【NHKマイルC 見どころ】新緑の府中を盛り上げる新マイル王は

その他

2026.5.10

    009.jpg
    ダイヤモンドノット、カヴァレリッツォ(c)SANKEI

    今から30年前の1996年。第1回NHKマイルCが開催された。外国産馬だらけのメンバー構成を見れば「マルガイダービー」と称されたのも頷ける。

    クロフネ、タニノギムレット、そしてキングカメハメハにディープスカイらがこのレースをステップにダービーに挑む姿は前身レースのNHK杯の匂いを感じさせた。

    そして現在。NHKマイルCは3歳マイル王者決定戦としての不動の地位を手に入れた。かつてこのレースを勝つと、その後レースで勝てずに終わるという不吉なジンクスもあった。

    しかし、過去10年の歴代王者を見るとアエロリットにアドマイヤマーズ、シュネルマイスターに現役最強マイラーのジャンタルマンタル、パンジャタワーと息の長い活躍を見せる馬も増えてきた。

    それだけに、もはやクラシックレースと同等の勝ちがあると言っていいのかもしれない。

    そんなNHKマイルC。今年は数多くの有力馬が揃い、ハイレベルな戦いが見られることだろう。主役の座に就くのはダイヤモンドノットだろうか。

    デビューから初勝利までは3戦を要したが、重賞初挑戦の舞台となった京王杯2歳Sでは2番手から抜け出して快勝。

    続く朝日杯FSは初めてのマイル戦が不安視されて5番人気にまで評価を下げたが、積極的な先行策が功を奏したか、カヴァレリッツォには差されたがわずか0.1秒差の2着に食い込んだ。

    世代屈指のスピードをマイルでも発揮する――そんな思いを持ったダイヤモンドノット陣営はクラシック参戦をパスしてNHKマイルCを目指すことに。

    年明け緒戦となったファルコンSでは単勝オッズ1.6倍という断トツ人気に応える様に勝利。しかもこれまでとは異なり中団前目から動くという走りを見せて成長した様子も見せてくれた。

    「前走くらいから馬体に芯が入ってきた感じがする。自分の力を発揮できる」とは、管理する福永祐一調教師のコメント。調教師として初のビッグタイトルをダイヤモンドノットともに掴むことができるだろうか。

    順調な過程でNHKマイルCを待つ者もいれば、大舞台で復権したいと願う者もいる。新緑の府中のターフでリベンジを誓うのがカヴァレリッツォだ。

    夏の終わりに中京でデビュー戦を勝利すると、秋にはデイリー杯2歳で2着に。敗れはしたが、スタートからスッと2番手に付けて流れに乗って行くというレース運びにはソツがなく、完成度の高さを感じさせた。

    そんなレースぶりが評価されたか、朝日杯FSでは2番人気の支持を受けると中団から鋭く伸びてきて快勝。

    クリスチャン・デムーロの好騎乗が印象に残るが、それ以上に外からインコースへと進路を変えた際のこの馬のレースセンスの良さ、勝負根性が勝利を手繰り寄せたのは間違いない。

    2歳王者となったカヴァレリッツォの明け3歳緒戦となったのが皐月賞。

    ダミアン・レーンとのタッグで臨んだこの一戦は初の2000m、そして初の関東遠征とこの馬には初物尽くしの挑戦が多かったこと災いしたか、3番人気の支持を集めるも結果はまさかの13着。

    道中は3番手に付けて追走していたが、勝ったロブチェンの絶妙な逃げを最後まで崩すことができなかった。

    まさかの大敗から臨むマイル王の座。苦しいレースを強いられた後だけに精神的な負担が懸念されるが、得意のマイル戦に戻るだけでも条件は好転している。スピード勝負には自信があるだけに、2歳王者の復活に期待したい。

    有力馬の多くは2歳時から頭角を現していた馬たちだが、3歳になってから急上昇してきた馬たちにだって楽しみな逸材はいる。

    今年ならチャーチルダウンズCを制したアスクイキゴミ、ニュージーランドTの1、2着馬であるレザベーションとロデオドライブが該当する。

    父に"龍王"ロードカナロアを持つアスクイキゴミはそのデビュー自体が3歳2月とやや遅め。

    それでも東京のマイル戦で初陣を迎えると、好位から流れに乗って押し切り勝利。NHKマイルCへの出走を目指し、優先出走権をかけてチャーチルダウンズCへと挑んだ。

    大外枠で迎えたこのレース。スタート自体は出遅れ気味で決していいスタートというわけではなかったが、3コーナーを迎える当たりから押し上げていき4コーナーを回るところでは2番手に付けるという積極策。

    緩やかなペースの中で先に抜け出したユウファラオとの競り合いを制して勝利。2戦無敗でNHKマイルCへのチケットを手にした。

    道悪でも粘り強く走れるという力強さ、そして類まれな勝負根性。NHKマイルCでも早めに動いて押し切るレース運びを目指すだろうが、粘りの走りは歴戦のライバルたちを蹴散らすことができるだろうか。

    そして関東開催のトライアル、ニュージーランドTでワンツーを決めたレザベーションとロデオドライブ。この2頭の成績を見ると、似て非なるものなのがよくわかる。

    苦労してきたのはレザベーション。デビューからなかなか勝ち上がれずに3歳3月、キャリア5戦目にしてようやく未勝利を脱出。速い上がりは使えても、毎回のように出遅れるというスタート難が出世を阻んでしまった。

    ところがNHKマイルCの前哨戦であるニュージーランドTはスタートから好位に付けて流れに乗ると、直線でもそのまま踏ん張り勝利。最後の最後まで懸命に踏ん張るという勝負根性が大金星を掴む要因となった。

    積極策は近年のNHKマイルCの穴馬たちに共通するポイント。今回も大波乱を巻き起こすかもしれない。

    そんなレザベーションに敗れたのがロデオドライブ。こちらは2歳暮れのデビューから切れ味鋭い末脚を武器に2戦2勝。ニュージーランドTでは内から猛追してきたが、レザベーションにクビ差届かなかった。

    デビューから3戦すべて上がりは最速。東京コースは今回が初めてとなるが、切れる末脚は直線の長い東京に必ずマッチするハズ。思い切りのいいレースで逆転を狙いたい。

    ハイレベルな戦いが予想されるNHKマイルC。新緑の府中に吹く風は新たなマイル王誕生を祝福してくれることだろう。風薫る5月に台頭するマイル王は果たしてどの馬だろうか。


    ■文/福嶌弘