【天皇賞・春】タイトルホルダー圧逃V!横山和 まるでデジャヴ?なゴール後のガッツポーズ

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2022.5.2

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2022 天皇賞・春 タイトルホルダーが優勝 写真:東京スポーツ/アフロ

今年も「主役不在の大混戦」という前触れだった天皇賞(春)。

だが、終わってみれば2番人気馬と1番人気馬のワンツーで決まって馬連配当は1番人気となる520円。上位5番人気までの馬で掲示板を占めるという本命サイドの順当な決着に終わった。

だが、その中身は昨年以上に濃厚なもの。日本最長距離のGIレースにふさわしい、純然たるスタミナ勝負は見ごたえにあふれるものと言えるだろう。

 朝から降った雨の影響で決して良好とは言えない馬場コンディションで迎えた今日の阪神競馬場。出走馬がパドックに現れた時にはスカッとした青空が広がってはいたが、濡れた芝は乾ききることはなく稍重での一戦に。

 そんな中で迎えたパドック。各馬とも順調な仕上がりを見せていたが、抜群のデキを見せていたのは1番人気に支持されたディープボンドだった。

 黒光りする青鹿毛の馬体は筋骨隆々として、競走馬としての完成を予感させるだけでなく、気合いも適度に乗っている状態。スタミナ勝負ならば、このメンバーでも最上位であることを自覚しているかのようにその振る舞いすら堂々としていた。念願のGIタイトルを手に入れる体勢は整っていたように思えた。

 そんなディープボンドと真っ向から勝負することになったのが昨年の菊花賞馬タイトルホルダー。

メンバー唯一のGIホースであり、なおかつ昨年の菊花賞で2着馬に5馬身差をつけた実力馬。それだけにディープボンドに1番人気を譲るとは想像もつかなかったが......単勝の最終オッズはディープボンド2.1倍に対し、タイトルホルダーは4.9倍。

有馬記念でディープボンドに先着を許したことが響いているのか、それとも鞍上の横山和生の大舞台での経験不足を不安視されたのか、昨年の菊花賞馬としては悔しいオッズになったと言えるだろう。

 だが、この2頭はレース前から8枠に入ったことが不安視されていた。ただでさえ内側が伸びる馬場コンディションだった上に、天皇賞(春)は元来外枠の馬が不利を強いられるレースで、2000年以降は15番よりも外に入った馬は勝ったことがないというデータもある。

それだけに16番に入ったタイトルホルダー、大外18番に入ったディープボンドともに道中、どのコースを走るかが勝負を分けるとされていた。

 迎えたスタート。ゲートが開いたとともに2頭の真ん中に入っていたシルヴァーソニックが落馬するというアクシデントがあったが、どちらもスタート自体は抜群。中でもそのスタートに賭けていたのがタイトルホルダーの横山和生だった。

前走の日経賞でも逃げて結果を残した以上、今回も「しっかり出していった」とレース後に語ったように、スタート直後から手綱をしごいてタイトルホルダーを先頭に立たせ、走りやすい内へと進路を取った。

一方のディープボンドも前を行くタイトルホルダーを見ながら、1周目の3コーナーを過ぎるころには内ラチ沿いを確保。直線で差すべく脚を溜め、虎視眈々と前を行く馬たちを見るという絶好の位置取りを見せた。

 王道のレース運びを行うディープボンドを見て、筆者は前を行くタイトルホルダーはどう動いていくかが気になったが、タイトルホルダー&横山和生の様子を見るとまったく気にしていないようだった。

「タイトルホルダーと仲良く走ろう」という想いで騎乗していたという横山和生の言葉通り、人馬ともまるで自分たちの世界に入ったようなレース振りを見せていた。

1000m通過タイムは60秒5で2番手のクレッシェンドラヴに5馬身差をつけていたのに、向こう正面でペースを落とした際に1馬身差にまで詰められたが、一切慌てふためくことはなかった。

各馬が動き出した3コーナーを過ぎてもまだタイトルホルダーの手綱はブラブラと長いまま。3角過ぎから追い出し、4角を過ぎるころには鞭を入れだした和田竜二とディープボンドとは対照的だった。

 迎えた直線、各馬が迫りくる中でようやく鞭を入れたタイトルホルダーはまだまだスタミナ十分といった形で迫ってきたテーオーロイヤルをあっさり振り切ると、後続をグングンと突き放すばかり。

気が付けば、ゴール寸前に2着に上がるのがやっとだったディープボンドに7馬身という大差をつけて、タイトルホルダーは2つめのGIタイトルを手にしていた。

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横山和生騎手 2022 天皇賞・春 タイトルホルダーが優勝 写真:東京スポーツ/アフロ

 混戦模様とされたレースで不利な8枠に入りながらも、常にベストなコースを取りつつ、持ち前のスタミナをフルに生かした走りでディープボンドらをねじ伏せ、自ら上がり3ハロンで最速を記録してこのマラソンレースを制したのだから、何度やってもこの馬が勝っていたと思わせる完勝と言っていいだろう。

 名手顔負けの騎乗を見せた横山和生だが、実はこれが嬉しいGI初制覇。騎手一家である横山家にとっては祖父・富雄、父・典弘に続く親子3代による天皇賞(春)制覇という大記録が達成された。もちろん、これは日本競馬界史上初の快挙でもある。

思えば、弟・武史がこの馬で菊花賞を制した時や24年前に父・典弘がセイウンスカイで菊花賞を逃げ切った時と同じように和生もまた、左手を大きく突き上げてのゴールとなった。

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横山武史騎手 2021菊花賞 タイトルホルダーが優勝 写真:東京スポーツ/アフロ

まるでデジャヴのような派手なガッツポーズ、そして騎乗馬を想う気持ちが溢れ出るかのようなインタビューはこの親子ならではのものと言えるだろう。

 さて、昨年の菊花賞、そして今回の天皇賞(春)を制し、今や現役最高のステイヤーとなったタイトルホルダー。無尽蔵のスタミナを武器に次にどのレースを目指すのだろうか。今や希少となった純然たるステイヤーの未来が楽しみでならない。


■文/福嶌弘