横浜DeNAスカウト・吉見祐治 野球人同士の絆が生まれる日、新米スカウトの奮闘

そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない
今年のドラフトに何があったのか?カメラは見た。水面下で繰り広げられるスカウト戦略の裏側を。
今回の企画が実現できたのは横浜DeNAが全面協力を約束してくれたおかげ。主人公はスカウト歴2年のこの男。
横浜DeNAスカウト、吉見祐治。
彼もまたかつてドラフトを「受けた」身だった。2位で指名され入団、やがて横浜に欠かせない左のエースになった。14年に及んだ現役生活で44勝を挙げている。
引退後は打撃投手に。スカウトへの転任希望はその頃から持っていた。自分がプロでやれたのもスカウトのおかげだと思うからだ。
去年念願は叶い、新米スカウトの奮闘は始まった。
吉見が狙った選手
横浜DeNAのスカウト陣は総勢8人で全国を網羅する。
吉見の担当は千葉県と中国四国地方の計10県。スカウトの役割は有力選手を推薦すること。指名の最終決定権は編成部が持つ。
よそと同じ選手を狙うならスカウトは要らない。彼らが求められるのはマークの薄い逸材の発掘だ。
吉見は一人の選手を狙っていた。千葉県・専大松戸高校、深沢鳳介。
見立ては細かく数値化する。スカウト陣で共有している門外不出の最高機密資料を特別に見せてもらうと、深沢の評価が数値化され並び、さらに吉見の寸評もこう書き込まれていた。
「サイドスローで非常に良い角度を持っている。指先の感覚に優れフォームも癖がないのでこの先シンカーなどサイド特有の球種も覚えていける。」
家族と離れビジネスホテルを泊まり歩く日々。二人の子供の子育ては妻に任せきり。感謝しながら仕事を続けている。
編成会議
始まった編成会議。
ひそかに追い続けてきた才能。しかし同僚のスカウトたちもそれは同じこと。各自それぞれに惚れ込む隠し球がいる。
会議では候補者をふるいにかける。担当スカウトは自分が見つけてきた選手の説明をし、最終判断は上層部がくだす。
3時間以上に及んだ会議。当初200人以上いた候補者はこの段階で100人程度に絞られた。
今、チームに足りないコマは右投手。その事実を再確認した吉見は岡山に飛ぶ。見ておきたい選手がいたからだ。
仕事に不満はないが心残りはある。初めて臨んだ去年のドラフトで自分が推薦した選手は一人も指名されなかった。
今年こそ。その思いに押されて今日も球場へ足を運ぶ。
この日、岡山まで見に来たのは廣畑敦也。社会人野球二年目の23歳で、帝京大学時代に151キロをマークした本格派右腕。吉見によれば先発中継ぎ抑えのどこでも使えそうな即戦力だという。
ドラフト当日
ドラフト前日。全スカウトと球団首脳が一同に介し、最終方針を決める。ここで決められたのは投手、内野手、外野手それぞれの優先順位。
およそ80人程度をリストに残し、あとは当日、他球団の指名を見ながら首脳陣が決断していく。
迎えたドラフト当日。スカウトは見守るしかない。新米スカウト吉見祐治は高校生の深沢と社会人の廣畑、二人を推した。
先に名前が挙がったのは廣畑。無念。他球団に先を越された。
あとは専大松戸の深沢がどうなるか。他球団の指名を見ながら5順目。DeNA首脳陣が選んだのは吉見が推した深沢。
推薦した選手が初めての指名された。人と人。あらたな縁がこの日、生まれた。
契約から入団へ、吉見の仕事は続く。そして選手の現役生活にずっと寄り添い続ける。
選手とスカウト。野球人と野球人の絆がそこにある。