キングカメハメハ「その血が日本競馬の主流血脈のひとつとなった変則二冠馬」【もうひとつの最強馬伝説】

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2026.5.10

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2004年NHKマイルCを制したキングカメハメハ(c)SANKEI

主戦騎手が不向きと思っていた距離で驚異の独走劇

2004年春、クラシック第一弾の皐月賞をパスし、NHKマイルCへ向かい圧勝。

続く日本ダービーもレースレコードで快勝したキングカメハメハ。

その現役時代について同馬の主戦騎手を務めた安藤勝己元騎手に聞いたお話を、選りすぐりの名馬36頭の素顔と強さの根源に迫った『もうひとつの最強馬伝説〜関係者だけが知る名馬の素顔』(マイクロマガジン社)から一部抜粋・編集してお届けする(文中敬称略)。

NHKマイルCと日本ダービーを制した「変則二冠馬」のキングカメハメハ。主戦騎手だった安藤勝己は、「僕が乗ってきた馬の中で最強の1頭。とにかく乗りやすかった」と振り返る。

当時のレースVTRを確認してみても、騎手がゴーサインを出すと同時にスパートを開始すると、瞬く間に後続との差を広げている。

しかし、新馬戦のVTRを見ると「この馬がダービー馬?」との思いが拭い去れない。2歳11月の京都芝2000メートル。スタートから中団につけて勝利するものの、2着との着差は2分の1馬身。

2戦目のエリカ賞も同じ位置から同じ着差。この時点でダービーを勝つとは、当の安藤自身も思っていなかった。

「馬体も締まっていなかった。けど本気で追うと伸びてくれた」

幼少期から癖がまるでなく、のんびり屋だったキングカメハメハは、素質開花までに時間がかかった。3戦目の京成杯で初めて3着に敗れた。

騎乗したD・バルジュー騎手は「4コーナーで手ごたえが怪しくなったが、直線では再び伸びてくれた。まだ何をしていいか、わからずに走っている感じ。将来的には大きな舞台で戦える器だと思う」とコメントしている。

ただ失敗は成功の源でもある。この京成杯の敗戦でキングカメハメハは覚醒した。

安藤は、「(京成杯を見て)正直あの程度かと思ったけど、その後の調教では別馬と思うぐらい動きが良くなった」

4戦目のすみれSでは、スタートから積極的な走りで3番手につけ、2着馬を2馬身半ほど突き離した。

再びコンビを組んだ安藤は、「新馬戦の際にはズブいと思っていたけど、まるで違った。馬体重はデビューのときより10キロほど減っていたけど、雄大に見えた。調教も、新馬戦当時とは比較にならない動きで、精神面が強くなっていた」と振り返った。

管理する松田国師は、この3年前のクロフネ(NHKマイルC優勝馬)と同じローテーションを描いていた。

「競走馬にとって難しい」=器用さが求められる中山をパスし、次走で毎日杯に出走させたのである。毎日杯でキングカメハメハは3番手につけると、直線で騎手のゴーサインに反応し、すばらしい瞬発力を見せつけた。

ドバイワールドカップでアドマイヤドンに騎乗する安藤の代打を務めた福永祐一は「いいポジションで競馬ができた。どんな競馬でもできる。大人っぽい高校生みたい」と後に語っている。

続くNHKマイルCで再び騎乗した安藤は、「新馬戦に乗った際、適性距離は2000メートルかそれ以上と思っていた。流れに乗るまで時間がかかるので、2000メートルなら慌てずに乗れる。乗った感触やフットワークから、マイル向きのタイプではない」と多少の不安を感じていた。

乗り役の不安は馬に伝わる、と語る安藤は、馬の長所を最大限に活かすレース内容を思い浮かべたそうだ。

「後方にいたとしても直線は長い。馬任せで楽に走らせよう」とイメージしたそうだが、ゲートが開くと抑えるのに苦労するほどの走り。

4コーナーで先頭に立つと、直線は独走状態。これ以上ない独走劇に多くのファンが度肝を抜かれた。「こんなに強い勝ち方をするとは...」 安藤も予想外の強さに驚いたという。

■キングカメハメハプロフィール
生年月日:2001年3月20日生まれ
性別:牡馬
毛色:鹿毛
父:キングマンボ
母:マンファス(母父:ラストタイクーン)
調教師:松田国英
馬主:金子真人
生産牧場:ノーザンファーム(早来)
戦績:8戦7勝
主な勝ち鞍:日本ダービー、NHKマイルC、神戸新聞杯

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もうひとつの最強馬伝説 ~関係者だけが知る名馬の素顔

第2次競馬ブーム(1990年前後)の立役者・オグリキャップから世界最強馬イクイノックスまで、ターフを彩った名馬36頭をセレクト。強さや速さはもとより、その素顔はどんなものなのか?

その馬をもっともよく知る関係者(調教師、厩務員、調教助手、騎手、牧場関係者など)への独自取材を敢行。今だから話せる裏話やエピソード、感動ストーリーも盛りだくさんで、名馬の本質を掘り下げていきます。


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