【スプリンターズS 見どころ】短距離王に求められるのは勢いか、格か

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2026.9.27

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(c)SANKEI

スプリンターズSが秋の中山の風物詩となって、もう四半世紀以上の月日が経つ。

年末に行われていたころはGIホースが力で捻じ伏せるシーンが目立ったレースだが、近年は路線が整備されたこともあり、その年に急成長を遂げた上がり馬がその勢いのまま短距離王の座に駆け上がっていく。

直近5年のスプリンターズSの勝ち馬を見れば、その様子がよくわかる。

3歳で短距離王の座に就いたピクシーナイトに、その年に重賞制覇を飾ったジャンダルムにルガル、ママコチャは夏場の短距離重賞で結果を出しその勢いのまま突き抜けた。

そして昨年は8歳になっても衰え知らずのまま押し切ったウインカーネリアン...... 彼らはいずれもスタートから軽快に前に付け、その勢いのまま短距離の王座をもぎ取り、GIホースの仲間入りを果たした。

「夏場は格よりデキ重視」という格言が競馬界には存在するが、これはスプリンターズSにも当てはまるのかもしれない。

近走不振な実績馬よりも、格下でも勢いに乗った旬な馬――秋のスプリント王決定戦を制するには勢いが欠かせない。

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フリッカージャブ(c)SANKEI

そう考えると、今年の出走馬で最も旬な馬と言えるのはフリッカージャブだろうか。

昨年の春、3歳だった彼はスピードには目を見張るものがあれど成績は凡庸な3歳馬。そんな彼が変わったのは昨夏のことだった。

逃げにこだわり、スタートから飛ばしていくようになったことで1勝クラスから耶馬渓特別、北陸Sと破竹の3連勝。

今年緒戦、重賞緒戦となったオーシャンSはスタートから逃げられずにいたことで6着に終わったが、鞍馬Sでレコード勝ちを収めてから再び連勝街道を歩み出し北九州記念とセントウルSを制覇。

いずれもハナに立たず、番手から進めて4角で先頭に立つというレーススタイルで押し切ってみせた。

圧巻だったのは前走のセントウルSだろう。

3番枠を引いているため楽に逃げられるはずなのに、外からやってきた逃げ馬ピューロマジックを先に行かせて折り合いをつけ、直線で差を詰めて抜け出し、坂を迎えるところで先頭を奪い返してそのまま押し切った。

重賞5勝馬を相手に力で捻じ伏せた走りは急成長の証と言っていいだろう。

馬場も位置取りも問わなくなった今こそ、短距離王の座に就くのに機は熟した。

連勝中の勢いそのままにGⅠ初挑戦となるここも通過点にすることはできるだろうか。

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ピューロマジック(c)SANKEI

そしてこの夏、フリッカージャブとサマースプリントシリーズの王座を争い、勝利したのがピューロマジックだ。

葵Sで激走し、北九州記念で古馬を蹴散らした快足娘は坂が苦手なことでもおなじみ。ここまでに挙げた7勝すべて、直線に坂のないコースでスピードをフルに生かしてのもの。

スプリンターズSは2年連続で挑みいずれも8着と結果を出せなかった。

そうして迎えた2026年。5歳になった彼女は苦手の中山で行われたオーシャンSでいきなりシンガリ負けを喫すると、続く高松宮記念も13着に惨敗。

いつも通りの平常運航かと思われたが、夏の函館で彼女は華麗に復活。

函館スプリントSでは6番人気にまで人気を下げたが、スタートから威勢よく逃げていくとその勢いのまま突き抜け久々の勝利を掴むと、続くアイビスサマーダッシュは不利とされる内枠に入りながらも軽快なスピードを武器に押し切り、軽々と連覇を達成した。

そうして迎えたスプリンターズSの前哨戦であるセントウルS。

直線に坂のある阪神コースということで人気をフリッカージャブに譲ったが、それでも先頭だけは譲るまいとスタートから積極的に出ていくと、直線でも最後まで踏ん張って2着に。

あっさりと失速して13着に沈んだ昨年と比べると大きく成長を遂げたことをアピールし、この激走でサマースプリントシリーズ王者に輝いた。

3年連続、3度目の挑戦となるスプリンターズS。大外枠を引き当ててしまったことがどう出るかだが、完熟を迎えた今年は今までとは違うということを見せられるだろうか。

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スターアニス(c)SANKEI

暑い夏に結果を出してきた上がり馬2頭とは異なり、新しいステージで結果を出そうとする者がいる。

桜花賞馬スターアニスはこのレースで初めての古馬との対決を迎え、短距離女王の座を目指す。

もともと完成度の高さは今年の3歳馬の中でも屈指の1頭。

出遅れても最後にはしっかりと伸びてくる末脚を武器に中京2歳Sをステップに挑んだ阪神JFは中団で脚を溜め、直線で一気にスパート。栗毛の馬体を金色に輝かせ、芳しい香りを漂わせるように突き抜けて2歳女王の座を射止めた。

3歳緒戦の桜花賞もそう。今まででベストなスタートを切ったことで普段よりも前に付けながら前半の800mで45秒7という速い流れに対応し、直線では残り300mの時点で先頭に立って押し切るという横綱相撲を披露して快勝。

いとも簡単にさくらの女王の座を射止めてみせた。

だが、その有り余るスピードは樫の舞台には合わなかった。

二冠制覇を目指したオークスは800mもの距離延長に対応できずに12着に惨敗。距離の壁が彼女の前に立ちはだかってしまった。

スプリンターズSはそれ以来の実戦。2400mを走った後に一気に半分の距離に挑むことになるわけだが......スピードは世代屈指のものがあるだけに対応できてもおかしくない。

思えば34年前、桜花賞馬ニシノフラワーが同じように2400mからの距離短縮でこのレースに挑み、ヤマニンゼファーらを凌いで勝利した。令和の2歳女王もその異次元のスピードを披露することができるだろうか。

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パンジャタワー(c)SANKEI

勢いに乗ったまま挑むもの、新たな舞台で活躍を期すものがいる中で、短距離王の座を一途に狙っているのがパンジャタワーだ。

昨夏のキーンランドC、後にスプリンターズSを制するウインカーネリアンを直線で撫で斬り勝利。

スプリント界に新星が誕生したのだが、彼はスプリンターズSには目もくれず海外へとその矛先を向け、今年の高松宮記念でようやくスプリントGⅠに初めて挑んだ。

その後、NHKマイルCを制した舞台で行われた安田記念で5着に終わると、昨年勝利したキーンランドCでは躓く不利もあり2着まで。掲示板を外さない安定した走りを見せるも、気が付けば1年以上勝ち星から遠ざかって5連敗。

成長するにつれ、スピードに磨きがかかってきたことでより短距離への適性が強まってきているようにも思える。

だからこそ、スプリンターズSは是が非でも欲しいタイトル。久しぶりの勝利で念願の短距離王の座をその手に収めるだろうか。

夏の勢いのまま挑むもの、新たなステージで輝きを放とうとするもの、そして悲願を叶えにやってくるもの――秋のスプリント王座決定戦は今年もまた熱い戦いになりそうだ。


■文/福嶌弘