【大阪杯】GI初制覇のジャックドール 成長を感じた、1年ぶりの逃げ 武豊騎手「馬自身が理解してくれた」

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2023.4.2

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    2023大阪杯 ジャックドールがG1初制覇 写真:日刊スポーツ/アフロ

    第67回大阪杯回顧

    ジャックドールにとって、この1年間はどんな意味があったのだろうか――

    ジャックドールがスターズオンアースの追撃を振り切って先頭でゴールを駆け抜けた姿を見て、そんなことを考えた。

    年明け早々の白富士Sを1分57秒4という好時計で勝利し、彗星のごとく表舞台に登場した4歳のジャックドール。

    重賞初挑戦となった金鯱賞でもスタートから軽快に逃げて、直線に入ってもレイパパレ、アカイイトらを一切寄せ付けずに快勝し、5連勝で重賞初制覇。

    勝ちタイムの1分57秒2は従来の記録を1秒1も縮める驚異的なレコードタイムとなった。

    そうして迎えたのが昨年の大阪杯。

    ジャックドールは2番人気に支持され、これまでのように逃げていったが、直線で後続に捕まって5着に完敗。前半1000mの通過タイムは58秒8と今まで経験したことがないハイペースでの逃げに加え、右後肢の落鉄などの不運が重なり、ジャックドールのGⅠ初挑戦は不完全燃焼で終わった。

    有り余るほどのスピードを持ってはいるけれど、それだけではダメだと考えたのか、4ヵ月ぶりの実戦となった札幌記念ではジャックドールは逃げの手にこだわらないレースを選択。

    パンサラッサが軽快に逃げていくのを4番手で追走して、直線では早めにスパートを打ち、逃げ粘るパンサラッサをゴール直前で捕まえて勝利。

    これまでのような逃げ一辺倒ではなく、番手からのレースで結果を出したことでまさに新境地を開拓したかに見えたジャックドールだが、続く天皇賞(秋)は4着。

    そして武豊を鞍上に迎えた香港Cはスタートの出が悪く、中団からの競馬になったことで7着に大敗してしまった。

    爆発的なスピードでスタートからフルスロットルで突っ走るかのような逃げで駆け抜けた春、逃げから脱却し、好位から抜け出すレースを模索した秋――

    年の前半と後半とでレース運びを大きく変えたジャックドールの走りを見ると、どちらのレース運びを選ぶか決めかねているかのようにも見えた。

    だからこそ、5歳になって最初のレースとなった大阪杯でジャックドールがどんなレースをするか、筆者は気になっていた。逃げるのか逃げないのか、昨年と同じ轍を踏むのか、それとも......。

    あたたかな日差しが差し込んでいたこの日の阪神競馬場、大阪杯に出走する16頭の馬たちが1頭1頭、パドックに姿を現していった。

    昨年の秋華賞以来の実戦となった二冠馬、スターズオンアースは久々を感じさせないほど堂々と周回し、エリザベス女王杯を制して本格化の兆しを見せるジェラルディーナはほとばしる闘志を抑えきれないという様子だった。

    気合十分といった様子の牝馬たちを尻目にジャックドールはというと、非常に落ち着いた様子でパドックに姿を現した。

    春の柔らかな日差しに照らされた512キロの馬体はその名の通り黄金色に輝きを放ち、その歩様は伸びやかに映った。ややイレ込み気味だった香港Cのパドックとは全く違う姿にどこか逞しささえ感じさせた。

    落ち着いた状態でレースを迎えたためか、大阪杯のゲートが開いた瞬間、ジャックドールは勢いよく飛び出していった。

    筆者はジャックドールが逃げるか否かを注目していたが、このスタートを見て今日は逃げると確信した。昨年の大阪杯以来、まるまる1年ぶりの逃げである。

    レイパパレとアフリカンゴールドが外から迫ってきた昨年と同じように、今年も外からノースザワールドが迫ってきたが、ジャックドールは一切気にしない様子で1馬身半ほどの差をつけてあっさりと逃げていった。

    前半の1000mの通過タイムは昨年の58秒8とほとんど変わらない58秒9。

    1年前の大阪杯はもちろん、前半1000mが57秒4だった天皇賞(秋)でも4着に終わったジャックドールにとっては速過ぎる流れに感じられたが、ジャックドールの鞍上、武豊の手綱は持ったままでその走りからは苦しそうな様子は一切見られない。

    むしろ後ろを追走していた馬たちの方が手綱を懸命に押されて青息吐息になっている馬も見られた。

     迎えた直線。逃げるジャックドールは武豊の鞭に応え、さらに加速すると追いかけてくるダノンザキッドらを振り払っていく。昨年届かなかったGⅠタイトルへあと一歩のところまで迫っていた。

    ジャックドールが先頭のままで迎えた残り200m、ここで飛んで来たのがスターズオンアース。

    後方からレースを進めていた馬たちがこぞって失速していく中、猛然と追い上げていく姿は昨年の桜花賞を彷彿とさせるほど。まるで星に導かれるかのように一歩、また一歩とジャックドールに迫っていった。

    昨年のジャックドールなら、このままスターズオンアースに差されていたことだろう。しかし、今年のジャックドールは首を下げて、ストライドを広げて最後まで踏ん張った。そしてスターズオンアースがハナ差まで迫ったところでゴール。

    ジャックドールにとって昨年のリベンジとなる勝利は念願のGⅠ制覇、鞍上の武豊にとっては記念すべきGⅠ通算80勝目、54歳での勝利は史上最年長という記録づくしの勝利となった。

    前人未到の大記録を達成した武豊はレース後、「1、2コーナーで少し力みかけたけれど、馬自身が理解してくれていいペースで運ぶことができた」とジャックドールの成長ぶりをたたえると、自身の前人未到の大記録について聞かれた際には「これまでたくさんの名馬に乗せてもらったので、そのおかげだと思う」とコメントした。

    溢れんばかりのスピードを持つ素質馬が折り合いを覚え、ただひたすらに逃げていくその姿――

    昨年の大阪杯から今日までの1年間、ジャックドールにとっては自身を成長させるための1年だったと思う。

    そしてGⅠホースになった黄金色の馬体を持つ彼と武豊の姿を見て、およそ四半世紀前にターフにいたあの馬を思い出したのは筆者だけではないはずだ。


    ■文/福嶌弘

    第67回大阪杯(GI)着順
    4月2日(日)2回阪神4日 発走時刻:15時40分

    着順 馬名(性齢 騎手)人気
    1着 ジャックドール(牡5 武豊)2
    2着 スターズオンアース(牝4 C.ルメール)1
    3着 ダノンザキッド(牡5 横山和生)10
    4着 マテンロウレオ(牡4 横山典弘)8
    5着 マリアエレーナ(牝5 浜中俊)6
    6着 ジェラルディーナ(牝5 岩田望来)5
    7着 ヒシイグアス(牡7 松山弘平)4
    8着 ノースブリッジ(牡5 岩田康誠)7
    9着 ヴェルトライゼンデ(牡6 川田将雅)3
    10着 ポタジェ(牡6 坂井瑠星)12
    11着 ラーグルフ(牡4 戸崎圭太)9
    12着 モズベッロ(牡7 西村淳也)16
    13着 キラーアビリティ(牡4 団野大成)11
    14着 ワンダフルタウン(牡5 和田竜二)15
    15着 ノースザワールド(牡5 北村友一)14
    16着 ヒンドゥタイムズ(セ7 池添謙一)13

    ※出馬表・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。