【阪神JF】サークルオブライフ 幸運を自ら手繰り寄せた、大外一気の末脚

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2021.12.13

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    阪神JFを3連勝で制して2歳女王に輝いたサークルオブライフ 写真:日刊スポーツ/アフロ

    永遠に続く、名馬の輪 ~第73回阪神JF回顧

     勝てども勝てども、人気にならない馬――

    優勝劣敗の世界であり、どの馬が勝つかを予想するギャンブルであるはずの競馬には、なぜかこうした馬が時折現れる。

    小さな牧場で生まれたマイナー種牡馬の産駒や地味なキャラクターの騎手が騎乗しているなど、人気になりづらい馬にはそうした要因が少なからずあるものだが......そう言ったものに当てはまらない馬もいる。

     今年の阪神JFを勝った、サークルオブライフも「なぜか人気にならない馬」の1頭と言えるだろう。

     生まれは日高の名門、千代田牧場で父は新鋭の種牡馬であるエピファネイア。アパパネ、アーモンドアイなどを育てた国枝栄が育て、鞍上にはミルコ・デムーロがデビュー戦から騎乗......

    どこからどう見ても人気になりそうなプロフィールを持っているにもかかわらず、サークルオブライフはデビュー以来、3戦して1番人気どころか単勝5倍以下に支持されたことすらゼロ。

    重賞初制覇を飾ったアルテミスSでは単勝21.9倍の7番人気という完全な伏兵扱いだった。

     勝ち方が地味というわけでもない。特にアルテミスSでは中団から流れに乗って直線で外に出されると、持ち味の末脚が爆発。上がり3ハロンのタイムはメンバー最速となる33秒5の切れ味を見せていた。

    ここまでの戦績や生い立ちなどを考えれば、2歳女王決定戦である阪神JFでは1番人気はともかく、上位人気に支持されるのは間違いないと思っていた。

     ところが、阪神JFでのサークルオブライフの最終単勝オッズは5.6倍の3番人気。デビュー以来、最も配当が低いオッズとなったが、それでも1番人気に支持されることはなかった。

    ちなみにサークルオブライフよりも人気を集めたのは赤松賞を制して2戦2勝でここに臨んだナミュールが単勝2.9倍の1番人気、続く2番人気は牡馬相手のサウジアラビアRCで惜しい2着に敗れたステルナーティアが4.9倍という支持を受けていた。

     重賞を勝って臨んだ自分よりも、重賞で敗れた馬、ましてや重賞未出走の馬の方が人気を集めている――

    そんな事実に発奮しないわけがないだろう。レース当日、ややもすればイレ込み気味にも映ったパドックでの所作がサークルオブライフの闘志を表しているように思う。

     そうして迎えたレースでは、1番人気に支持されたナミュールがまさかの出遅れという波乱を予感させる幕開けに。

    人気馬が出負けした中でトーホウラビアン、ウォーターナビレラ、ダークペイジらがハナを争うという展開に。先行勢が淀みない流れを形成したため、前半3ハロンのタイムは34秒1と過去10年で2番目に速いものとなった。

     この流れの中、サークルオブライフはと言うと中団から後方の位置に。スタートは出たなりで流れに乗り、前を行く馬たちに進路をふさがれないように外へと進路を取る様子はまさに強い馬のレースそのもの。女王にふさわしい振る舞いを見せて、最後の直線を待った。

    そうして迎えた直線、ここまでレースを引っ張ってきたトーホウラビアンらを振り払うようにしてウォーターナビレラが先頭に立つと、外から猛然とサークルオブライフが迫る。

    残り200mの時点でサークルオブライフが先頭に立つと、後は粘りこむウォーターナビレラ、内から伸びたラブリイユアアイズらの追撃を振り切るかのようにしてゴール。生産した千代田牧場としては2002年の阪神JFをピースオブワールドが制して以来、19年ぶりとなるGI制覇を果たした。

    勝ち時計は1分33秒8と昨年ほどの速さではないが、それでも過去10年で3番目に速い好記録を叩き出し、サークルオブライフは2歳女王の座に君臨した。

    「とても嬉しかった。弟(クリスチャン・デムーロ)にも勝てた」と、開口一番にこう語ったのはサークルオブライフの鞍上を務めたミルコ・デムーロ。

    重賞勝ちを収めたパートナーに騎乗している自分よりも、特別戦を勝ったばかりの馬(ナミュール)とタッグを組んだ弟の方が人気になったことには兄としてさぞかし納得がいかなかったことだろう。

    デビュー戦から乗っているからこそ、手に取るようにわかる愛馬の成長ぶりを称え、「来年へのクラシックが楽しみ」とさらなる期待をサークルオブライフへ向けていたのが印象的だった。

    走れども走れども人気にならなかった不遇の時代を乗り越え、2歳女王へと君臨したサークルオブライフ。来年の春、おそらく1番人気で迎えるであろう桜花賞戦線のレースにおいて、彼女はどんな走りを見せるのか、今から楽しみでならない。

    近年のトレンドである「強い牝馬」の系譜を継ぐことになったサークルオブライフ。来春からはクラシックの主役の座を担い、ゆくゆくは日本競馬界の未来を背負って立つ馬になることは間違いないだろう。

    思えば2年前、単なる白毛馬の1頭というだけだったソダシは、このレースを制した後に一気にアイドルホースとしての地位を確立。翌春の桜花賞を制するまでベールに積まれていた彼女の私生活ぶりが明らかになり、その人気にますます火がついてしまった。

    2歳牝馬戦線において突如として現れたトップホース・サークルオブライフ。今後の一挙手一投足にはぜひとも注目しておきたいところだ。


    ■文/福嶌弘