【菊花賞】ゴーイントゥスカイ←コントレイル←ディープインパクト 曇り空を突き抜けた、三代目の菊花賞馬

その他

2026.10.26

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ゴーイントゥスカイ(c)SANKEI

その瞬間、京都競馬場のスタンドからは悲鳴のような歓声が上がった。

史上9頭目となる三冠制覇を目指していたロブチェンが最後の直線で馬群に沈むという、今まで誰も見たことがない少々ショッキングなシーンにファンは敏感に反応した。

逃げてレコード勝ちした皐月賞、そして直線で差してきて栄冠を掴んだダービーと、その自在性のある脚質が最大の武器だったロブチェンだが、菊花賞ではゲートをアオリ気味に出てしまうなど、本来の位置取りでレースが出来なかった。

レースが始まってから終始、後方5~6番手をウロウロしていたロブチェンは2周目の3コーナー過ぎに仕掛けて4コーナーから直線にかけては3番手まで押し上げていったが、本来のレースプランではなかったことが影響したのか、それが精いっぱいの抵抗だった。

そんなロブチェンとは対照的に、うまく立ち回れたなと感じたのが......ゴーイントゥスカイとバステールだった。

ともにダービーで好走したが、秋緒戦のセントライト記念で惨敗。

そのためこのレースではロブチェンの引き立て役くらいにしか思われていなかった。

しかし、レース当日のこの2頭はしっかりと立て直し、ロブチェンの発汗が目立ったパドックでは目を見張るほどの好仕上がりを見せていた。

「もしかしたら、逆転があるかも」......思えばこの辺りから、新たなスターホースが生まれる予感がしていたのかもしれない。

そうして迎えたレース。ゲートが開いた瞬間、アオリ気味に出たロブチェンとは対照的に好スタートを切り、先頭を奪ったのは伏兵のキンググローリーだった。

前走の九十九里特別も逃げ切っていたが、勝つにはこれしかないと言わんばかりに手綱を握る丹内祐次は一気にペースを上げていき、自身を後続の馬群から引き離す。

2ハロン目から11秒台の時計を記録し、1000mの通過タイムは58秒4という速さになったが、それでもキンググローリーの逃げは変わらない。

先頭から2番手の馬に20馬身ほどの差をつける大逃げにファンのどよめきがターフにこだまする中、2番手以降にいた各陣営は冷静だった。

このレース4連覇を狙うルメールはパートナーのダノンヒストリーの大きなストライドを生かすべく、馬群の外側にポジションを変えていき、三冠制覇を目指すロブチェンは3コーナー過ぎから仕掛けてきた。

坂を下り、迎えた最後の直線。先頭を行くキンググローリーとの差はまだ20馬身以上はある。

その中を果敢に仕掛けていったのが、ロブチェンだった。

ハッキリ言って、見せ場を作れるような脚はもう残っていない。

終始隣にいたダノンヒストリーの手応えとは全く違い、いつ失速してもおかしくない状態に。そんな姿になってもあきらめずに走り続けたことが二冠馬としての矜持だったのかもしれない。

キンググローリーが失速し始めたことで、菊花賞最後の直線は大混戦に。

本来伸びてくるであろうロブチェンが早々と失速してしまったため、この後の展開が誰も読めないほどに乱れ、入れ代わり立ち代わり、伏兵たちが先頭を争うことになった。

そんな空気を一瞬で替えたのが、ゴーイントゥスカイと武豊である。

思えばこれまで、特に目立つ位置にはいなかった。馬場のいい内目で折り合いをつけて直線勝負に勝機を見出すと、直線で進路が空いた瞬間にエンジンをフルスロットルに。

まるで青葉賞のリプレイを見ているかのような力強い走りでゴールまで残り200mの地点で馬群を切り裂いて、ゴーイントゥスカイが先頭に立った。

そのゴーイントゥスカイを目掛けて突っ込んできたのが、ダービー3着馬のバステール。

直線を向いた時でさえ後ろから数えた方が速いという位置にいながら、十分に溜まっていた末脚を生かし、懸命に前を追いかけ、気付けば先頭を行くゴーイントゥスカイを射程圏内に捉えていた。

武豊と川田将雅......最後はトップジョッキー同士の叩き合いとなり、馬体を併せたままゴールを迎えたが、経験値の差なのか、わずかにハナ差だけゴーイントゥスカイが先着。

6年前の三冠馬、コントレイルの初年度産駒がロブチェンの三冠を阻み、そして7年ぶりの菊花賞制覇となった武豊はこれで菊花賞6勝目。

単独での歴代最多優勝騎手の座に立つという、まさにメモリアルな勝利となった。

「空気を読まなくて、申し訳ない気持ちはありますが......」と、レース後のインタビューで武豊はこう語った。

三冠達成を願っていたファンへのユーモアあるコメントだが、これもまた競馬。勝負の世界に生きる者たちだからこその物語である。

まさかの14着に終わったロブチェンもこの悔しさを必ずどこかで晴らすことを誓ったはずだ。

そしてコントレイル産駒として初のGⅠホースであり、祖父ディープインパクトから続く三代連続の菊花賞馬となったゴーイントゥスカイ。

曇り空を突き抜けて掴んだ栄冠を胸に彼は今後、どんな空へと飛び立つのだろうか。


■文/福嶌弘