高校サッカー界で「キング」の異名を持つ18歳、有言実行のビッグマウス 青森山田・松木玖生
2021.11.17
そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない
準備運動を見るだけで強さがわかる。高校サッカーの強豪、青森山田はその例に漏れない。
全国から越境して集まった精鋭たちを彼は従えていた。松木玖生(くりゅう)、18歳。
その名が知れ渡ったのは2年前のこと。1年生だった松木は全国大会で4ゴールを奪う。蹴ってよし、ヘディングしてよし、そして守備もよし。
身体能力とポジショニングとテクニックと、全てが優れていなければこうはならない。
フランスの強豪クラブから声がかかり練習に参加したこともあり、フランス一部リーグの古豪が獲得を狙っているとも報じられた。
「キング」の異名
同世代きっての秀でた存在が故についた異名は「キング」。
本人に座右の銘を聞くと。
「俺か、俺以外か。」
カリスマホスト、ローランドの言葉だ。
有言実行のビッグマウス。大言壮語はするが実は努力家。今、話題の新庄剛とも似た匂い。
自分を追い込む理由
筋トレは体幹と上半身を中心に、鍛える箇所を曜日ごとに変えている。
現在180センチ、76キロ。体重は入学以来5キロ増え、当たり負けも滅多にしなくなった。
松木がここまで自分を追い込むのには理由がある。
高校1年で出場した全国大会決勝。同点で迎えた終盤、松木はマークしていた選手に振り切られ、決勝点を献上。松木のミスでチームは全国制覇を逃した。翌年も決勝まで進むがPK戦で敗れ2年連続の屈辱。
その悔しさが時を経て熟成し、怪物覚醒への起爆剤になっていく。
残された高校生活はリベンジのための時間だった。
8月のインターハイ、準決勝の相手はおととし選手権決勝で敗れた静岡学園。背番号10のボランチ、松木は燃える。体を張ったプレーで相手を分断。主導権を渡さない。
そして攻撃では、ここぞというタイミングを見極め走り込んでシュート。相手に一本もシュートを打たせない完璧な内容だった。
怪物の成長
そして決勝。悲願の高校初優勝へ、三度目の挑戦は失点から始まった。
うまくいかない状況にどう立ち向かうか。それを学んだのが松木の高校時代だったのかもしれない。
延長に入っての決勝点。チームが優勝をつかんだ時、キングと呼ばれる男の涙がそこにあった。自分だけが目立つ選手からチームを勝たせる選手へ。怪物の成長をカメラは見届けた。
そして先月、松木が選んだ進路はJリーグ、FC東京だった。
海外でのプレーは先送り。日本で経験を積んでからと決めた。
とは言え、世界に通じる才能が放っておかれるはずもない。22歳以下の日本代表になんと飛び級で選ばれたのだ。18歳での召集は異例と言える。
松木は急遽、青森を離れアジアカップ予選に出場することになった。まわりはほとんど年上だが松木に物怖じする様子はなかった。日本代表、森保監督の前でゴールを決め勝利に貢献。その存在感を示した。
そして続く2戦目でもボールを奪う果敢なプレーで得点につながる活躍。18歳ながらこの年代の代表で十分にやれると証明した。
ビッグマウスの予言をこの先も聞きたい。