女王・稲見萌寧 知らず知らずに狂っていた小さな歯車

稲見萌寧 Photo by Atsushi Tomura/Getty Images
昨シーズンは向かうところ敵なし。9勝を上げ賞金女王になった。それがなぜ今年になって状況が一変しまったのか。
消えた笑顔。
イケイケで強気の稲見萌寧はいなくなり、3ヵ月間、13戦に渡って優勝なし。そんな中でも許してくれた密着取材。このままではいけないと、もがく女王がそこにいた。
人は変われる。今、そのときをカメラは追った。
現在22歳。才能が花開いたのは去年だった。春先からの3ヵ月12戦でなんと5勝。日の丸を背負う東京オリンピック日本代表にもなった。結果は銀メダル。日本人ゴルファー初のメダルを獲得。
それを本人は「銀って言っても2位じゃん」
とは言え、時の人になったのは事実。シーズン後半も快進撃を続け、終わって見れば9勝で賞金女王に。稲見時代の到来を私たちは予感した。
しかい今年、勢いは止まり、13戦を終えても優勝ゼロ。予選落ちも味わうスランプに。
5月の終わりに稲見は意を決する。思い切ってトレーナーを変えた。知らず知らず狂っていた小さな歯車。トレーナーを替えたことで打開策が見えた。
思えばこのオフ、どれだけ環境が様変わりしたか。トップ選手の証、大手企業との所属契約を結び転戦費用の心配が消えた一方で、断れない取材が押し寄せ、練習時間の確保が困難に。
しかし、それもまたプロの一面。女王でい続けるのは女王になるよりも難しい。それが稲見の現在地。
まずは今季初優勝を。それが切なる願い。
6月に行なわれた、リシャール・ミル ヨネックスレディス(6月3日~5日)。
練習ラウンドから気持ちは行動に現れる。待ち構えるカメラを避けるように道を外れてコースへ。集中したいから近づかないでほしいというメッセージ。
コーチに対しても終始無言。勝負の鍵は見えてた。それは"パター"。
去年と比べたデータがある。武器のひとつ、正確なショットを示すパーオン率は1位から4位とさほど変わらず。
しかしパットは、平均パット数が2位から36位と急落していた。問題は新しいトレーナーと修正を試みている体のバランスが治ったかどうか。
初日から正確なショットは健在。パットも復調を感じさせる出来で、最終日はトップにたったまま勝負どころを迎える。
12番ホール、残り6ホールで得たバーディチャンス。この7メートルのパットを見事に沈め、苦しみ続けたパットに稲見は手応えを得た。
そして最終ホールを終え、今季初優勝。これは女王の大きな一歩。もっと強い女王に彼女はなれるから。