【エリザベス女王杯 みどころ】唯一無二の輝きを得るために、絶対負けられない大一番
2021.11.14
アカイトリノムスメ 写真:東京スポーツ/アフロ
「何か、寂しい」――今年のエリザベス女王杯の出走馬を見て、そんな思いに駆られた方も少なくないだろう。
出走17頭と3年ぶりにフルゲートに届かなかっただけでなく、GI馬の出走も過去10年で最少となるわずか2頭。
クロノジェネシスやラヴズオンリーユーなどの牡馬相手でも動じない女傑もいなければ、昨年の牝馬三冠馬デアリングタクトもいないという具合に現在の競馬界の先頭をひた走るトップクラスの牝馬たちがいないことがこの寂しさの原因とも言えるが... 実はこれこそ、エリザベス女王杯の真の立ち位置とも言える。
古馬に開放されてからのエリザベス女王杯を思い出すと、トップクラスの牝馬がしのぎを削り合うというよりも、牝馬クラシックであと一歩届かなかった馬たちが巻き返したり、古葉になって急成長を遂げた遅咲きの馬が栄冠をつかんだりというシーンが目立つ。
特に春にヴィクトリアマイルが創設された2006年以降、そうしたケースが顕著になったように思う。
例えば昨年。ラッキーライラックが連覇を飾ってGI4勝目を記録したが、クラシックではアーモンドアイの後塵を拝してばかりだった。言うなれば世代No.2がこのレースを勝ったことで箔をつけ、牡馬とも伍するだけの実力をつけていったように思う。
ラッキーライラックの前にこのレースを制したリスグラシューもそうだ。彼女とてデビュー当時からトントン拍子で重賞を制したが、GIになると彼女の前には常に誰かがいた。
ところが、ジョアン・モレイラを背にしたこのレースで念願のGI勝利をつかむと、以降は馬が変わったかのように安定し、翌年にはGIを3勝。
引退レースとなった有馬記念では直線早々と抜け出して、アーモンドアイらを相手に楽勝するという強さを見せた。
つまり、エリザベス女王杯を勝てば、ナンバーワン......いや、オンリーワンともいうべき輝きを得ることができる。
先に紹介した2頭はもちろん、思えばアドマイヤグルーヴやトゥザヴィクトリーもこのレースを制してからが本格化したような印象が強い。
そう考えると、今年のエリザベス女王杯。No.2の座から脱却したいという馬が揃っている感がある。その筆頭格はアカイトリノムスメだろうか。
前走の秋華賞でようやくGIホースの仲間入りを果たしたとはいえ、今年の3歳世代の牝馬で話題をかっさらっていったのは桜花賞馬ソダシ。
白毛という希少性に加え、圧倒的なスピードを武器にしたレース運びには隙がなく、ソダシと走るライバルたちのほとんどは彼女の引き立て役にしかならなかった。
アカイトリノムスメも例外ではない。走れど走れど、ソダシのライバルとして見られることはほとんどなく、春は脇役の1頭という扱いにすぎなかった。
両親ともにクラシック三冠馬という競馬界史上最高クラスの良血馬とは思えないほど、強い印象を残すことができないでいたように思う。
しかし、そんな彼女も秋緒戦となった秋華賞を制してついに脇役の座から脱却。3歳世代の代表として、この世代の牝馬GI馬として初めて古馬GIへ挑むことになった。
常に主役としてスポットライトを浴びてきたソダシがいない中で走る初めての大舞台。母アパパネが唯一勝てなかった牝馬限定GI、娘である彼女はどんなレースを見せるのだろうか。
レイパパレ 写真:東京スポーツ/アフロ
史上初となる無敗の牝馬三冠を達成したデアリングタクトが現れた4歳牝馬世代。その構図は「デアリングタクトとそれ以外」といった具合で今年の3歳牝馬世代とは比べ物にならないほど大きな差があった。
ところが、秋華賞後のデアリングタクトは3戦連続で黒星を喫したのち、右前肢繋靭帯炎で戦線を離脱。日の目を見ることがなかったその他の馬たちにもスポットライトを浴びるチャンスがやってきた。この機会を逃すまいとして今年、大きな飛躍を遂げたのがレイパパレだ。
アカイトリノムスメはクラシック戦線でソダシとぶつかり合ったが、レイパパレは3歳春当時、デアリングタクトとともに走るのはもちろん、3歳重賞にすら出ることすらない無名の存在。
休養を挟みながら条件戦で力を積み上げていき、秋にはいよいよ秋華賞に挑むかと思われたが、まさかの抽選漏れ。クラシックでデアリングタクトとしのぎを削るのは幻となってしまった。
何とも言えない悔しさの中、レイパパレは奮起。12月に行われたチャレンジCで堂々の重賞初制覇を決めると、4歳年明け緒戦として選んだ大阪杯では道悪馬場にもめげずに果敢に先行。
同い年の牡馬三冠馬コントレイル、そして短距離女王グランアレグリアらを寄せ付けない完璧な走りで逃げきり、無傷のまま6戦目にしてGI勝利。雨の阪神から、新女王が誕生したように見えた。
しかし、彼女の政権もまた短かった。続く宝塚記念ではクロノジェネシスにあっさりと交わされて初黒星となる3着に。
飛躍の秋のためにと選んだオールカマーは格下の馬たち相手のレースとなったにもかかわらず4着と自己ワースト着順に終わった。
所詮はデアリングタクト不在の中から湧き出たその他1頭――
そんな低評価を覆すためには掴みかけた女王の座を今度こそガッチリと手中に収めること。敗れた2戦ともに2200mという距離だったことがどう出るかだが、相手関係を考えればここは決して負けられない。
そんなデアリングタクトにオールカマーで土を付けたのが同じ4歳のウインマリリン。
オークスでデアリングタクトの2着に入って以来、驚きの好走を見せることが多かった彼女。特に距離が延びれば延びただけ、持ち味を発揮できる。この秋、最も勢いに乗る男である横山武史を背にしての大番狂わせがあるかもしれない。
燻り続けたNo.2が唯一無二の存在になれるエリザベス女王杯。心を、闘志を燃やして仁川の舞台で極上の輝きを放つのはいったいどの馬だろうか。
■文/福嶌弘