日本代表、W杯メンバー決定前最後のドイツ遠征2連戦が示すもの

サッカー

2022.10.10

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    サッカー日本代表 Photo by ANP via Getty Images

     サッカーワールドカップ(W杯)開幕を2カ月後に控えて、日本代表は大会メンバー決定前最後のドイツ遠征でアメリカ代表とエクアドル代表と強化試合を実施。

    W杯出場国との2連戦を1勝1分で終了したが、結果は快勝と苦戦という色合いの異なる試合となった。チームの方向性に手ごたえを口にする選手も多い一方で、森保一監督が求める選手層の厚みやチームの完成度は図れたのだろうか。

     9月23日にデュッセルドフルで行われたアメリカ戦に日本代表は2-0で勝利。

    いわゆる主力のなかでも最近所属クラブで好調を維持している顔ぶれを先発に揃えて、トップ下で躍動して先制点も獲ったMF鎌田大地選手(フランクフルト)をはじめ、左サイドを中心に攻撃を活性化させた久保建英選手(レアル・ソシエダ)。

    負傷離脱から久しぶりに実戦復帰した酒井宏樹選手(浦和)と冨安健洋選手(アーセナル)も安定した戦いぶりを示した。

     中盤で遠藤航選手とコンビで相手の攻撃の芽を摘んだ守田英正選手(スポルティング)と、前線で果敢に相手へプレッシャーをかけ、チームの守備のスイッチ役になった前田大然選手(セルティック)のプレーは秀逸で、彼らのハードワークがチームの大きな下支えとなり、全体に安定感を与えていた。

     日本は選手同士の距離感も連動した動きも良く、ボールホルダーへのアプローチの良さや攻守の切り替えの速さに、チームとしての戦い方に対する共通認識を感じることができた。加えて、6月までの試合と比較してもプレーの強度が1,2段階上がった印象だ。

     しかも、最近継続していた4-3-3のプレーシステムから以前多用していた4-2-3-1に戻し、なおかつ、試合終盤の1-0リードの場面で最終ラインを4枚から3枚に変えて逃げ切る形もチェックした。

    そのなかで冨安選手は、代表で主流のセンターバックから後半はアーセナルで主戦場の右サイドバックにシフト。終盤の3バックでは右センターバックでプレーする3つのポジションチェンジにもスムーズに対応した。

     チームとしての積み上げを感じさせるプレーを可能にした要因の1つに、今月19日から当地で行ってきた練習とミーティングがあるようだ。

    特にミーティングでドイツなど本大会の対戦相手の分析も始め、戦術面で細部にわたって選手間で意見交換し、認識をすり合わせたと選手たちが異口同音に話している。

     4年前のロシア大会を経験し、今回のアメリカ戦でも試合終盤にクローサーとして登場し、安定感のあるプレーを見せたMF原口元気選手(ウニオン・ベルリン)は「今まで積み上げてきた部分もある。結構はっきりと自分たちがどうするかというのは理解しつつある」と述べてチームの方向性が見えてきたと語った。


    選手の対応を評価

     11月20日に開幕するW杯では、日本は23日の初戦でドイツと対戦し、その後27日にコスタリカ、12月1日にスペインと対戦する。

    グループステージ8組のなかで、優勝経験のあるドイツ、スペインと同組で最もタフと言われているグループだ。

    日本初の8強入り達成のためにも入念な準備が必要なところだが、カタール大会が異例の11月開幕で多くのリーグがシーズン中のため、過去の6月開幕の大会のような直前準備期間を十分にとることができない。そのため、日本にとっては今回のドイツ遠征が大会事前合宿の役割を担っていた。

    本大会と今回では対戦相手は異なるが、「共通していることはたくさんある」(原口選手)として、本大会を念頭にアメリカやエクアドルとの実戦で確認したという。

     森保監督はアメリカ戦後に、「個々の良さを出せる中盤の編成にして、2列目の選手が来てんになって攻撃を仕掛けてくれた」と合格点を出し、後半の選手のポジション変更やシステムの変更についても「戦いの幅を広げる可能性を探るもの」であり、「勝つためのオプション」だったと説明し、手ごたえを覚えている。

    アメリカ戦では後半開始直後に相手が最終ラインを4バックから3バックに変更して反撃を試み、冒頭10分ほどは押し込んだ時間帯もあった。だがほどなくして事態は収拾。森保監督は「選手たちがピッチ内で修正してくれた」と選手の対応を評価した。

    吉田麻也選手(シャルケ04)は、「この時期は内容を固められているかがすごく大事。そこでできた部分が多かったが、なぜできたかを明確にして、それを次のゲームでも意図的に出していけるように、しっかり分析したい。勝っている時こそ、そういうことを詰めて磨き上げ、カタールを迎えられるようにしたい」と話していた。

    選手層アップを図る指揮官の意図

     9月27日に4日前と同様にデュッセルドルフで行われたエクアドル戦では、しかし、チームは全く違う表情を見せた。

     南米予選を4位で突破して本大会に進んだエクアドルはプレー強度も高く、プレッシャーをかけてボールを奪うと、素早くサイドに展開する攻撃で手数をかけずに日本のゴールに迫った。特に中盤での競り合いで優位に試合を進め、日本は対応で後手に回る形になり、前半はチャンスらしいチャンスをほとんど作れなかった。

