サクラバクシンオー「レコードを連発した稀代の名スプリンター」【もうひとつの最強馬伝説】

第28回スプリンターズS 小島太騎手騎乗のサクラバクシンオーが優勝(c)SANKEI
デビュー当初はクラシック路線を目指したものの、トライアルで惨敗を喫して短距離路線にシフトしたサクラバクシンオー。
4歳以降はスプリンターとしての資質が完全開花。暮れのスプリンターズSで初のGIタイトルを奪取する。そしてラストランとなったのもそのスプリンターズS。
連覇がかかった最後のレースを前に、陣営はどのような仕上げと決意で臨んだのか。
デビュー以来、同馬の出走したすべてのレースに騎乗した小島太さんに聞いた当時のお話を、選りすぐりの名馬36頭の素顔と強さの根源に迫った『もうひとつの最強馬伝説〜関係者だけが知る名馬の素顔』(マイクロマガジン社)から一部抜粋してお届けする。
1990年にスプリンターズSがGⅠに昇格後、初めて同レースの連覇を達成したサクラバクシンオーといえば、フィジカルはマッチョ、メンタルは猪突猛進な〝体育会系〟を想像するが...。
「身体のシルエットは決して良くなかったですね。当時は冬毛も伸びていたし」
全21戦で手綱をとった小島太は、デビュー直前の〝ルックス〟はあまり芳しくなかったと振り返る。
さらに「性格は前向きであっても夢中になり過ぎるわけではない。素直さは父譲りでしたね」と決して我が強いタイプではなかったとも。
その父とは1986年の天皇賞・秋を制したサクラユタカオー。
そして母サクラハゴロモは、種牡馬としても成功するアンバーシャダイの全妹。そんなスペックの高さをパフォーマンスに転化するには、自らとの闘いに打ち克つ必要があった。
「ウッドチップがなかったら...。ラストランのときの完成された馬体はなかったでしょう」
栗東トレセンにやや遅れて、美浦にもバクシンオーのデビュー9カ月後となる1992年10月にウッドチップコースが完成。
「体質が弱く化骨が遅かった。特に(左前)球節はウッドがなければもちませんでした」と、新コースがガラスの脚元の救世主になる。しかし、才能の開花にはそれに見合ったボディーの完成を待つ必要があった。
「調教師をはじめ、みんながじっと辛抱しましたし、ヤネの自分もレースでは先々を見越して育てていきました」
中でも担当厩務員の吉村活彦の献身的な努力がなければ〝本格化〟はなかったかもしれない。
「血統馬らしく皮膚が薄く、馬が良くなる様子は手に取るようにわかりました。だからといって調子に乗って一気に身体を作っていたらダメだったでしょう」
3歳から44歳春まではカイバ量を調節するなど、吉村の細心のケアであえてリミッターをかけていたという。そして「痛いところがなくなり、馬自身が本当に思い切ったフォームで走れる」ようになった4歳暮れのスプリンターズSで初のGIタイトルを奪取する。
「スピードでは負けない自負はありました。それでも止まるんじゃないかという不安も。何せ相手はマイルでもGⅠを勝つような強い馬でしたから」
今度は自身がマイル戦も制圧すべく5歳時は安田記念、マイルCSに挑戦するがいずれも惜敗。
「マイルCSは〝我慢しなければ千六はこなせない〟と思い込んでいた自分の失敗。抑え込まないで早めに出していけば...。今ならば、そうするでしょう」
そしてラストラン。連覇がかかる5歳時のスプリンターズSの馬体重は、デビュー以来最高の504キロになっていた。
「最後の最後に筋肉がついて身体に幅が出ました。これ以上は良くなりようがない。完璧に完成されていました。レースは自分でも上手く乗ったと思います。行く馬は行かせてマイペースで。最後のレースと決まっていましたし直線も思いっ切り走らせました」
■サクラバクシンオープロフィール
生年月日:1989年4月14日生まれ
性別:牡馬
毛色:鹿毛
父:サクラユタカオー
母:サクラハゴロモ(母父:ノーザンテースト)
調教師:境勝太郎
馬主:さくらコマース
戦績:21戦11勝
主な勝ち鞍:スプリンターズS(2回)、スワンS
生産牧場:社台ファーム(早来)

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