吉田麻也が証言「MLSの価値は上がってきている」サッカーW杯開催国アメリカとメキシコの最前線

サッカー

2025.9.2


【動画】FOOT×BRAIN+ #729 日本代表アメリカ遠征直前SP 前編https://youtu.be/_rFCqZx3RVs

これまで「日本サッカーが強くなるためにできることのすべて」をコンセプトに2011年4月に始まった『FOOT×BRAIN』。

番組開始から15年目を迎え、2025年4月に『FOOT×BRAIN+』として新たなコンセプトで生まれ変わった。

日本代表・遠藤航が公言した「ワールドカップ優勝」。FOOT×BRAIN+は「日本がW杯で優勝するためにできることのすべて」をテーマに掲げ、より深く、より徹底的に日本サッカーの可能性を探っていく。

今回の「FOOT×BRAIN+」では、日本代表が9月に親善試合を行う来年のワールドカップ開催国・アメリカとメキシコの最新事情を、両国のサッカーに詳しい専門家を迎えて深掘りした。

急速に変わる"サッカー不毛の地"アメリカ

「アメリカ人の特徴でもありますが、ファウルをごまかしたり痛がったりとかあんまりなくて、結構男前サッカーって言われるんです」

アメリカのサッカー事情に精通する中村武彦氏はそう語る。

かつて「サッカー不毛の地」と呼ばれたアメリカだが、今やメジャーリーグサッカー(MLS)の観客動員数は、アメフト、野球、ホッケー、バスケットボールという4大メジャースポーツの中でも3位に食い込むほどの人気を誇っている。

アメリカのサッカー人気が高まっている背景には、移民の文化的背景がある。

「アメリカという国自体、人種のルーツでいろんな国から人が来ている。元々サッカーを見ていたんですけれども、自分の出身の国のサッカーを見てる人が多かった」と中村氏。

しかし「メジャーリーグサッカーが30年ほど前にできて、その2世、3世たちは自分の生まれた国のプロサッカーを見るようになった」という変化が起きている。

驚きの大学サッカー事情

アメリカならではの特徴として注目されるのが、大学サッカーの充実ぶりだ。中村氏は昨年から大学サッカー(米マサチューセッツ州立大学)のコーチを務めているが、その環境に驚きを隠せない。

「天然芝専用のフィールドもありますし、専用スタジアムもあります。全国大会で去年ベスト8まで行ったんですが、その時はプライベートジェットでアウェー戦に行くというのは衝撃でした」

その恵まれた環境でプレーできる選手たちは選び抜かれた超エリートたち。チームは27名ほどの少数精鋭で構成され、選手たちには個々の実力に合わせた奨学金が支給される。

一番多い選手で年間約600万円もの奨学金を受け取るという。

アメリカの大学サッカーは、欧州のアカデミーとは異なるキャリアパスとしても機能している。

「ヨーロッパですと、アカデミーとか18歳でプロに行けないと、プロへの道が狭くなってしまう」と中村氏は説明。

「アメリカの場合だと4年間行く中で鍛え直したりして、そこからプロに行く選手が一定数いる」というのだ。

MLSの特殊なビジネスモデル

アメリカのプロサッカーリーグ・MLSは、1996年の創設以来、拡大の一途をたどっている。

現在は30クラブが東西に分かれてリーグを戦う形だ。最大の特徴は独立リーグのため昇格降格がないこと。そしてビジネスモデルの独自性にある。

「アメリカではスポーツビジネスというものがアメリカ式になっていて、メジャーリーグサッカーも限られた原資をいきなり選手に使ってしまうと無くなってしまう可能性がある」と中村氏。

そのため「そこにあまりお金をかけずに、スタジアムを作るとか、チケットを売る人を連れてくるとか、スポンサーを売る人を連れてくる方にお金を投資して、ビジネスとしての基盤を作ってから」という方針を取ってきたという。

