浦選手の「11番」のレプリカユニフォームを着たファンの姿があちこちに見られ、キックオフ前の両チームの選手入場では三浦選手の姿を動画や写真に収めようと、多くの観客が一斉にスマホをピッチへ向けた。

試合後には、交代でベンチに下がっていた三浦選手がチームメイトを笑顔で出迎え、三浦監督らとともにチームがスタンドのファンへの挨拶に向かうと、バックスタンドからゴール裏、メインスタンドへ、その姿を追う多くのファンがスタンド内を移動した。

プレシーズンには三浦選手の鈴鹿での練習が始まると、平日でも連日のように多くの人が練習見学に足を運び、ファンクラブの入会希望者も右肩上がり。クラブのスタッフは「練習見学者もファンクラブの入会希望も報道陣の数も、全てのことが昨季までの10倍の感覚」と驚きを隠さない。

この日対戦した青森の柴田峡監督も、「うちの選手も注目されているなかでゲームをやらせてもらえるのはものすごく張り合いがある。JFLのどの試合も盛り上がればいい」と述べた。

自身と1歳違いで選手としてピッチに立つ三浦選手について敵将は、「ただただ敬服。体がしっかり作れているし、大きなミスがない。ボールに関わる機会が少なくてもったいないなと思うが、相手にいられると存在感を含めて厄介な存在だと今日改めて感じた」と話した。

ゴールへの期待

鈴鹿の三浦泰年監督は三浦選手について、「大事な時間帯を60分間プレーしてくれた。そのために彼がどれだけ努力をして準備をしたか。彼がそういう姿勢を見せることで選手たちが成長していける」とチーム内での効果に言及。

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三浦知良選手と三浦泰年監督 Photo by Masashi Hara/Getty Images

プレーについても、「55歳という年齢のなかで、積極的に動いてゴールに向かった姿勢は見えた。時間をかけていけばゴールも見えるのでは」と評価した。

大きな注目を集める弟でもある三浦選手の起用について、鈴鹿の指揮官は「18歳でも55歳でも選手を成長させる必要がある。弟として良さを知っているのも欠点を知っているのも僕。必要な選手としてピッチに立たせて活かすことをプロの監督として信念を持ってやりたい」と話す。

三浦選手も監督という立場への思いを吐露。「監督業はいつも見ていて大変だと思う。僕を雇って使うのは監督にとってストレスだと思う、いい意味でも悪い意味でも。ほかの選手と分けて使うかどうか、使ったら勝たないとならない。僕を使うのは大きな賭けでもある」と話し、その思いもあって最後の笛のあと、チームを率いてる泰年監督とハグを交わしたと語った。

練習場も試合会場もバス利用が中心のアウェイへの移動も、これまでとは大きく異なる環境での戦いになるが、三浦選手は入団会見でも「勝つことの厳しさはJリーグでもJFLでも同じ。JFLでプロに変わっていくクラブを作っていける楽しみもある」と話していた。

開幕戦で先発出場をクリアして、次のターゲットはゴールか。今季のJFLシーズンは11月20日まで、まだ29試合ある。

「みんなが僕のゴールを期待していることは分かっている」と三浦選手。

「そこは今後自分がどう絡むか、求めていかないとならない。どの試合も勝利が最優先だが、やっていくなかでチームが成長していけば、僕にも自然とチャンスが増えると思う。自分自身も楽しみにしている」


取材・文:木ノ原句望