【フェブラリーS】レモンポップが快勝!爽やかな走りで魅せた、新たなダート王の誕生

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2023.2.19

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写真:東京スポーツ/アフロ

 レモンポップの走りには、不思議なくらいに清涼感があふれているように思う。

 500キロを優に超える筋肉隆々な馬体はまさに重戦車という表現がピッタリなくらいに迫力満点。この馬体を見たら誰もがダートを主戦場とする馬特有のパワフルで豪快な走りを想像するだろう。

しかし、実際のレモンポップのレースぶりはというと、スタートからスッと番手に付けて流れに乗り、直線早々と先頭に立って押し切ろうとするというソツのないもの。ダートを得意とする馬特有の豪快さはあまり見られず、どこか知的さを感じさせるほどだ。

まるでそよ風が吹いたかのような爽やかな印象さえ与えつつ、しっかりと先頭でゴールを駆け抜ける――馬名の由来になったレモンスカッシュのような清涼感のある走りこそ、レモンポップならではの個性と言えるだろう。

そんな彼が根岸Sで重賞初制覇を飾り、とうとうGI、フェブラリーSの舞台に駒を進めてきた。条件戦でコツコツと勝ち星を積み重ね、重賞に初めて挑んだのはほんの3ヵ月前のこと。

そんな新参者である彼がドライスタウトやメイショウハリオといった歴戦の実績馬たちを相手に1番人気に支持されたのだから、ファンもそんなレモンポップの走りに惹かれていたし、新しいダート王の誕生を待っていたのかもしれない。

2月にしては柔らかで暖かな日差しが差していたこの日の東京競馬場。パドックに姿を見せたレモンポップはその栗毛の馬体を輝かせつつ、舌を出しながら周回していた。

根岸Sを快勝後、田中博康調教師はすぐにフェブラリーSへの出走を明言せず、あくまで馬体の回復具合を見てからエントリーするなど、出走に対してかなり慎重に構えていたため当日の状態が気になったが、黄金色に輝く518キロの馬体からは体調面の不安はないように見え、大勢のファンの前でもいつものように振る舞うレモンポップの姿にはどこか逞しささえ感じるほどだった。

ゲートが開いた瞬間、帝王賞馬メイショウハリオが大きく躓き出遅れるという波乱のスタートとなったが、レモンポップは好スタートを決めて5番手の好位に付けて逃げるヘリオスやショウナンナデシコらを見ながら内にいるドライスタウトに寄り添うように追走した。

初コンビとなった若武者・坂井瑠星との息もピタリと合った走りはこれまでのレースと何ら変わらないもので、どこか安心感さえ抱かせるものだった。

前半3ハロンの通過タイムが34秒6という平均ペースで流れたためか、馬群はほとんどひと固まりのままで4コーナーを過ぎ、最後の直線へ。

ペースを作ってきた先行馬たちを捕らえるべく後方にいた馬たちが続々と追い出しにかかる中、レモンポップの鞍上、坂井瑠星は一切追うことなく、手綱を持ったままで先頭に並びかけていった。

 その姿はまさに涼しい顔をして連勝を積み重ねていた、昨年の春ごろのレース運びそのもの。残り200mを目前にしたところでレモンポップは余力十分に先頭に立ち、後続馬からの追撃を受ける体勢を取った。

 いわゆる横綱相撲と言うべき王道のレース運びだが、レモンポップの走りにはこれから迫ってくる後続馬たちを受けて立つという王者の意地よりも、1番にゴールを駆け抜けたいという思いを感じた。

「このレースを勝利して、ダート界の王座に君臨するんだ」というギラギラとした野望ではなく、「ただただ勝ちたいんだ」という純粋な思いが先頭に立って迎えた残り200m、レモンポップを前進させているように見えた。

川田将雅の豪腕に導かれるかのように、外からレッドルゼルが弾けるかのような走りでスパートをかけ、そしてスタートで出遅れたメイショウハリオも帝王賞馬の意地で猛然と追い込んできたが前を捕らえるまでには至らず、直線早めに先頭に立ったレモンポップは先頭のままゴールを駆け抜けた。

GI初挑戦にして、まったくソツのないレース運びで押し切るという完勝でレモンポップは1番でゴールを駆け抜け、新たなダートの王に君臨した。

これまでのダート王のような荒々しい力強さではなく、青と水色で彩られたゴドルフィンの勝負服のようにどこか爽やかさを感じさせながら。

坂井瑠星はレース後のインタビューで「僕はただ乗っているだけでした」と謙遜したが、このレースでの最大のライバル、ドライスタウトの脚を封じるために外から馬体を被せ、直線では先に抜け出すという昨秋にGⅠ初制覇を果たして以来、急成長を遂げた鞍上だからこそできるクレバーな騎乗を見せた。

そんな鞍上の思い描いたプラン通りの走りを現実のものにするのだから、レモンポップもまた賢い馬だと言えるだろう。「精神的にもどっしりとしている」と評されるほど常に落ち着いている馬なので、きっとGIホースとなったこれからも安定した走りで長きにわたり、ダート界の王座に君臨するはずだ。

 今までのダートの王者とは一味違う印象のあるレモンポップ。果たして彼がこれから歩む道はいったい、どんなものだろうか。


■文/福嶌弘

A3_出走表(16頭)フェブラリーS-(1).jpg

第40回フェブラリーステークス(GI)着順

着順 馬名(性齢 騎手)人気
1着 レモンポップ(牡5 坂井瑠星)1
2着 レッドルゼル(牡7 川田将雅)3
3着 メイショウハリオ(牡6 浜中俊)4
4着 ドライスタウト(牡4 戸崎圭太)2
5着 アドマイヤルプス(セ6 内田博幸)14
6着 スピーディキック(牝4 御神本訓史)6
7着 ヘリオス(セ7 武豊)13
8着 ソリストサンダー(牡8 菅原明良)9
9着 シャールズスパイト(牡6 J.モレイラ)5
10着 ケンシンコウ(牡6 T.バシュロ)12
11着 セキフウ(牡4 M.デムーロ)11
12着 オーヴェルニュ(牡7 福永祐一)10
13着 ケイアイターコイズ(牡7 横山和生)15
14着 テイエムサウスダン(牡6 C.ルメール)8
15着 ショウナンナデシコ(牝6 横山武史)7
16着 ジャスパープリンス(牡8 田中勝春)16

※結果・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。