【会見全文】羽生結弦にとっての『挑戦』とは何か【五輪フィギュア】

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2022.2.15

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    羽生結弦 Photo by Fred Lee/Getty Images

    北京オリンピックフィギュアスケート男子シングル4位入賞の羽生結弦(27=ANA)が14日、記者会見を行った。

    会見についてJOCは「本会見はメディア各社からの個別取材申請が多く、個別に対応することが困難なため記者会見形式で実施するものとなり、羽生選手からの発表会見ではございません」と説明していた。

    【動画】北京オリンピック フィギュアスケート男子『羽生結弦』記者会見


    羽生結弦 記者会見(全文)

    まず、金メダルを獲得したネイサン・チェン選手(22=米国)は本当に素晴らしい演技だったと思います。

    オリンピックでの金メダルは本当にすごいことなんです。僕もオリンピックの金メダルを目指してずっと頑張ってきましたし、その為にたくさんネイサン選手も努力したんだと思います。彼には4年前の悔しさがあって、それを克服した今があって、本当に素晴らしいことだと思っています。

    そしてこの大会の関係者の方々、ボランティアの方々にも感謝を申し上げたいです。ショートプログラムの時に氷に引っかかってしまって不運なミスだなと悔しかった部分ももちろんあります。

    けれど、本当に滑りやすくて跳びやすくて気持ちの良い会場で気持ちの良いリンクでした。この場を借りて感謝したいと思います。ありがとうございました。

    ーフリー終了後から今日までリンクから離れていた数日間の気持ちの変化は

    もちろん色々なことを考えました。自分が4回転半に挑んだこと、成功しきれなかったこと、今まで頑張ってきた道程やその価値などです。

    だけどやっぱり足首が痛いのがあって、今日の練習ではあまりジャンプをやってはいけないと思っていたんですが。痛み止めも許容量以上のかなり強いものを飲んでいますが、それでもここで滑りたいなと思って今日滑らせてもらいました。

    この3日間、オリンピックのことについても今までのことについても考えていた中で、僕は本当に色々な人に支えられているんだなということを感じました。

    この足首に関してもまだ歩くのでさえも痛いですが、今回最大限の治療をして下さって、食事の栄養面でもケアして頂いたりたくさん支えて頂いているので、それにもっと感謝したいなと思わされた3日間でした。

    ーフリーの演技を終えた直後の気持ちは

    実際に会場に足を運んでくださった方々がいらっしゃって、自分の演技自体が勝敗としてはベストなものではなかったのですが、それでも「残念だった」という雰囲気に包まれずにすごく大きな拍手を頂いてそれに感謝したいと思いました。

    あと、きっとこのカメラ越しの向こうでは地元や被災地の方々含めてたくさんの人が応援して下さっていて、オリンピックなので日本だけではなくて色々な国々の方々が見て下さっていると思い感謝を込めたいなと思いました。

    (演技終わりは)いつも氷に挨拶をするんですが、このメインリンクで演技するのは最後だなと思いちょっと苦しかった部分もあったんですが、「やっぱりこの氷が好きだな」と思って感謝していました。

    ー今後の4回転半への挑戦について

    まだ自分の中でまとまってはいないです。

    ただ今言えることとして、これを言うことが正しいかどうかは分からないし言い訳くさくなって色々言われるのも嫌だなというか。平昌オリンピックの時もそうでしたが、何か言ったら絶対に嫌われるというか(笑)。何かしら言われるという怖い気持ちももちろんあるんですが、事実なので。

    前日の練習で足を痛めて、4回転半で片足で降りにいった時に捻挫しました。

    その捻挫の程度も思ったよりも酷くて、普通の試合だったら完全に棄権していたと思います。今も安静にしていないといけない期間で、ドクターからは10日は絶対安静と言われている位悪くて、フリー当日の朝の公式練習ではあまりにも痛かったのでどうしようかなと思ったんですが、その後6分間練習の直前に注射を打ってもらって出場することを決めました。

    でも、その注射であったり自分自身が怪我で追い込まれてショートで悔しくて、と色々な気持ちが渦巻いた結果としてアドレナリンが出て自分の中でも最高のアクセルができたと思っています。

    僕は4回転半を習得するにあたって色々な技術を学んで自分のアクセルに繋げようと思ったんですが、やっぱり自分自身のジャンプは曲げたくないというか「あのジャンプだからこそ綺麗だ」と言ってもらえるし、僕はあのジャンプしかできないです。だから絶対に思い切り跳んで、思い切り高いアクセルということを追求しました。

    そのジャンプとしての最高点には僕は辿り着けたと思っていますし、回転の判定も色々ありますが、僕の中では納得しています。満足した4回転半だったと思っています。

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    ーフリーから4日経って今日滑ろうと思った理由は

    本当は滑ってはいけない期間だったのですが、どうしても滑りたいと思って滑らせてもらいました。これからちょっと練習すると思います。

    スケートのことを嫌いになることはたくさんありますし、フィギュアスケートって何だろうとよく思います。僕自身が目指しているものがフィギュアスケートなのかも考えます。

    ただ、今日滑って今まで小さい頃に習ってきたことをやってみて、上手くなったなと思ったりそれを見て頂くことが気持ち良かったり、僕は僕のフィギュアスケートが好きだなと思えた練習でした。

    またここから練習していくと色んな感情が湧いてくるかもしれないですが、靴から感じる氷の感触を大切にしながら滑りたいなと今は思っています。

    ー被災者の方々にたくさんの力を与えていることについて

    色々な方々から「良かった」という声を頂いて僕は幸せです。僕は皆さんの為に滑っているところもありますし、もちろん僕自身の為に滑っていることもあります。

    色々な気持ちの中でフィギュアスケートと向き合っていますが、何かをきっかけにして皆んなが一つになるということがどれだけ素晴らしいことかということを、あの東日本大震災から学んだ気がしています。もちろん辛い犠牲の中でのことですが。

