【フェブラリーS】カフェファラオ『屈辱の』2番人気に叩きつけたレースレコードV

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2022.2.21

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    2022フェブラリーステークスでカフェファラオが連覇 写真:東京スポーツ/アフロ

    「何で、俺が1番人気じゃないんだ!?」――

    パドックでのカフェファラオの様子は、どことなく機嫌が悪く見えた。

    生涯最高体重となる526キロの馬体の張りは素晴らしく、仕上がりの良さが一目でわかるデキに仕上がっているのだが......

    このところのパドックの様子と比べると、どうもせわしないしぐさが目に付いた。

     その理由をカフェファラオ自身に尋ねるのはさすがにムチャな話だが、どこか苛ついたように見えたしぐさの理由には「ダート王として、信頼されていないことへの不満」があったのではないか。

     思い返せば1年前のこの舞台、カフェファラオは1番人気に支持されてフェブラリーSを制してダート界の頂点に立った。

    ほとんどの先行馬が馬群に飲まれる流れになったが、カフェファラオは3番手を追走しながら粘りこんだ上で、このレースでは史上2番目に速い記録を叩き出すという完勝ぶりを見せた。

    東京ダート1600mはこの時の勝利も加えて3戦3勝とした得意舞台とはいえ、実力馬たちを相手に有無を言わさぬ強さを見せつけたことで、4歳になったばかりの彼が今後のダート界を背負って立つ存在になるかと思われた。

    しかし、その後のカフェファラオはというと、ダントツ人気を集めたかしわ記念で5着に敗れて早速ファンの期待を裏切ると、芝に活路を求めて挑んだ函館記念でも9着に惨敗。

    復権を狙ったチャンピオンズCでは自己最低人気の4番人気に留まり、レースでは見せ場ひとつも作れないまま、これまた生涯最低着順の11着に終わった。

    そして2022年の年明け早々に発表された2021年のJRA賞最優秀ダート馬のタイトルもテーオーケインズが296票中240票を集めて受賞した一方、カフェファラオはたった8票しか得られずに落選。

    ダート王としての彼の時代は終わりを告げたかと思われた。

     そうして迎えた今年のフェブラリーSはチャンピオンズCを勝ったテーオーケインズ、BCディスタフを制したマルシュロレーヌともに不在で迎えた一戦に。

    ならば、連覇を目指すこの馬が当然人気を集めるかと思われたが、出走馬がパドックに姿を見せた15時の時点で、単勝オッズ3.9倍の1番人気に推されたのはレッドルゼル。カフェファラオは5.1倍の2番人気に甘んじていた。

     東京ダート1600mでは3戦無敗という相性の良さを誇り、湿った馬場での時計勝負にも対応可能。

    調教もこれまで以上に動いているし、馬具もブリンカーから昨年このレースを制したときと同様にチークピーシーズに戻すなど、プラスの要素はたくさんあったはずだが、ここまでの3戦すべてとも見せ場がない惨敗続きという過程を不安視されて結局、人気面でレッドルゼルを逆転することはないままレースを迎えることになった。

     今思えば、これがカフェファラオの闘志に火をつけたのかもしれない。

    その良血ぶりやインパクトのあるレース運びで常に人気を集めていた彼にとって、得意舞台の東京ダート1600mのレースでの2番人気は屈辱以外の何物でもなかった。ならばレースで見せてやると普段以上に燃えたことだろう。

     フェブラリーSのゲートが開いた直後、カフェファラオは芝コースも苦にせず位置を取りに動き、4~5番手を追走。

    前をテイエムサウスダンとソダシが引っ張り、すぐ後ろにはアルクトスにレッドルゼルがいるという位置取りだったが、表情を見ると、誰がどこにいようが関係ないと言わんばかり。3コーナーを過ぎるあたりで仕掛け始めて、前を捕まえに行った。

     その姿は「ここでの勝ち方は知ってるんで」と、言わんばかりのもの。鞍上の指示に従って動くというよりも、カフェファラオ自身が自ら勝負所を理解して動いているかのように見えた。

     迎えた直線。前を行くテイエムサウスダンとソダシが粘りこみを図る中、外からカフェファラオが迫ってくる。

    なんとか踏ん張ろうとする2頭と比べると明らかに違う脚色で突き抜ける姿はまさにダート王の走りそのもの。

    交わされた後も必死に追いすがる2頭に、必死で追いかけるアルクトス、レッドルゼルらを置き去りにして、気が付けば2着に食い込んだテイエムサウスダンを2馬身半も離してゴールしていた。

    勝ち時計の1分33秒8は自身が昨年記録したものよりもはるかに速く、従来のレースレコードを0.2秒も更新した。しかも最後は鞍上の福永祐一はカフェファラオを追っていなかったのだから、恐れ入る。

    「とにかく気分を損ねないように走ることを意識した」と、レース後に福永が語ったように、この馬にとって大切なのは距離や馬場ではなく、レースに対する気持ち。集中すればトコトン強いレースを見せてくれるが、一方で気分を損ねると一切走らなくなるという難しさを秘めている。

    史上2頭目となるフェブラリーS連覇を果たし、晴れてダート王の座に戻ってきたカフェファラオだが、気になるのはこの後。各地で行われるダートGIで活躍しその座を盤石のものとするか、あるいは昨年と同じ轍を踏むか......その危うさをも魅力に感じる彼の今後に注目したい。


    ■文/福嶌弘