【柔道GS東京】阿部兄妹が圧倒V!男子60kgは時代変わる一戦に

柔道

2023.12.8

    名称未設定-1.jpg
    兄妹アベック優勝の阿部一二三、阿部詩 写真:アフロスポーツ

    『グランドスラム東京2023』(12月2・3日 東京体育館)は、予想を遥かに上回る筋書きのないドラマの連続だった。

    その中でニューヒーローが誕生した階級もある。男子60㎏級では永山竜樹(SBC湘南美容クリニック)が髙藤直寿(パーク24)をゴールデンスコア(延長戦)の末、一本背負いで一本勝ち。初めてオリンピック内定を決めると共に、髙藤とのライバルストーリーに終止符を打った。

    「東京オリンピックの選考(2019年11月のグランドスラム大阪)のときには、決勝で髙藤先輩に負け代表になれなかった。やっと大事なところで勝つことができた。今回は髙藤先輩に勝って代表にならないと意味がないと思っていました。今日は自分の過去を乗り換えようという気持ちで戦っていました」

    対する髙藤は「僕の時代は終わったという思いがある」と潔く敗北を認めた。対戦相手が攻める"際"を重点的に攻めていた髙藤とは対照的に、永山は愚直なまでに得意の担ぎ系にこだわって結果を出した。男子最軽量級では永山の時代が始まるのか。

    女子63㎏級は髙市(旧姓・田代)未来(コマツ)と堀川(旧姓・津金)恵(パーク24)の既婚者同士の争いになると見られていた。

    果たして準々決勝で実現した直接対決を反則で制した髙市が決勝で今回が初めてのシニアの国際大会出場となる山口葵良梨(国士舘大)をゴールデンスコアの末、縦四方固で一本勝ちを収め、3大会連続でオリンピック出場を決めた。

    「ちょっとでも妥協したら、オリンピックへの道はそこで途絶える。何が何でも次につなげるんだという思いで戦いました」

    途中まで山口の圧に押されているように見えたのは、絶対にミスを犯したくないという慎重な姿勢の表れだったのかもしれない。リオと東京では期待されながら、メダルには届かなかった。髙市は"三度目の正直"にかける。

    「本当にもう(途中で)柔道を辞めようと思ったときもありました。今回のGS東京も『これが最後(の大会)になるかも』という思いで荷造りしていました」

    女子78kg級では東京五輪金メダルの濱田尚里(自衛隊体育学校)、8月のアジア競技大会で銀メダルの髙山莉加(三井住友海上)、昨年のグランドスラム東京2位の梅木真美(ALSOK)の三つ巴に。

    濵田が早々に敗退し7位、梅木が5位と結果を出せない中で髙山が銅メダルを獲得し初の五輪代表を手繰り寄せた。

    また飯田健太郎(旭化成)とウルフアロン(パーク24)の争いになると予想されていた男子100㎏級は、飯田が2回戦で、ウルフが3回戦で敗れる波乱の展開に。ウルフは敗者復活戦でも敗れる中、新井道大(東海大)が3位に入賞する健闘を見せたが、代表決定は見送られた。

    aflo_237363501.jpg
    阿部詩 写真:アフロスポーツ

    すでにパリ行きを決めている代表の活躍も目立った。兄妹揃っての活躍が期待された女子52㎏級の阿部詩(パーク24)と男子66㎏級の阿部一二三(同)はともにぶっちぎりの強さを見せつけて優勝した。

    決勝でネト(フランス)とぶつかった詩は相手をきちんと崩してからの小内刈りという日本柔道の伝統ともいえる流れでわずか59秒で一本勝ち。大会2連覇を果たした。試合後、詩は決して本調子ではなかったことを明かした。

    「自分の中では決して満足できるものではなかったけど、できる限りのことはしてきたので、この結果につながったんだと思う」


    aflo_237421636.jpg
    阿部一二三 写真:YUTAKA/アフロスポーツ

    妹の優勝を受けて試合場に登場した一二三は決勝でヨンドンペンレイ(モンゴル)と激突。両袖をもった状態からスキをついて相手を持ち上げたと思った刹那、大外刈りを決め一本。持ち前のパワー柔道を披露するとともに、GS東京を制した。

    「しっかりと自分で投げに行く柔道ができたと思う。ただ、海外の選手はもっと自分の研究をしてくると思う。ここで気を抜かず、さらにその上を行くように頑張りたい」

    女子48㎏級には世界選手権3連覇中の角田夏実(SBC湘南美容クリニック)が登場し、決勝ではかつて辛酸を舐めさせられたフリア・フィゲロア(スペイン)と対峙した。

    勝負はワンサイド。試合開始早々引き込むように寝技に誘うとあっという間に腕挫十字固を決め、リベンジを果たすとともにGS東京では2016年に52㎏級で優勝して以来7年ぶり2度目の優勝を収めた。

    「本当はもっと試したい技があったけど、試合場に立つと勝ちにこだわってしまう。パリでは自分も研究されてくると思うので、(巴投げなどの)得意技を封印されたらどう戦うかを考えたい」

    この女子最軽量級で身長161cmリーチ166cmという角田の体格は大きなアドバンテージとなる。その分減量が厳しいというデメリットもあるが、体重調整さえうまくいけば、阿部兄妹同様パリでの活躍が期待できそうだ。

    すでにパリ行きが内定している男子100㎏超級の斉藤立(国士舘大)は準決勝で韓国の選手に合わせ技で一本負け。試合中に右太股を負傷したため、3位決定戦を棄権した。

    パリは8カ月後。ポテンシャルは高いだけに奮起が望まれる。


    (フリーライター・布施鋼治)