【ジャパンC】世界を照らす一筋の光 ヴェラアズール ~受け継がれた極上の切れ味~

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2022.11.28

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    2022 ジャパンカップ(GI)ヴェラアズールが優勝 写真:アフロ


    第42回ジャパンC回顧

     まるで光が差し込んだようだった。

    眩しいばかりの光に導かれるようにヴェラアズールは父エイシンフラッシュ譲りの漆黒の馬体を輝かせながら、ジャパンCのゴールを先頭で駆け抜けてみせた。

     先月の京都大賞典で重賞初挑戦ながら初制覇を飾った彼にとって、このジャパンCは当然GⅠ初挑戦。その勢いのまま押し切ったように見えるが、その過程は決して平坦なものではなかった。

     ヴェラアズールの母系はトールポピー、アヴェンチュラら3歳のクラシック戦線を沸かせた馬たちを数多く輩出するなど、早期から活躍する馬が多く現れた一族。

    それだけにヴェラアズールも早くからの活躍を期待されたが、デビュー前には骨折、そして骨瘤が出るなど体質の弱さに悩まされ続けた。

     そのため、ヴェラアズールがデビューできたのは同い年の馬たちがクラシック戦線に挑もうとしていた3歳の春。脚元に負担がかからないようにダート戦で走り始め、初勝利を挙げたのはダービーが終わった後の6月。

    2勝目を挙げたのは翌年の1月と、同級生のコントレイルやデアリングタクトがクラシック三冠を制し、眩いばかりの輝きを放っている中、下級条件で喘ぐ彼に光が当たることはなかった。

     そんなヴェラアズールのキャリアが変わり始めたのが、今年の3月。淡路特別を走った時のことだった。

    5歳、キャリア17戦目にして初めて芝のレースを走ることになったが、ここで彼は素晴らしい切れ味を見せて勝利。以降は芝の中長距離戦を狙ってキャリアを重ね、10月には京都大賞典で重賞初挑戦にして初制覇を果たし、このジャパンCに挑んできた。

     外国馬が4頭もエントリーするなど、久しぶりに国際レースらしい一戦となった今年のジャパンCだったが、対する日本馬は1番人気に支持されたシャフリヤールをはじめ3頭のGⅠ馬が出走したが、いずれも前走で馬券圏外に敗れるなど絶対的な存在ではなく少々寂しい顔ぶれに。

    それだけに新しいスターが生まれるのでは?という期待感がファンの中にあったのは間違いない。

     そんな空気の中でヴェラアズールは大観衆が見守るパドックで堂々と闊歩してみせた。5歳馬らしく落ち着いて周回するその姿はとてもGⅠ初挑戦の馬には見えないほど堂々としたもので、外国馬を迎え撃つ日本馬たちの総大将のようにも映った。

     もしかしたら、この時すでに勝負はついていたのかもしれない。

    地下馬道に入った直後からシャフリヤールがチャカ付きはじめ、スタート直前にはドイツのテュネスがゲート入りを手こずるなど、ここまでにGⅠを制してきた馬たちが落ち着かない様子になってきた中でもヴェラアズールは大観衆の前に立っても一切動じることなく返し馬をこなして、ゲートにもスムーズに入った。

     ユニコーンライオンが指定席の先頭に立って逃げると、1000mの通過タイムは1分1秒1とかなりゆったりとした流れに。

    ひと固まりになった馬群の中で1番人気に推されたシャフリヤールは後方に位置して、人気を最後まで争った3歳馬ダノンベルーガはこのペースを見て、中団やや前目に付けるという具合にある程度ポジションを取りに行った。

     この時にヴェラアズールが付けた位置はダノンベルーガとほぼ同じ。しかし、ダノンベルーガが馬群の外側に付けたのに対し、ヴェラアズールは馬群の中。

    距離のロスこそないが前後左右に他の馬がいる状態だったため、直線に入った際に前に行くための進路がふさがれてしまう可能性があるというリスキーな位置取りに見えた。

     そして迎えた直線。先に動いたのは外を突いたダノンベルーガだった。残り400mを過ぎると前を行くユニコーンライオンらを一気に捕まえて先頭に立ち、ハイレベルと称された今年の3歳世代の中心を担った素質馬の片鱗を見せてくれた。

     そのダノンベルーガに食らいついたのが、シャフリヤールだった。

    昨年のダービーを制して世代の王に立った彼は1年前のジャパンCで先輩ダービー馬のコントレイルの前に3着と敗れたが、そのバトンを受け継いだかのような走りで先に抜け出したダノンベルーガ、内から伸びたヴェルトライゼンデをねじ伏せ、日本競馬界を担う真の王者になるために先頭に立った。

     そのシャフリヤールとヴェルトライゼンデの間を割ってきたのが、ヴェラアズールだった。直線を向いた時点ではヴェラアズールの前は先行した馬たちに塞がれた状態で進むべき進路は見つからなかった。

    万事休すかと思われた瞬間、まるで一筋の光が差したかのようにわずかに前が開き、そこにヴェラアズールは臆せず飛び込んだ。

    初タッグを組んだ鞍上、ライアン・ムーアの豪腕に応えるかのようにヴェラアズールは脚を伸ばし、シャフリヤールとヴェルトライゼンデの間を割り、3/4馬身だけ前に出たところがゴールだった。

     ほんの一瞬だけ開いた進路に臆せず飛び込んだムーアの好騎乗とも言えるが、ヴェラアズールのこの時の上がり3ハロンのタイムはメンバー最速となる33秒7。

    芝のレースを走るようになってから毎回上がり最速を記録しているように一瞬の切れ味勝負ならば負けないというこの馬の強さが際立つ一戦となったと言えるだろう。

     レース後、2着に敗れたシャフリヤールを管理する藤原英昭調教師はこんなコメントを残した。

    「エイシンフラッシュに負けた」――22戦目にしてGⅠ初制覇を飾った遅咲きの男の姿はかつて自身が管理したエイシンフラッシュがダービーを制した時とほぼ同じ走り。父が見せた極上の切れ味は12年後、息子が見事に受け継いだのだ。

     まさに競馬はブラッドスポーツ......世界のホースマンが注目するジャパンCだからこそ、こうした血統のドラマが生まれたのかもしれない。


    ■文/福嶌弘

    第42回ジャパンカップ(GI)着順
    11月27日(日)5回東京8日 発走時刻:15時40分

    着順 馬名(性齢 騎手)人気
    1着 ヴェラアズール(牡5 R.ムーア)3
    2着 シャフリヤール(牡4 C.デムーロ)1
    3着 ヴェルトライゼンデ(牡5 D.レーン)4
    4着 デアリングタクト(牝5 T.マーカンド)5
    5着 ダノンベルーガ(牡3 川田将雅)2
    6着 グランドグローリー(牝6 M.ギュイヨン)14
    7着 オネスト(牡3 C.ルメール)6
    8着 カラテ(牡6 菅原明良)13
    9着 テュネス(牡3 B.ムルザバエフ)7
    10着 ユーバーレーベン(牝4 M.デムーロ)10
    11着 ハーツイストワール(牡6 武豊)12
    12着 シャドウディーヴァ(牝6 松山弘平)16
    13着 トラストケンシン(牡7 丸田恭介)18
    14着 テーオーロイヤル(牡4 菱田裕二)8
    15着 シムカミル(牡3 G.ブノワ)11
    16着 ユニコーンライオン(牡6 国分優作)15
    17着 ボッケリーニ(牡6 浜中俊)9
    18着 リッジマン(牡9 石川裕紀人)17

    ※結果・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。