エアスピネル「重賞3勝のオールラウンダーが与えられた新たな役割」【もうひとつの引退馬伝説】

エアスピネル(c)SANKEI
乗馬でもセラピーホースでもないレアなお仕事
2015年のデイリー杯2歳Sで3馬身半差の圧勝劇を演じたエアスピネル。
続くGⅠの朝日杯フューチュリティSでは2着に惜敗したものの、世代のトップホースの1頭として翌年の牡馬クラシック戦線を盛り上げ、古馬になってからはマイル路線、晩年にはダート路線で活躍するなど、9歳まで現役を続けた。
そのエアスピネルは現在、茨城県阿見町の馬の複合施設「うまんまパーク」で穏やかな余生を過ごしている。
その様子を著名な競走馬の引退後の余生を追った『もうひとつの引退馬伝説〜関係者が語るあの馬たちのその後』(マイクロマガジン社)から一部抜粋・編集してお届けする。
「年老いた感じは一切ないですね。馬体も緩んでないですし、まだまだ(現役でも)通用するんじゃないでしょうか」
そう言って笑うのは、佐久間拓士さんと妻の亜樹さん。
佐久間さんは茨城県阿見町にある「うまんまパーク」の代表であり、重賞3勝馬エアスピネルの現オーナーである。
9歳まで走り続けたエアスピネルは今、この地を訪れる人たちとふれあい、かわいがられながら穏やかな第2の馬生を送っている。乗馬やセラピーホースではなく、あくまで「ふれあい、かわいがられる」馬というのは、珍しいケースといえるだろう。
エアスピネルは引退後、北海道の牧場で余生を過ごす予定だった。しかし諸般の事情からそれが困難になった際、〝エア軍団〟の吉原オーナーから佐久間さんに声がかかった。
うまんまパークの母体でもある育成休養牧場リヴァティホースナヴィゲイトの預託部門で、競走馬時代のエアスピネルを預かっていた縁である。
「ちょうどうまんまパークを開設しようとしていたことをお伝えすると、吉原オーナーから『それだったら面倒を見てもらえないか』と言われたので、『ぜひ!』と。少しでもタイミングが違っていたら、せっかく声をかけていただいても受け入れられる体制がなかったですし、本当にちょうど良かったです」
現在は週に数日程度、トレッドミルや簡単な騎乗運動をして身体を調えながら、さまざまなふれあいイベントに参加しているというエアスピネル。
彼を目当てに訪れるファンは多く、放牧地のサンシャインパドック周辺はいつも人が絶えない。入場と共に渡されるバケツいっぱいのおやつを、すべてエアスピネルにあげてしまう人もいるというのだから、その人気ぶりは顕在である。
「ありがたいことにたくさんの手紙やお守り、ニンジンなどが『エアスピネル様』宛で届きます。グッズを身につけてエアスピネルまみれで来てくれた方もいますし、わざわざ九州からこの仔に会いにいらした方もいました」
うまんまパークでは在籍馬への寄附も募っているが、毎月必ずエアスピネルに寄附してくれるファンもいる。
その返礼品になっている実使用の蹄鉄は、他馬が前肢2本しか履いていないのに対して、エアスピネルは現役の時と同じく前後肢4本に装蹄と、少しでも早く返礼できるような体制を作ろうとしているが、それでも供給が追いつかずに数カ月待ちになっているほどだ。
ついにGⅠを勝つことはできなかったエアスピネルだが、彼が駆け抜けた7年間の競走生活は、全国に彼を想うたくさんのファンを作った。
一部では「種牡馬エアスピネル」の姿を見てみたかったという声もあるが、種牡馬にならなかったことでこそ、彼の素顔を見守ることのできる距離感が実現したともいえる。
■エアスピネル プロフィール
生年月日:2013年2月10日生まれ
性別:牡馬→セン馬
毛色:栗毛
父:キングカメハメハ
母:エアメサイア(母父:サンデーサイレンス)
現役時調教師:笹田和秀
現役時馬主:ラッキーフィールド
戦績:34戦4勝
主な勝ち鞍:デイリー杯2歳S、京都金杯、富士S
生産牧場:社台ファーム(千歳)
現在の繋養先:うまんまパーク(茨城県・阿見町)

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