【高松宮記念 みどころ】速さという『天賦の才』を生かすのは誰だ

レシステンシア 写真:山根英一/アフロ
短距離王の座はとかく短くなりがち。思えば昨年のこのレースの勝ち馬ダノンスマッシュは現役を去り、秋のスプリンターズSを制したピクシーナイトは暮れの香港スプリントでアクシデントの末に故障。春の短距離王決定戦であるこのレースに挑むことはできなかった。
今年も高松宮記念は、絶対的な王者が不在のまま迎える一戦。それゆえに出走する全18頭にチャンスがあるように思えるが... 今年は2歳時から一線級で活躍してきた馬たちが目立つ印象。
2歳時に重賞を勝っていた馬ともなれば出走馬のおよそ3分の1を占めるほどだ。
スタミナや持久力は調教などの後天性の要素があるが、純粋なスピードに関しては先天的な要素が大きい。
生まれながらにして高いスピード能力を誇ったからこそ、短距離戦の多い2歳戦線で活躍を収めることができたのだろう。そして成長とともにビッグタイトルを積み上げたものもいれば、伸び悩みくすぶったものもいる。
思えば、2歳で重賞を制した馬が古馬になって復活を果たし、GIタイトルをもぎ取ったというケースを振り返ると、その舞台はマイル以下の短距離戦であることが多い。
そして、高松宮記念はそうしたシチュエーションが起きやすいレースでもある。
例えば2000年の勝ち馬、キングヘイロー。
東京スポーツ杯3歳S(当時)を制してクラシック戦線に乗った超良血馬が念願のGI初制覇を果たしたのはこの舞台だったし、5年後の高松宮記念を制したアドマイヤマックスもデビュー当時はクラシック候補生と称された素質馬だった。
近年こそ、純然たるスプリンターが勝ち切ることが多いが、高松宮記念にはそうした「かつての素質馬たちがもう一度輝ける舞台」という側面もある。絶対的な王を欠いた今年はそんなかつての素質馬たちが再び輝いてもおかしくない。
そうなると、今年の高松宮記念は3年前の2歳女王レシステンシアにとって、おあつらえ向きの舞台となるのだろうか。
デビュー当時から、生まれ持っていた有り余るほどのスピードを生かしたレースで先行し、後続を突き放してきた彼女。
2歳女王を決める阪神JFでもそのスピードはいかんなく発揮され、2着馬に5馬身差をつける圧勝を飾った上で時計は1分32秒7。あのウオッカが記録した2歳レコードを上回る大記録を樹立。圧倒的な天賦の才を武器に2歳女王の座に就いた。
しかし、そのスピードは3歳になった彼女には思わぬ足かせになってしまった。女王として迎えた3歳緒戦のチューリップ賞は他馬による徹底マークに遭って初黒星となる3着。
意地を見せたい桜花賞では2番手追走からリベンジを試みるも、新女王・デアリングタクトに抵抗できぬまま2着......という具合にあと一歩のところでタイトルを逃し続けた。
その結果、3歳以降の彼女の成績は[2・5・1・2]。5回の2着はすべてGIでのもので、勝った2戦はいずれもGI前のプレップレース。スピード自体は健在ながら、GI制覇となるとあと一歩届かないという歯がゆいレースを繰り返してきた。
昨年とは同じ轍を踏まないとばかりに、今年のレシステンシアは前哨戦となるレースを使わずに、ぶっつけ本番で挑む。3ヵ月以上の休み明けでGIに挑むのは3歳時のマイルCS(4人気8着)以来となるが、4歳以降に限れば2戦無敗。
レース前に気持ちの入りやすいこの馬の性格を考えれば合っているのかもしれない。そして鞍上には今、最も期待できる若手騎手のひとり、横山武史を迎えた。人馬ともフレッシュな状態で臨むかつての2歳女王の復活はあるのだろうか。
否、「復活」というフレーズが彼女以上に似合うのは同じ年の2歳王者、サリオスだろう。
この世代で最初の新馬戦を制して一番星となった若駒は暮れの2歳王者決定戦、朝日杯FSでも余裕のある勝ちっぷりを見せてGI初制覇。500キロを優に超える馬体から繰り出す重戦車のような走りからは明るい未来しか見えなかった。
しかし、この馬もまた3歳以降に伸び悩んだ。春のクラシックは最大のライバルと言えるコントレイルの前に敗れてともに2着。秋緒戦の毎日王冠を制し、いざGI戦線へと繰り出すも以降はまさかの5連敗。4歳になると掲示板にすら入るのもままならないほどだった。
レース振りからは決して衰えが見られたわけではないが、ここまで結果が出ないと人馬ともに気持ちが折れてしまうが、この馬は違った。4歳暮れに挑んだ香港マイルでは復活の兆しとも言える3着に食い込み、毎日王冠以来となる馬券圏内入りを果たした。
そこから挑む5歳緒戦は自身初のスプリントレース。
1200m独特のテンのダッシュ力争いについていけるかがカギになるが、鞍上には2歳の頃のサリオスを知る石橋脩が帰ってきた。届きそうで届かなかった2歳以来のGiの頂にもう一度たどり着いて見せる。
明け4歳世代となるグレナディアガーズもまた、2歳時にGIを制した元王者である。
未勝利戦を勝ったばかりで迎えた朝日杯FSは7番人気での勝利だっただけにどこかフロックの気も感じられ、絶対的な王者として見られなかった彼。
それだけに3歳時はその実力を誇示しなければならなかったが、NHKマイルC3着をはじめ、惜敗続きのまま春シーズンは終了。古馬を相手に迎えたマイルCSでは自己ワーストとなる13着に大敗し、早熟馬として見られるようになった。
そうして迎えた年内最後の一戦である阪神C。得意コースでの一戦だというのに、近走の成績を理由に3番人気にとどまったが、これが彼を発奮させた。
スタートこそ出遅れたものの、中団からギアを入れて追い込むと、上り3ハロン34秒0の脚を見せて快勝。1年ぶりの勝利の美酒に酔いしれた。
1400m以下のレースはこれで[2・2・0・0]としたグレナディアガーズ。名種牡馬フランケルの血に賭けても、スピード勝負となるここでは負けられない。
他にも2歳戦で活躍した馬ならばメイケイエールにジャンダルムといった面々も虎視眈々と春のスプリント王のタイトルを狙っている。速さという天賦の才を備えた馬たちによる極上のスピード対決を今年もまた、楽しみにしたい。
■文/福嶌弘

■第52回高松宮記念(GI)枠順
3月27日(日)2回中京6日 発走時刻:15時40分
枠順 馬名(性齢 騎手)
1-1 サリオス(牡5 石橋脩)
1-2 ナランフレグ(牡6 丸田恭介)
2-3 シャインガーネット(牝5 田辺裕信)
2-4 ライトオンキュー(牡7 横山典弘)
3-5 レイハリア(牝4 亀田温心)
3-6 サンライズオネスト(牡5 武豊)
4-7 レシステンシア(牝5 横山武史)
4-8 ジャンダルム(牡7 荻野極)
5-9 ロータスランド(牝5 岩田望来)
5-10 キルロード(せん7 菊沢一樹)
6-11 クリノガウディー(牡6 松岡正海)
6-12 エイティーンガール(牝6 秋山真一郎)
7-13 トゥラヴェスーラ(牡7 鮫島克駿)
7-14 ダイアトニック(牡7 岩田康誠)
7-15 ファストフォース(牡6 柴山雄一)
8-16 ダイメイフジ(牡8 小沢大仁)
8-17 メイケイエール(牝4 池添謙一)
8-18 グレナディアガーズ(牡4 福永祐一)