    試合前に久保建英選手(レアル・ソシエダ)が「単純に速くて強いチームには(6月に敗れた)チュニジア戦のように、苦労する部分もあるかもしれない」と懸念を示していたが、それが現実の形になった。

    背景には、アメリカ戦から先発メンバー全員を入れ替えたことがある。慣れない顔合わせのチーム編成で、攻守に連動できずに相手に後れをとり、苦戦した。

     エクアドル戦後の実戦は、本大会メンバー決定後にドバイで大会直前に行う11月17日のカナダ代表戦だけとなる。限られた実戦機会に、森保監督は選手を固めて完成度に磨きをかけることよりも、選手層の充実を図ることに主眼を置いた。

     「W杯初戦では大会初戦のプレッシャーや相手の力を踏まえると、想像以上の大きなエネルギーが必要で、普段以上の試合をしないと勝点を掴めない。疲弊、疲労した選手を入れ替えても勝っていけるようにしておかなければ、我々が目標としているベスト16の壁を破ることはできない」と説明した。

     つまり、23日の初戦ドイツ戦から中3日で迎える第2戦のコスタリカ戦には、初戦に出た選手の疲労を考慮して、別のチームで戦って勝点を掴めるようにしたいという思惑がある。しかも、コスタリカ戦の勝点は日本の大会生き残りに大きなものとなるのは言うまでもない。

     森保監督は、「誰と組んでも、チームの勝利に機能する。勝つために必要なトライだ。過去6大会で行けなかったところに行こうとしている。(これまでと)同じことをやっていても勝てるとは思わない」と語り、主力をある程度決めて戦った、従来とは異なるアプローチで目標達成を遂げたいという思いを示した。

     それには、自身が率いた東京オリンピックでの経験もある。猛暑の中での連戦にもかかわらず、オーバーエイジを含めて初戦から3位決定戦までの6試合をほぼ同じ顔触れで戦ったが、銅メダルが懸かった最後の試合で選手のコンディションは良いとは言い難かった。

     五輪も経験したキャプテンの吉田選手も大会での怪我人や累積による出場停止もあり得るとして、「メンバーが変わって、やり方がスムーズにいかないことは起こり得る。そういうのをなくさなくてはいけない。誰が出てもパフォーマンスを安定させ、やり方を一貫させる必要がある」と話して、メンバー変更への必要性と理解を示していた。

    選手層のアップとチームの完成度

     とはいえ、選手が互いに活きる組み合わせなのか、チームの核が保たれるかなど、考慮すべき点も少なくない。

    今回のエクアドル戦では、古橋亨梧選手(セルティック)を1トップに南野拓実選手(モナコ)をトップ下、右に堂安律選手(フライブルグ)、左に三笘薫選手(ブライトン)を並べたが、前線の4人の関係性はスムーズとは言い難く、柴崎岳選手(レガネス)と田中碧選手(デュッセルドルフ)のペアによる中盤も効果的には見えなかった。

    目を引いたのが左サイドバックに入った長友佑都選手(F東京)のカバーリングと、相手のPKを含めて何度か好セーブを見せたGKシュミット・ダニエル選手(シントトロイデン)のプレーだ。

     後半冒頭から上田綺世選手(Cブルージュ)、65分過ぎから鎌田選手、相馬勇紀選手(名古屋)、遠藤選手を投入して攻め手が増えた。

    終盤には吉田選手と伊東純也選手(Sランス)を入れて最終ラインを3バック、前線を伊東選手と上田選手の2トップにする変更も施すシフトチェンジも試した。得点は奪えなかったが、無失点で乗り切ることはできた。

    新たな組合わせや布陣を試しながら、苦しみながらも失点しないしぶとさ、粘り強さを見せて、W杯本番なら「勝点1」を獲得する試合はできたと言える。

    吉田選手は「試合の状況を想定したトライもしておきたい」と話していて、その点でエクアドル戦は押し込まれるなかで失点を抑えて勝点1をもぎ取るシミュレーションにはなった。本番を想定して確認するという点ではプラスである。

     森保監督はエクアドル戦後に、「より多くの選手たちを入れ替えながらプレーできるという確認はできた。戦術的な戦い方の幅や選択肢をより多く持つという点では、今日の試合は本大会に向けて非常に大きな試合になった」と述べて、手ごたえを強調した。

    確かに、2チーム分の選手がW杯出場国との実戦を経験することができた。だがその一方で、チームとしての連携や細かな部分の修正など、アメリカ戦から続いて確認し、上積みとする部分は先送りとなった。

    実戦機会が限られるなか、ドイツやスペインという世界屈指の強豪との対戦に向けて、いかにチームとしての完成度を上げるのか。

    アメリカ戦では負傷で途中交代した権田修一選手(清水)に変わって後半から出場し、エクアドル戦にはフル出場したシュミット選手は、「押し込まれる展開でも、こうすれば耐えられるという一つの具体例を表現できた。この2試合でチームの自信はかなり深まったと思う」と語り、こう続けた。

    「この自信を大会前のカナダ戦でもっと完成度を上げたい。そこでどれだけお互いを高めていけるかがすごく大事になってくる」
    鎌田選手はクラブでの活動が鍵になると話す。

    「目の前の試合で良いプレーを続けることが大事。それがコンディションの良さや代表につながってくる。今やっているレベルでしっかり良い結果を残せれば、W杯を考えていなくてもつながってくると思う」

     注目の日本代表のカタールW杯大会メンバーは、11月1日に発表される。


    取材・文:木ノ原 句望