その象徴が「サラリーキャップ制度」だ。各クラブではなくリーグが選手の給料を支払い、決められた給料総額の中から各選手に分配されるというしくみになっている。

「ここまでしか使っちゃいけませんよ。というルールを作って、それ以上は使わせない。みんな同じ車で競争した時に誰が一番早いかという勝負」と中村氏は説明する。

MLSの実力は?吉田麻也が証言

現在MLSのロサンゼルス・ギャラクシーでプレーする元日本代表キャプテン・吉田麻也(37)は、アメリカサッカーの現状をこう評価する。

「価値が上がってきてると思います。人気は上がってきてるし、もう1つは投資対象としての価値が上がってきてる」

競技レベルについては「全体的なレベルはもちろん上がってると思うし、日本人が知らないクラブでもヨーロッパの中堅チームよりも環境いいところはたくさんある」と証言。

実際に吉田選手の所属するLAギャラクシーの施設を見せてもらうと、広々としたジムや最新の設備が整っていた。

これでも「環境は良くない」というほど、MLSの施設レベルは向上している。

メキシコサッカーの変化と特徴

一方、メキシコサッカーも大きな変革期を迎えている。

メキシコサッカーに精通する百瀬俊介氏は、中学卒業後に単身メキシコへ渡り、日本人初のメキシコリーグプロ選手となった人物。

彼によれば、かつて町のあちこちで見られたストリートサッカーが、スマホの普及などによって減少しているという。

「僕がメキシコ行った当時は、ストリートサッカーどこでもやってました。ここ最近になるとやはりスマホの普及とかで、なかなかストリートサッカーをする子供たちがかなり減少しているという話をよく聞くんです」

これによって「中流階級の子供たちが環境の整った中でサッカーしている」一方で、「貧困層の子供たちがサッカーする環境がなくなってきている」という二極化が進んでいるとのこと。

メキシコ独自の育成ルール

メキシコリーグ最大の特徴は、優秀な選手を生み出し続けるための世界にも類を見ない育成ルールだ。

百瀬氏によれば「若手育成のためのルールが徹底していて、アンダーの選手たちがシーズン通して1170分出場しなきゃいけないというルールがある」という。

このルールでは、若手選手を起用しないと「勝ち点3を剥奪、育成補助金15%削減」が科される。その結果、強豪クラブでも若手選手の起用を徹底せざるを得ない状況になっている。

さらに若手に経験を積ませるために、アンダー世代のチームはトップチームと同じ日程、同じ相手と試合を行う。

「アンダー15の選手たちもトップチームと同じスケジュールで、前座試合みたいな形で同じスタジアムでやる時もある」と百瀬氏。

若くして過酷な移動やアウェイの洗礼を味わうことで、プロとしての意識とタフさが育まれるという。

両国の課題と今後

独自に発展している両国のサッカーだが、それぞれに課題も抱えている。

アメリカのMLS球団LAギャラクシーでプレーする吉田は「全体的なレベルはもちろん上がってる」と評価しつつも、世界トップレベルとの差はまだあるとの見方を示した。

一方、メキシコは育成システムは充実しているものの、「選手が海外に行かない」という長年の課題がある。

百瀬氏によれば「セルヒオ・ラモスなど欧州で活躍した選手が今メキシコリーグでプレーしていて、年俸は約7億円。メキシコ人選手でも3000万円は稼げる」という。日本の1/3の物価のメキシコでは、この金額は非常に高待遇だ。

「ヨーロッパに行くと給料が下がる、環境が変わる、家族はいない。ストレスの方が多い。なんであえてストレスを抱えにヨーロッパに行かなきゃいけないんだという考え方が多い」と百瀬氏は説明する。

日本代表がW杯優勝を目指すうえで、開催国となるアメリカとメキシコのサッカー事情を知ることは重要だ。

急速に変化するライバル国の「今」を知ることで、日本サッカーの可能性も広がっていくはずだ。

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