【高松宮記念】ナランフレグGI初勝利!直線一気を貫いた人馬にだけ見えた、1本の道
2022.3.27
2022 高松宮記念(GI)ナランフレグが優勝 写真:スポニチ/アフロ
「ああっ、また届かない!」―― ナランフレグのレースを見ていると、こうした感想を抱く方が多いだろう。
父ゴールドアリュール、母父ブライアンズタイムというまるでダート馬のような血統構成を持つものの、芝の短距離戦でキレキレの末脚を見せる彼。
4歳5月に走った韋駄天S以降の14戦中、上がり3ハロンの時計でメンバー最速を叩き出したのは実に10回。しかも残り4戦も3位以内を外していないというのだから、その末脚は相当な切れ味を秘めていることが分かる。
それなのに、ナランフレグは勝ち切れなかった。その14戦の成績はというと[1・4・1・8]。勝ったのは昨年暮れのタンザナイトSだけで、掲示板すら外したのは実に6回。これではいくら末脚が切れても、意味がないように映る。
この14戦で5番手より前でレースをしたことは一度もなく、後方から末脚の切れに賭けるしかないという不器用すぎるほど不器用なレーススタイルがナランフレグの個性を際立たせていたが、これが勝ち星から遠ざかる要因ともなっていた。
6歳になった今年、年明け早々のシルクロードSでも4角15番手から猛然と追い込んで、勝ち馬メイケイエールに0.2秒差及ばない3着。
そしてオーシャンSでは4角13番手から上がり3ハロン33秒5という脚を繰り出して勝ったジャンダルムに0.1差にまで迫っての2着と重賞でもコンスタントに走るようになったが、やはりアタマまでは届かない。ナランフレグが歯がゆいレースを繰り返すたび、冒頭のように地団駄を踏むファンがいたことだろう。
だからだろうか、高松宮記念でのナランフレグの人気は18頭中8番人気という低評価。前日まで雨が降り、馬場が重くなったことで内枠が有利になったという馬場コンディションを考えても特に注目されることがなかった。
今年の高松宮記念の戦前の下馬評は昨年の2着馬であるレシステンシア、シルクロードSで復活勝利を果たしたメイケイエール、そして阪神Cを勝ってきたグレナディアガーズという2歳戦から活躍してきた3頭による争いというもの。
これに続く4番人気でさえ、3年前の2歳王者であるサリオスだったのだから、6歳にして重賞未勝利のナランフレグは全くと言っていいほど注目されず、前走比マイナス12キロと発表されたパドックで「ここ2走がプラス体重だったので、絞ってきた」と解説者に評されただけ。
鞍上の丸田恭介が騎乗しても、本場馬へ入場しても特に目立つことなく、ナランフレグはレースの瞬間だけをただひたすらに待っていた。
そうして迎えたレースはというと、1番人気に支持されたレシステンシアが好スタートを決めてそれにレイハリアやジャンダルムらがマークしていくという流れに。
ナランフレグは出遅れこそしなかったものの、3角を過ぎたころの位置取りは18頭中15番手と例のごとく後方待機。そしてここからナランフレグの鞍上・丸田恭介はインを突いた。
ただでさえ道悪馬場で外が伸びない中、わざわざ外へ進路を取るのは意味がないと考えたか、内へ進路を取ろうとしたナランフレグ。
前方にはレシステンシアがインコースにピタリと張り付いていてとても開くようには思えなかったが......
コーナーワークで前を行く馬が少しだけ外に膨らんだことで1頭分だけ、インコースが開いた。ここを怯むことなく突いたことで、ナランフレグはグングンと伸びた。
いつものように大勢が決した後に飛んでくるのではなく、ジワジワながら1頭ずつ確実にとらえて前に行ったナランフレグ。気が付けば残り50m、外でロータスランドとキルロードが叩き合っているのを尻目に内側から抜け出してゴール。
この勝利はナランフレグのGI初制覇だけではなく、鞍上の丸田恭介、そして調教師の宗像義忠にとっても初めてのGIタイトルだった。
今思えば、ナランフレグが直線でインコースを突いた時点で勝負が決まっていたのかもしれない。前走のオーシャンSのように、後方からレースを進めて直線では馬群にもまれるのを避けるために誰もいない外へ回して猛然と追い込むのが彼のいつもの姿だったが、今回ばかりは積極的にインを突いた。
例え前を行く馬たちに進路を阻まれてしまうリスクがあっても、ゴールまでの最短距離であり、なおかつもっとも状態がいいコースを求めて選んだ人馬の決断が今回の勝利に結びついた。
ロータスランドとキルロードの5枠2頭にトゥラヴェスーラが懸命に叩き合っていた残り50mのところで、ナランフレグがひょっこりと顔を出すように先頭に立てたのはそうした人馬の決断の賜物と言っていい。
「最後、直線(の進路)が開いて抜け出た時は本当にうれしかった」と、勝利騎手インタビューで涙ながらに答えた丸田恭介の様子を見ると、もしかするとあの時、彼とナランフレグにしか見えない道があったのかもしれない。
不器用なまでに後方からの末脚勝負にこだわった人馬が直線で見つけた1本の道は多くの人を感動させる結果を生み出した。
そして、その道の先は今後、どんな未来が待っているのだろうか......。
■文/福嶌弘
■第52回高松宮記念(GI)着順
3月27日(日)2回中京6日 発走時刻:15時40分
着順 馬名(性齢 騎手)人気
1着 ナランフレグ(牡6 丸田恭介)8
2着 ロータスランド(牝5 岩田望来)5
3着 キルロード(せん7 菊沢一樹)17
4着 トゥラヴェスーラ(牡7 鮫島克駿)7
5着 メイケイエール(牝4 池添謙一)2
6着 レシステンシア(牝5 横山武史)1
7着 シャインガーネット(牝5 田辺裕信)9
8着 エイティーンガール(牝6 秋山真一郎)15
9着 サンライズオネスト(牡5 武豊)11
9着 ファストフォース(牡6 柴山雄一)16
11着 ジャンダルム(牡7 荻野極)13
12着 グレナディアガーズ(牡4 福永祐一)3
13着 ライトオンキュー(牡7 横山典弘)14
14着 ダイアトニック(牡7 岩田康誠)6
15着 サリオス(牡5 石橋脩)4
16着 クリノガウディー(牡6 松岡正海)12
17着 レイハリア(牝4 亀田温心)10
18着 ダイメイフジ(牡8 小沢大仁)18
※結果・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。