    僕の演技が皆さんの心が一つになるきっかけに少しでもなっていたら僕は幸せ者だなと思いますし、それが災害など何かを犠牲にすることではない幸せな方向でのきっかけだったらとても嬉しいなと思います。

    こんなに応援して頂けて光栄だなと思うのと同時に、皆さんも自分を応援することで幸せになって頂けていたら嬉しいなと思っています。

    ー羽生選手にとって「挑戦」とは何か

    僕だけが特別だとは思っていなくて、皆んな生活の中で何かしら挑戦しているんだと思います。それが大きかったり、目に見えることだったり、報道されることだったり。それだけの違いだと思っていて、それが生きるということだと僕は思っています。

    守ることだって挑戦だと思います。大変なんですよ、守るって。家族を守ることだって大変だと思います。何かしらの犠牲や時間が必要だったりしますし。

    だから何一つ挑戦じゃないことなんて存在してないんじゃないかな。それが僕にとって4回転アクセルでこのオリンピックに繋がっていて、ただそれだけだったかなと。

    僕も挑戦をすごく大事にしてここまで来ましたが、皆さんもちょっとでもいいから「自分は挑戦していたんだな」と自分のことを認められるきっかけになっていたら嬉しいなと思います。

    ーオリンピックでの演技を振り返って満足度は

    ショートプログラムはすごく満足しています。ショートは最初のジャンプでミスをしてしまったり転倒しないにしても氷に嫌われてガコッとなってしまうことはたまにあることなんです。その中でも崩れずに自分が表現したいことプラス、良いジャンプを跳べたという点ではすごく満足しているショートプログラムでした。

    フリープログラムはもちろんサルコージャンプをミスしてしまったことは悔しいですし、アクセルもできれば降りたかったと正直思いますが、なんか上杉謙信というか。

    自分が目指していた「天と地と」という物語、自分の生き様に相応しい演技だったんじゃないかなと思うんです。得点は伸びないですが、僕はあのフリープログラムをプログラムとして満足しています。

    ーこれからのモチベーションは何か

    正直な話、今まで4回転アクセルを跳びたいと言ってきて目指していた理由は、僕の心の中に9歳の自分がいて、あいつが「跳べ」ってずっと言っていたんですよ。

    「お前下手くそだな」って言われながらずっと練習していて、でも今回のアクセルは褒めてもらえたんですよね。一緒に跳んだというか。

    実は9歳の時と同じフォームなんです。ちょっと大きくなっただけで。だから一緒に跳んだんですよね。それが自分らしいなと思ったし、何よりも4回転アクセルを探していた時に最終的に技術的に辿り着いたのがあの時のアクセルだったんですね。

    ずっと壁を登りたいと思って色々な方々に手を差し伸べてもらって登って来られたと思っていたんですけど、最後に壁の上で手を伸ばしていたのは9歳の俺自身だったなと思って。

    最後にそいつの手を取って一緒に登ったなという感触があって、そういう意味では羽生結弦のアクセルとしてはこれだったんだと納得できているんです。

    だからそれがモチベーションとしてこれからどうなるのかはまだ分からないんですが、今の気持ちとしてはあれが転倒だったとしても、いつか見返した時に「羽生結弦のアクセルは軸が細くてジャンプが高くて綺麗だね」と思える、誇れるアクセルだったと思っています。

    ー北京オリンピックが最後のオリンピックなのか

    このオリンピックが最後かと聞かれたらちょっと分からないです。

    やっぱりオリンピックは特別だなと思いましたし、何より怪我してても立ち上がって挑戦するべき舞台はフィギュアスケーターとしては他にないので、すごく幸せになっていてまた滑ってみたいなという気持ちはもちろんあります。

    あとは2万件ものメッセージや手紙を頂いたり、今回は中国のボランティアやファンの方々が歓迎して下さっているのをすごく感じていて、そういう中で演技するのは幸せだなと感じながら今回は滑りました。

    そんなスケーターは簡単にはいないよなと思いますし、羽生結弦で良かったなと思いました。

    ー自分の中のゴールは何か

    4回転半を降りたいという気持ちは少なからずあって、それと共に自分のプログラムを完成させたいなという気持ちはあります。

    ただ先ほど言ったように自分のアクセルは完成しちゃったんじゃないかなと思う自分もいるので、これから先フィギュアスケートをやっていくとして、どういう演技を目指したいかとかどういう風に皆さんにみてもらいたいかとか色々なことを今考えています。

    まだ次のオリンピックとかどこでやるのかなど把握できていない自分がいますし、正直混乱しているんですが、これからも羽生結弦として大好きなフィギュアスケートを大切にしながら極めていけたらいいなと思っています。

    ー8年間「五輪王者」を背負い続けてそれが無くなった今、どんな感情が湧いているのか

    とても重かったし、重かったからこそ自分が目指している4回転アクセルを常に探求できたなと思っています。

    きっとまずソチオリンピック(2014年)で優勝していなかったら報道の数も違ったと思いますし、あれが羽生結弦というスケーターがいるんだと注目してもらえるきっかけにもなったし、そこから応援してくださる方もたくさんいたと思います。

    そして平昌オリンピック(2018年)で「やっぱ羽生上手いじゃん」と思ってくださる方もたくさんいらっしゃって、だからこそ今があるんだと思っています。

    だから、「3連覇」は消えてしまったしその重圧からは解放されたかもしれないですが、ソチオリンピックが終わった時に言っていたことと同じで僕はやっぱりオリンピック王者だし2連覇した人間だし、それは誇りを持って胸を張ってこれからも過ごしていきたいなと思っています。