【凱旋門賞 みどころ】パリの灯を目指す、4頭のサムライたち

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2022.10.2


2022 宝塚記念(GI)タイトルホルダーが優勝

 日本のホースマンたちがパリの灯を目指す季節が、今年もまたやってきた。世界最高峰のレース、凱旋門賞のスタートがもう間もなくに迫ってきた。

 凱旋門賞は第一世界大戦によって休止を余儀なくされたフランス競馬の復興のシンボルとして1920年に創設され、回を経るごとに欧州各地どころか、世界各国からトップホースが集まり、いつしか世界最高峰のレースと称されるようになった。

100年を超える歴史の中にはシーバード、ミルリーフ、ダンシングブレーヴ、ラムタラといったスーパーホースが勝ち馬として並び、近年でもトレヴ、エネイブルといった名牝たちがその歴史に名を刻んでいる。

 日本馬たちの挑戦は1969年にスピードシンボリを皮切りに昨年までの52年で延べ29頭がパリの灯を目指してきたが......日本では経験できないような道悪の馬場や欧州特有の深い芝に苦しみ、4度の2着があるだけでいまだに勝利には手が届いていない。

 そんな難攻不落とも言える凱旋門賞に、今年も日本馬たちが挑む。それも歴代最多となる4頭が海を渡り、ロンシャンの地で走ることになった。

 そんなチーム・ジャパンの代表格はやはり、タイトルホルダーだろうか。

 昨年の菊花賞を制したことで自信が付いたのか、4歳になった今年は日経賞から始動して、天皇賞(春)、宝塚記念と古馬中長距離のGⅠを堂々の2連勝。

3200mの長丁場である天皇賞(春)は外枠からでも怯まずに積極的にハナを奪って流れを作り、後半には自ら厳しいペースを作って、直線で独走。2着のディープボンドに7馬身もの差をつけて圧勝してみせた。

 返す刀で臨んだ春のグランプリ、宝塚記念は逃げを主張したパンサラッサに前を行かせて2番手に付けるというソツのないレース運びを見せ、直線ではまたも早めに抜け出して押し切って勝利した。

スピードの持久力に加え無尽蔵のスタミナを併せ持ち、ロンシャンの馬場を制するために求められるものをすべて備えていると言えるタイトルホルダー。走るたびに様々な記録を作ってきたこの馬が日本競馬界における大記録を成し遂げるかもしれない。

そんなタイトルホルダーに負けじとこの春、まばゆいばかりの輝きを放って見せたのが、ダービー馬ドウデュースだ。

彼を所有するキーファーズの代表、松島正昭の目標は「武豊を鞍上に凱旋門賞を勝つこと」。

そんな大きな目標に向かって走り出した彼は2歳時には武豊が勝てないでいた朝日杯FSを勝利し、3歳になった今年は皐月賞3着をステップにダービーでは直線で猛スパートを見せ、イクイノックスをクビ差凌いで勝利。武豊を史上最多となる6度目のダービージョッキーにした。

そんな今年の3歳世代のヒーローはこの秋、凱旋門賞への挑戦を決断。皐月賞前から登録を済ませるという馬主の並々ならぬ思いとともに他の馬たちよりも一足早くフランスへ旅立ち、現地のプレップレースのひとつであるニエル賞(4着)をステップに臨む。果たして鞍上の武豊とともに日本競馬の悲願を達成するのだろうか。

チーム・ジャパンの4頭のうち、唯一となる2年連続の挑戦者になったのはディープボンドだ。

同じ馬主のコントレイルとともにクラシックに挑み、菊花賞4着などの成績を収めていた同馬が本格化の兆しを見せたのは4歳になった昨年から。

雨の中で行われた阪神大賞典を突き抜けると、続く天皇賞(春)でも2着に健闘。そしてフランス遠征で出走したフォワ賞を勝利したが、本番の凱旋門賞は17着大敗に終わった。

これで燃え尽きてしまう馬も少なくないが、ディープボンドは違った。帰国緒戦となった有馬記念はエフフォーリアに屈したとはいえ2着に食い込み、今年に入ってからも阪神大賞典を連覇、天皇賞(春)2着、宝塚記念4着とGⅠでも上位に顔を出すようになった。スタミナになら自信のある馬だけに昨年の経験を活かせれば、激走してもおかしくない。

凱旋門賞はフランスで行われるため、当然ながら現地での調整が勝敗のカギを握る。環境の変化に弱い馬にとってはこれが命取りとなるが......そんな中で遠征先でも元気いっぱいという馬もいる。その代表格が古豪、ステイフーリッシュである。

今年で7歳、日本国内でのキャリア29戦のうち、勝ち星はわずかに2つ。これだけ見たら実績的に乏しいように思えるが、この馬の強みは父ステイゴールド譲りのスタミナと精神力。日本ではイマイチ勝ち切れなかったということで昨年暮れに香港ヴァーズへ出走すると、世界の強豪相手に5着に健闘した。

これを皮切りに、明け7歳となった今年はサウジアラビアへ遠征し、レッドシーターフHを勝利。3歳春の京都新聞杯以来およそ4年ぶりに勝ち星を挙げると、続いてドバイで行われたドバイゴールドCも連勝。どちらもGⅠではないとはいえ、海外重賞で2連勝を挙げて、抜群の適性を見せた。ベストパートナーとも言えるクリストフ・ルメールを背に、大波乱を巻き起こしても不思議はない。

 そんな4頭の日本馬たちの前に立ちはだかるのが海外の強豪馬たち。今年はアイルランドの名伯楽、エイダン・オブライエンが管理する3歳馬で愛チャンピオンSを制したルクセンブルクをはじめ、GⅠ5連勝で勢いに乗る怪物牝馬アルピニスタ、さらに昨年のこのレースの覇者、トルカータータッソも連覇に向けて順調な仕上がりを見せるなど、一筋縄ではいかないメンバーが揃っている。

日本競馬界の悲願とも言える、凱旋門賞制覇。その願いを託された4頭の走りに注目したい。


■文/福嶌弘